古道の大神と犬の姫 五ノ十二 -犬は食べ物じゃない!-

「袴の心地はいかがですか?」
「すこぶる良い
 むしろ前よりも遥かにな」
「そうですか
 良かったぁ・・・」
安心するお万
(ほころびばかりであったからなぁ・・・
 あれを見られたのは恥ずかしいが、しかし・・・)「いや助かったよ、ありがとう」
「はいっ!」

 すっかり打ち解けた二人
和やかに会話をしながら神社の階段を降りる
真ん中にはジンとユウギ
 お天道様が山陰に隠れて暗くなれば、帰りの頃合い
大通りを歩いて門へと向かう
「お家はどちらですか?」
「あぁ・・・
 今は歩いて二刻(4時間)ぐらいの、何だ・・・山間の、町に住んでおる」
「二刻ですか
 でしたら走ればまだ明るいうちに着きますね!」
「あーーー、そうだな」
清次郎はお万にとっての二刻は遠くないのかと感じたが、もう不思議には思わなかった
この村までの道のりの険しいこと
そしてこの村では何もかもが、自分の周りの常識とは違って見えたから・・・
「噂とは、本当に適当なものであるな・・・」
「?」
首をかしげるお万
「あぁすまん
 色々と思うところあってな」
「そうですかっ」
と、気にはなったものの深追いはしない
お万も、御武家様には御武家様の世界と常識があるのだと学んだのだった



 ジンと目を合わせて楽しそうに歩く、いつもの元気なお万
「あははっ
 ジンはまだ遊び足りないみたいだねぇ~」
「ヘッヘッヘッ!」
それを見た清次郎は左下に目を向ける
そこには、寄り添って歩くユウギの姿
すぐに清次郎の視線に気が付いて顔を見上げる
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・」
「ははっ・・・
 可愛いなぁ・・・」
すると

 「おー!お万様ー!聞きましたよ!
 斎様がお戻りになるそうで!」
 「あぁーはい!
 今年の内には戻るようですー」
 「へへっ・・・
 寂しかったでしょう!?楽しみですなー!」
 「うーん!
 お土産も楽しみにしていて下さーいっ!」
 「あいよーっ!へへへっ・・・」

突然の村人の声に応えるお万
その村人の周りにもまた、別の四柱の御犬様
ある御犬様は気持ちよさそうに寝て
ある御犬様達はじゃれて合って遊んで
そして、その話しかけたきた男に寄り添うようにして一緒に家の中へ入って行く御犬様も
清次郎は想った
(私も・・・
 あのように見えているのだろうか・・・)
そして
「本当に、見渡す限りが御犬様がばかりであるなぁ・・・」
「はい!
 みんな仲良しのお友達なんです」
「ははっ
 五百を超える友か・・・」
「ごひゃく?」
「あぁ、前に・・・
 その、まだ桜の咲く前に来た時に、毛むくじゃらの大男の千右衛門に問われて答えていただろう?
 御犬様は五百はおると」
「あぁー・・・
 そのくらい、ですね!」
「はははっ
 五百の友か・・・
 それは楽しそうだなっ!」
「はい!楽しいですっ!」
「はははっ、本当に・・・」
そして、千右衛門を思い出して・・・
お万の左足を見てしまう清次郎
「・・・」
「・・・・・?どうされました?」
「あぁ
 左足は、本当に具合は悪くないのだな?」
「はい!見て下さい!」
と言って
 ダッ!
と、突然駆け出す
そしてお万を追って駆け出すジン
「お?お万殿・・・?」
そしてジンが追いつく前に、振り返って
「この通りです!」
と笑顔で答える
そして飛びつくジン
「ぁあ!あははっ!」
「ははっ・・・
 いやはや、本当にすまなかったっ!」
それを見た清次郎は、目を伏せて頭を下げる
「こちらこそです・・・
 申し訳ございませんでしたっ!」
お万も同じくらい、頭を下げる
すると横から

 「おいお万様ー!その若いのに何か変なことされなかったかい?」
 「あぁ、田吾作様ー!
 清次郎様はそんなお人ではありませんよーっ」
 「ははっ
 まぁーそうみてぇだなぁ!」
 「うーん!」
 「ユウギ様も楽しそうで良いねぇー!」
 「オフッ!」
 「ふふっ・・・ありがとーっ!」
 「はっはっはー!」

