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"持たない"二拠点生活

#自然のない環境が苦しくなってきた

 社会人になると同時に千葉市内の実家を出て東京で一人暮らしを始め、50代後半の現在まで在宅フリーランスでライター、編集の仕事をしています。
 30代半ばの頃、代々江戸っ子の家の次男と結婚して都内に住んでいます。
 また、私の母の出身は都内で、母方の親戚が近くに住んでいる環境です。

 東京暮らしが「もうムリ!」と感じたのは、コロナ自粛の時でした。

 制限つきの外出しかできない生活が続くなか、人工的な建造物で埋め尽くされた東京ではもう生きていけない。という気がしたんです。

 千葉市内に住んでいる両親が85歳を過ぎたこともあり、お掃除ボランティアを兼ねて両親宅にしばしば逗留するようになりました。

 両親が住んでいるマンションは、私がいま住んでいるマンションと全く同じ階・広さ・間取り(3LDK)で、築年数もほぼ同じ。
 ですが、両親がいるマンションは小さな丘のてっぺんにあり、南の窓からの眺めは空が7割。北側の通路からは富士山が普通に見えるという、スペシャルビューなのです!

 手つかずの草地も点在。薄暗い茂みの奥に祠(ほこら)があったり、栽培用ではなく勝手に育っているふうな柑橘類が大量に実る広大な庭つきの民家などがあったりします。

 細い急な坂道を下り、小さな踏切を越えて歩いていくと、地元系スーパーがあり、手作りのお惣菜も充実。 他にダイソー、マツキヨ、クリニック、大手チェーンの飲食店などが集積しています。どこもそこそこの活気、ほどよくローカルな雰囲気がとってもいい。

 この環境で家賃約8万円っていうんですからね……。
 去年、夫が定年退職。このまま都内で暮らし続けることにメリットはあるのか?と考えるのが普通かと思います。

#ライフステージの壁

 というわけで、Uターンや格安物件を借りての二拠点生活を検討しました。
 noteで移住した方の体験記を楽しく読ませていただいたり、移住アドバイザーの方が書いた本を読んで学んでみたりと、半年ほど逡巡したでしょうか。
 
 で、夢から覚めたのです。

 自分たちの年齢がもう若くないこと、夫婦とも軽い持病があることなどを考えると、専門病院のある都内を出るのは得策でない。という結論に。
 セカンドハウスは最後に誰が片づけるのか?を考えた時点で答えが出たのでした。

 私はもともと行動から学ぶ派なので(といえば聞こえがいいが、つまりは石橋を叩かない)、若ければ実践していたと思います。

#求めているのは物理的な拠点なのか?

 移住や二拠点生活を夢見る時、まずイメージするのは「家」というハコです。

 が、逡巡しながら気づいたのは、自分が求めているのは物理的な拠点ではないかもしれないということでした。
 私の場合は「生まれ育った自然豊かな環境」に対する欲求が定期的に満たせればよく、住むための拠点はそこになくてもいい。という気づきがあったのです。

 東京暮らしを続けながら、自分が生まれ育ったところに何度も帰る。
 観光でもビジネスでもなく、ただ帰る。

 これが私の着地点なんだろう。と思うようになりました。

千葉港の眺め

#"持たない"二拠点生活:犬吠埼編

 移住の夢から覚めたところで連休明けの平日、銚子・犬吠埼の宿に1泊してきました。

露天風呂はナトリウム泉
隣の木に口笛のような鳴き声の野鳥がやってくる

 犬吠埼は、本州で一番早く日の出が見られるスポットとして知られています。レトロな銚子電鉄はファンも多く、米津玄師の「カムパネルラ」のMVが2000形の電車内で撮影されたことも話題になったらしいです。

1時間に1本・銚子電鉄の駅

 が、千葉県民にとっての銚子・犬吠埼は、日帰りや1泊で遊びにいく場所の1つにすぎません。
 東西と南の3縁が海に面している県なので、どこかに行けばそこに海があるという感じです。

