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違うそうじゃないって言えなかった話2~さよならキャンディ~

初めて買ってもらった漫画のことを覚えていますか。
私は忘れもしません、あの日のことを。


7歳になったばかりの7月のこと。
私はめずらしく母と2人で
しかも普段の団地内ではなく 本屋のある駅前を
ちょっとうきうきしながら歩いていた。
何の用事だったかははっきりと思い出せないけれど
たぶん母のコーラスの練習についていった帰りだったのだろう。
まだ行動範囲のせまい7歳にとって
バスに乗って出かけるというだけでじゅうぶんに非日常だった。

7歳当時、私にはすでに2つ上の姉と4つ下の弟がいて
(その後8つ下の妹も生まれたから)
母と2人きりというシチュエーションは 
ほんとうに数えるほどしか記憶にない。

その日 姉も弟も一緒にいなかったのは
もう夏休みに入っていて 
姉も弟も友だちと遊びにいっていたのか
それとも留守番だったのか。

母のコーラスの練習が終わるのを待つのは
実はちょっと退屈だし
家にいれば
好きな絵を描いたり本を読んだりもできたかもしれないけれど
母と一緒に出かけられるということがうれしかった。

しかも母は機嫌が良かったのか
私がちょうど誕生月だったからか
これから本屋に寄って 何か1冊本を買ってくれるんだって!

実家では誕生日の行事などはしないのが日常だったし
きょうだい間に不公平な結果になることは避けようとしていたらしい母の
その言葉はうれしい驚きで
そしてそれが 2つめの うきうきの理由でもあった。

うれしいな。漫画でもいいかな。漫画がいいな。

だって1977年当時 小学生女子のあいだで流行っていた漫画といえば
『キャンディ・キャンディ』だったから。

作画者と原作者が著作権を争う事態になったことで再販は難しいこともあり、プレミア価格になっている!

イギリスの寄宿学校、ふわふわのカールや縦ロールの巻き髪、
リボンとレースとフリル…。
今どきの女の子がディズニープリンセスにあこがれるように
私もちょっとあこがれがあった。

保育園児のころから チラシの裏や自由帳にせっせと書いていたのは
想像のドレスを着たお姫様。
情報源はもっぱら 家にあったグリム童話の本だった。
このころはまだ 将来の夢はお姫さま! などと思うくらいの
無邪気さもあったっけ。

Gemini作ですが だいたいこんな感じ

ところでトレーシングペーパーという
薄い紙をご存じだろうか。
小学生でも買えるくらいの値段で
文具店に売っていたのだけど
それを雑誌の表紙などに当ててキャラクターを写し取り、色を塗ったりするのだ。
まるで自分も絵が上手になったようでそれがちょっとしたブームだった。

雑誌の『なかよし』に連載されていたキャンディ・キャンディはよく巻頭カラーになっていたから
雑誌を定期購読している友だちのうちに遊びにいったときは
一緒に夢中でキャンディの「写し絵」をしていた。

ああ、いよいよ、私も自分の『キャンディ・キャンディ』が
買ってもらえるかもしれない。
初めての自分の漫画だ。絶対大事にしよう。



その日の夕方 わが家初の漫画を買ってもらって帰った私に
姉も弟も「見せて、見せて」と寄ってきた。
私はもちろんひとり占めなどすることなく ちゃんと見せてあげた。
これが持てる者の余裕というものなのかもしれない。

そしてひとしきり騒ぎが落ち着くと
初めて買ってもらった漫画である その1冊をーーーーーーー









『サザエさん 7巻』を


自分の机の本棚ではなく 家族共用の本棚にそっとしまった。

以下回想シーン


「わたし、キャンディ・キャンディの1巻がいい」
「お母さんああいう漫画は好きじゃないの。
どうしても漫画がいいなら、ほら、サザエさんは?
たくさん出てるし、ちょうど7歳の記念だから
あなたは7巻にして
お母さん35歳だから35巻を買うのはどう? おそろいだし、いいじゃない?
そうしましょう」


「……わかった。そうする。」

「ああいう漫画」とは…?お母さんもしかしてもう読んだの?読んで言ってるの?
私も読んで判断したいよ!

さよなら、キャンディ。
サザエさんは別に悪くないけど

違う、そうじゃない。

Geminiに着せてもらいました


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