何気ない村人との会話
その中から拾った言葉
(そうかぁ・・・
 やはりユウギ殿は、楽しそうなのか・・・・・ふふっ)
たまらなく嬉しい言葉
「ユウギ殿っ」
たまらず声を掛ける
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・」
見つめ合う二人
「はははっ」

 「おぉ何だいユウギ様ー?
 もうそんなに仲良くなって、流石だねぇ!!」

正面からまた別の男の声が歩いて来る
「ふふーっ、清次郎様とずっと前から一緒にいるみたいでしょ?」
「なぁ!羨ましいよ!」
元気すぎるその男に戸惑って、何とか言葉をひねりだして
「あっ、こ、こんにちわぁ・・・」
「おう!こんちわーっ!
 どうだったい?神社は?」
「ぁぁ
 色々と、勉強させて頂きました」
「おぉそうかいそうかい!」
と言いながら
 バンバン
強く肩を叩く
「いいねぇユウギ様も!楽しそうで!」
そう言って、すれ違いざまに頭を撫でて
「クゥゥー!」
「じゃぁなっ!」
返事を返す間も無く去って行く

「やはり楽しそうに、見えているのか・・・」
またしても清次郎は、まるで自分が褒められているように嬉しくなってしまう
そしてユウギに言うように
「御犬様かぁ・・・」
「・・・」
嬉しそうに見つめ返すユウギの瞳
黒かと思えば茶色でも無い
赤いようでもあり、少し緑がかった・・・
何とも言えない色の瞳
違和感を覚えたのは、人と違って白目と黒目が無いからだろうか
それでも気持ちを見出すとこのできるような、真っ直ぐな瞳・・・

「ここに来る前はな・・・」
「・・・?」
おもむろに、話し出す清次郎
「ここに来る前は・・・
 どうしてこの村に五百もの犬がいて、犬が大切にされているのか、聞きたかったのだ・・・」
「そうでしたか・・・」
「不思議で、たまらなかった
 しかもいざ来てみれば、ここでは犬は御犬様と呼ばれて神社にまで祀られている・・・・・」
「・・・」
「穢れるからと、普通であれば犬などの畜生は立ち入りすらままならぬ場所が多いのにな・・・」
「・・・」
そう歩きながら話して、ユウギの頭を撫でていた清次郎の手はユウギ頭から後頭部へ
そして背中へ
全身を撫でる
触って、感じて・・・
その存在を確かめているように
そして
「綺麗だ・・・」
つぶやいた

 その和やかな心音
お万は、清次郎がユウギだけに話しかかているように感じていた
だからお万は黙って、清次郎を見ていた・・・



 そして、しばらくして
「昔な・・・」
「・・・」
突然、清次郎の話す声が低くなって、心音が少し速くなった
放たれる空気も少し重くなったよう
「なぜかと・・・
 なぜ犬を殺してはならぬのか、兄上に聞いことがあった・・・・・」
「・・・・・」
「あれはお万殿と同じくらいの歳であったか・・・」
「同じくらい・・・」
「あぁ・・・」
ユウギと見つめ合う清次郎
その横顔
心音が上がってゆく
 トクッ、トクッ、トクッ、トクッ・・・
「・・・それは・・・いくつの頃でしたか?」
「あぁ・・・
 確か、八つの頃か・・・」
「八つ・・・」
「あぁ・・・」
空気が変わって、ユウギも少し心配そうに清次郎を見上げる
その眼を見つめ返すしながら、清次郎
「今考えてみれば馬鹿なことを聞いたものだ
 ユウギ殿も、そうは思わぬか?」
「・・・」
「家の者も、周りの者も皆、犬を畜生と呼んで・・・・・
 それが当たり前であった」
「・・・」
「だから、以前にこの村に来てから・・・
 ずっと考えていた・・・・・」
「・・・」
「犬とは・・・なんだろうと・・・・・」
「・・・」
「御犬様、か・・・」
「クゥゥゥ」
そう優しく声を上げるユウギ
「ふふっ・・・ユウギ殿・・・・・」
自然に微笑む清次郎
 ユウギの全身に散っていた手は、まだユウギの額に戻って・・・
そして力強く頭を撫でる
眼の周りの皮膚が引っ張られて吊り眼になる程に、強く
でも、優しく・・・
「勇気と、義理か・・・」
どんなに強く撫でても嫌な感じはしない
むしろ受け入れて、嬉しそうにして・・・
「おぬしは、一体・・・・・」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・」

