寿退社という名の小さな嘘
退職を決断
当時、15年ほど勤めていた会社を退職しました。
理由は「寿退社」。
今ではあまり耳にしなくなった言葉ですよね。
でも実際は、未婚での妊娠・出産。
社内で噂になるのがどうしてもつらくて、あえて小さな嘘をついたんです。
送別会の日、同僚から「身体を冷やさないでね」とカシミヤのブランケットをいただきました。
お腹はもう隠しきれなくて、みんな気づいていました。
それでも深く詮索せず、優しい言葉をかけてくれた仲間たちには、今でも感謝しかありません。
大好きだった仕事、大切だった同僚。
手放すと決めたものの、「本当にこれでよかったのかな…」と自問したこともありました。
お腹の赤ちゃんは元気に育っていたけれど、これから先のことを考えると、不安でいっぱいだったんです。
ひとりで進めた出産準備
赤ちゃんを迎えるために、ベビー服やおむつ、ベビーカー、チャイルドシート…。
本当にたくさんの準備が必要なんですよね。
でも私は、誰にも知られたくなかったから、一人でこっそり進めました。
「西〇屋」などのベビー用品店に行くと、目に入るのは、仲良く買い物をしているご夫婦や、赤ちゃんを抱っこした家族の姿。
そんな光景を見るたび、ちょっぴり心が痛くなり、できるだけ視線をそらし、足早にお店を出たことを覚えています。
「大丈夫。これでいいんだ。」
そう自分に言い聞かせながら、淡々と準備を続けたあの日々。
小さなかわいいベビー服を手に取り、嬉しさと寂しさが入り混じって、なんとも言えない気持ちになっていました。
あの頃の私に伝えたいこと
今振り返ると、あの時あんなにもつらかったのは、
「未婚で出産することを選んだ」というより、
「そうせざるを得なかった」からなんだと思います。
悲しかったし、悔しかったし、何より自分が惨めに感じていました。
もしあの時、結婚していたら…。
きっと、毎日のようにお酒を飲むあの人と、モラハラやたまにあるDVに怯えながら暮らしていたはずです。
どこに地雷があるかわからず、びくびくする毎日だったでしょう。
それでも、そんな人を「好きだった」あの頃の私。
若かったなぁって思います。
十分、大人の年齢だったけど(笑)
一生懸命だったけど、必死すぎて周りが見えていなかった。
あの時の私に伝えたい。
「大丈夫! 別れて正解だったよ!」
胸を張って、笑いながら、そう言ってあげたい。
