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lively_bear225
務川慧悟さんのラヴェル─温かさの奥にある寂しさ
ラヴェル《クープランの墓 M.68》より
プレリュード
務川慧悟さんのピアノで聴いた。
務川さんの弾くこの曲を聴いていると、まるで薄いオレンジ色の飲み物で満たされた、グラスの底にいるような感覚になる。
静かに座って待っている。
やがて、目の前に大きなマドラーが
現れて、クルッと円を描く。
優しく、しかし正確に、空間を混ぜていく。
マドラーが回るたびに、足元から温かい泡が立ち昇る。
昇って行った泡は、上の方で小さな四角い形の音になって、またこぼれてくる。
まるで金平糖がぶつかり合うような、軽やかな音。
なんて温かい音だろう。
グラスの外に何があるのか、もうわからない。
見上げても光が反射して、外界の景色は遮断されている。
ただ温かなオレンジ色が、広がっているだけだ。
回る、マドラー。
「ずっと、この場所にいたいな」と、
思ってしまうほど、安全で優しい場所だ。
──でも。
温かいのに、なぜか胸の奥に、
強烈な寂しさがある。
そのうちに、視界が波立つ。
まるで、涙越しに世界を見ているように。
オレンジ色はさらに淡くなり、薄い黄色の水流が横切って、きれいなグラデーションを描く。
マドラーは、変わらず回っている。
温かい金平糖の音が背中に回り、
柔らかな渦を描いて通る。
やがて音は駆け上がって、グラスの縁で
笑っている。
追いかけられなくて、
グラスの底に取り残される。
温かいのに、どうしようもなく寂しい。
務川さんの音は、シェード越しの灯のように、ホワッと温かい。
でも、その温かさがあるからこそ、
ふっと音が遠ざかったとき、
ひとり取り残されたような寂しさを
感じる。
最後はいつも泣き笑いのような感情になってしまう。
こちらも、務川さんの演奏の記事です。