「・・・」
お万はしばらくの間、黙って、その二人の様子を見守っていた・・・



「あっ!いやっ・・・
 申し訳ない、お万殿」
まるでお万の存在を思い出したかのようにそう言った清次郎
「何を話していたのか・・・
 嫌な話であったなぁ・・・」
「ぁ・・・いえ・・・」
しばらく黙って歩く二人・・・

 「ワンワンワン!」
 「オゥー!」

少し間を開ければ、すぐに御犬様の声が耳に届く
そして

「あぁお侍さん!
 ユウギ様と、御犬様とは仲良くなれましたかい?」
「あっ、は、はい」
「そうですか
 それは良かった」
しどろもどろの清次郎
「クゥゥゥゥ」
喉を鳴らすユウギ
「ユウギ様ー!よかったねぇー!」
そう言ってかがんで、両手でユウギの顔をワシャワワシャするその女性・・・
 清次郎は、覚えていた
この自分の歳の倍近い女性は、村の門をくぐる時に激しく問い詰めて来た内の一人だと・・・

 「穢れた犬喰いが!御犬様の神域になんの用だい!?」

しかし今は、あの時の般若のような恐ろしい印象は全く無い
「うふふっ
 ユウギ様はほんと男前ですねっ!あははっ」
ユウギとじゃれる合うその女性
今は、元気な声の・・・
美しい女性だとすら、感じている
(不思議なものだ・・・)
と・・・
 するとその女性が見上げて、目を見て
「ユウギ様が認めたんじゃぁ、私も認めるしかないねぇ」
「へぇ?」
そして立って
「お万様を頼むよ!お侍様!」
と肩をポンッと強く、重く叩く
戸惑いは消えないが・・・
「承知した!」
と、精一杯返した
「うふふっ、じゃぁねっ!」
そう残してすれ違う・・・

 ユウギはその女性の後ろ姿を少しの間、足を止めて体ごと振り返って見つめていた
「・・・」
しかしすぐにまた、清次郎を見上げる
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・」
またいつもの笑っているかのような嬉しそうな顔で・・・
またいつもの、真っ直ぐな瞳で・・・
黒と茶と
赤と緑と
そして黄色に白
様々な色で輝く瞳
それは光を受けて変わるのか?
そえれとも、ユウギの感情で変わるのだろうか?
「それとも・・・私か・・・・・?」
どの色が本当のユウギか・・・



「・・・」
その横顔を見て、お万も考えていた
(御犬様を・・・
 殺めてはならない訳は・・・・・)

 すると、ユウギを見つめながら、また清次郎が話し出す
「私も・・・
 この村に来る前は、犬を斬っていた・・・・・」
「ぁっ・・・」
「今も覚えている
 あの犬の表情と、感触と共に・・・・・」
「・・・・・」
「雪と同じように白くて、小さな・・・・・
 今思えば、可愛らしい犬であった・・・・・」
「・・・・・」
「天和様の子の、あの御犬様達のような・・・・・
 綺麗な・・・・・」
「白くて、小さな・・・」
と、復唱する微かな声
それに同調するように
「あぁ・・・白くて小さな・・・・・
 えっ!?」
驚いた清次郎
それはお万の声だと気付く
「あああっ・・・」
慌てて振り返って、お万の顔を確認する
清次郎の顔を見るお万
(私は何故?そんなことを言ってしまったのだ!?
 しかも、お万殿の前で・・・・・)
少しの間、目を合わす二人・・・
「・・・」
「・・・」
 やがてお万は目を反らして下を向く
何とも言えない、気まずい空気が周囲を包んだ
 分かってはいたが
そうなのだろうが・・・
改めてそう言われると戸惑ってしまうお万だった