 たとえば実家(千葉市内にあった)から坂道を歩いて下っていくと千葉港(千葉側の東京湾)があるし、テーマパークや学習拠点(臨海学校)に行っても目の前に海がある。
 通学の電車をいつもの駅で下りないで、みんなで終点まで乗っていってみると海に着く。

 つまり日常です。

 私が求めているのは、まさにこれなんだろうなと。
 「拠点を持つ」ということではなくて。

#"持たない"ことの利点

 強風で波が立つことも多い犬吠埼ですが、泊まった日は運よく凪(な)いでいてくれました。
 この場所は台風のTV中継にもよく登場するので、外海に面する岬のなかでもとりわけ強風が吹きつけるということでしょう。
 たとえばこういう場所に拠点を持つとしたら、メンテナンスにかかる労力や費用も考えなくてはなりません。
 
 やはり持たないことは利点が多いと、いまは思います。

 さて、家族4人で利用したのは波打ち際の高台の上にある、露天風呂つきの離れ。70平米の和洋室です。お値段ビックリですが、父の米寿にかこつけて大奮発(平日利用のため、ハイシーズンの半額)。

 海を見下ろすウッドテラスで、いつもと同じ動画を見ながらヨガをしてみました。
 息を吸いながら上を見上げると、頭上にはクロス貼りの天井ではなく、うっすらと青い春の空が広がっているではないですか……。
 さらに深く息を吸うと、入ってくるのはいつもの部屋の空気ではなく、海から吹き寄せる風。
 未汚染のそよ風。爽快感。空と海と自分だけの世界に没入していきます……。
 奥多摩の川沿いに集まってヨガをやっているような人たちの気持ちがほんの少しわかったような気がする。

 ヨガ後は母を誘って、肌にやさしいナトリウム泉に足をつけておしゃべり。しばらくすると全身が温まり、出たあとも長いことぽや〜んとゆるい感覚が続いていました。
 母も同じだというので、温泉の作用でしょう。

 泊まった部屋は、日の出が正面に見られるように設計されています。
 私は皆を起こす当番として暗いうちに起き出し、1人でこっそり露天風呂につかりながら灯台の明かりと星空を堪能。

 カシオペアや北斗七星を視認したのは何十年ぶりのことでしょう。
 これが山の上だと、星空というより星屑状態で見えすぎて私のような素人には星座がわからないので、いい見え具合です。

 だんだん水平線に赤みがさしてきた頃に母が起床。
 水面の霞の端がメラメラと輝き出したかと思うと、みるみるお出ましに。急いで父と夫を起こし、全員で大歓声を上げたのでした。

 雨の日が続くなか、なぜかこの日だけが晴天という結果だったので、本当にありがたいことです。

 自宅に帰ってきて、まず目に入ったのが日めくりカレンダー。「何枚めくればいいんだっけ?」と思ったら、なんとたった1枚でした! 数日休んだと錯覚するほど、のんびりできたということです。

◉足湯がない施設で足湯するコツ

 余談です。

 私の母は、他人がいる環境では絶対にお風呂に入りません。大浴場の女湯も嫌いです。

 目の前に天然温泉があるのに?と思ってしまいます。本人も入りたいという気持ちはあるようなので、今回は対策を講じてみました。

 サウナ用の使い捨てショーツをダイソーで購入。まずこれに履き替えてもらい、その上に海などで使うパレオを巻いて移動し、パレオをたくし上げた状態で浴槽のへりに腰掛ける(もちろん上半身は着たままです)。
 これならお尻まわりが濡れてしまったとしてもかまわないので、喜んで足湯してくれました。我ながらグッジョブ。
 同じような母上がいらっしゃる方は、やってみてください。サウナブームのおかけで使い捨ての紙パンツが「サウナショーツ」として売られています。

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