「お万殿、すまない・・・」
清次郎が言う
しかし、目を合わせられない・・・
「・・・」
(なぜこんなことをわざわざ、言ってしまったのだろうか・・・)
そう想いながら言いながら、ユウギを撫でる清次郎
(不思議だ・・・)
相も変わらず、真っ直ぐに見つめるその瞳・・・
「この瞳が、そうさせたのだろうか・・・」

 すると自分のことを見ていたユウギがお万の方を見て
「ゥゥ・・・」
高い声を上げる
それが清次郎には、心配しているような・・・
眉をひそめたような顔に見えた
それがまた、思い出していた白い・・・斬った犬の最後の表情と重なって・・・
「・・・」
言葉を、選んで
「すまないお万殿・・・」
「・・・」
反応は無い
でも
「今は、というよりも・・・
 あれから、村に来てからは犬を斬ってはいない」
「・・・」
「もう犬を斬るのが嫌なのもあって、刀を質に入れたのだ」
「・・・」
反応が無い
「そうだな・・・
 説得力に、欠けるな・・・」
(刀がなくとも、脇差を抜いて襲い掛かったのだからな・・・・・・
 どうしたら良いものか・・・)



 しばらくの間
清次郎は次の言葉を選んでいると・・・
「・・・それで長い刀が無いのですね」
「え?」
「御武家様は、長い刀と短い刀の二つを持っているのだと思っておりましたから・・・」
「あぁ、そうだ!」
「・・・・・」
「ぁっ、ぅ・・・」
次の言葉が出て来ない



 また、しばらくして・・・
「それに、御武家様にとって、刀は大切なものだと聞きました・・・」
「あぁそうだ
 大切な刀ではあったが、質屋に相談したところ、それなりの値が付いてだな・・・」
「・・・・・」
「私なりに、郎党の為でもあったのだ・・・」
「ロウトウの・・・?」
「あぁ、郎党・・・仲間の為にも・・・」
「仲間・・・・・」
お万にしても、御武家様の刀がどれほど大切な物なのかは話で聞いて、物語などで読んで知っていた
(きっと私にとっては、ジンと別れるくらいに・・・)
と思ってジンを見て
「ヘッ、ヘッ、ヘッ・・・」
ユウギを見る
「ハッ、ハッ、ハッ・・・」
(そんなに犬を斬るのが、嫌になったんだ・・・・・)
そして清次郎を見て
「どうして?
 どうして御犬様を斬らなくなったのですか!?」
「ん!?」
急な質問に目を丸くする清次郎
「どうして、御犬様を斬るのが嫌になったのですか!?」
目をジッと見上げる小さなお万
「それは・・・・・
 考えるようになったのだ」
「考える?」
「どうしてこの村では、犬を大切にしているのかを・・・」
「・・・・・」
「そして思い出したのだ・・・」
「?
 何をですか?」
「兄上になぜ犬を殺してはならぬのか、聞いたことを・・・・」
「・・・」
「だから今日は・・・
 どうして殺してはならぬのか・・・答えを探しに来たのだ」
「そ、それで・・・」
すると、突然横から

 「何です?
 さっきから辛気臭くないかですか?ほらっ!」

と、皿を差し出す若い女性
そこには赤くて可愛らしい実が
「あぁーっ!野苺!」
目を輝かせて、自然と体がピョコピョコ跳ねるお万
洗いたての野苺
水を浴びて、キラキラと輝いている
「あははっ
 ほんとお万様は、甘い物に目が無いですねぇ」
「うんっ!」
そして手で取ろうとするが、止まって
「でもお勝様・・・いいの?」
「えっ?」
「もうこれで終わりじゃないの?」
「そうですね
 もう時期も終わりですね」
「お勝様だって、これも楽しみにして戻って来たんじゃ・・・」
「ふふっ、良いのっ!
 お万様の為に取っておいたのよっ」
「はぁぁぁー、うん!ありがとう!」
「ふふっ
 また良い場所、見つけて来て頂戴ねっ」
「うん!
 またいっぱい走る!」
そう言って、美味しそうに頬張るお万
「ジーンっ」
と差し出せば、空かさすペロリッ
嬉しそうに食べる
「ふふっ
 お侍様も、いかがですか?」
「あぁ・・・私は・・・」
「美味しいですよ?」
「いや・・・」
そう言って、軽く頭を下げる清次郎だが
「・・・そんな痩せた体で、遠慮なさらないで下さい
 倒れてしまいますよ?」
「あぁ・・・」
「ほらっ!・・・嫌ですか?」
「いやでも、貴重なものなのだろう?」
「んー・・・」
と口を尖らせるそのお勝という女性
なぜだろうか?
清次郎はお七を思い出した
「ぃ、いただこう!」
「はいっ!ふふっ・・・」
 パクリ・・・
「んんーーー甘い!こんなに甘いものだったのか!?」
目を見開く
「ふふふっ
 野苺は初めてですか?」
「いやー
 前にも食べた気がするが・・・
 このように甘くは無かった」
「そうですか・・・
 野苺にも色んな子がいますから、お侍様の食べたのが、たまたま口に合わなかっただけかもしれませんね」
「そうなのか?」
「はい
 どのような苺を召し上がったのですか?」
「あぁ・・・」
(水を飲んでいたらたまたま見つけて、腹が減っていたから食べた、などとは言えぬな・・・)
「?」
「すまない、覚えていなくて・・・」
「あらぁ・・・」
「いやそれにしても美味い!」
「はいっ」
「それで・・・すまぬ、お勝殿、
 もう一つだけ良いか?」
「どうぞ、召し上がれっ」
「すまぬっ」
と言って、手に取って
「ユウギ殿、いかがか?」
と言って、手の平に赤く輝く野苺をのせる
 クンクン
匂いを嗅いで
 ジーーー
清次郎を上目遣いで見上げる
「?
 嫌いなのか?旨かったぞ?」
 ジーーー
「ほれっ」
と、手を鼻先に近づけると
「・・・」
パクッ
口にした
「おぉぉぉー!
 見たかお万殿?私の手からも食べてくれたぞ!」
「はい
 ふふっ」
まるで子供のように嬉しそうに言う清次郎
「あぁすまぬ
 つい、嬉しくてな
 お万殿がやっているのを見て、ずっとやってみたかったのだ」
お勝はそれを見て
「・・・お優しいでしょう?ユウギ様は?」
「あぁ!」
「私が・・・
 辛い時や寂しい時にね、不思議と現れて、傍にいてくれるんですよ・・・」
「辛い時や、寂しい時に・・・?」
「そうなの
 不思議でしょ?」
「・・・・・」
無言で、ユウギを見つめる清次郎
何故ならそれは、清次郎が先ほどから何度も・・・
そして今日何回も、感じたこと・・・
「不思議か・・・」
「ふふふっ」
そう笑って
「・・・もしかしたら、御犬様には分かるのかもしれないですね・・・」
「分かる?何がか!?」
「人の気持ちの、奥底が・・・」
そう言って、笑顔で清次郎を見るお勝
「それは・・・・・」
その視線に困って、清次郎はユウギを見てる・・・
すると
「手を、出して下さい」
「え?」
「ほらっ!」
と清次郎の手を取って、残った3つの野苺を手にのせて
「お二人で食べて下さいねっ」
とお勝は言い残すと、綺麗になったお皿を持って家に戻った



「二人とは、ユウギ殿とだろうか・・・
 人ではあるまいに・・・・・」
ヒンヤリと冷たく、赤く輝く野苺を手にのせたまま・・・・・そのお勝の後ろ姿を眺めていると
足元に違和感
「ヘッヘッヘッヘッ!」
ジンが袴に前足を掛けて跳ねて、眼を輝かす
「ヘッヘッヘッヘッ!」
「ジーンー!もう駄目だよ!
 それに袴を汚さないの!」
と、お万は抱き上げて引きはがす
それを見た清次郎
「袴は構わんが・・・
 なぜ苺は駄目なのだ?」
「あぁ
 あまり食べ過ぎるとお腹をこわしてしまうのです」
「そ!そうなのか?・・・まさか毒が?」
「いえ
 十も二十も食べなければだいじょうぶですよ」
「そうか・・・
 それはなら良かった・・・」
「え?」
「・・・見てくれ」
と、視線を案内する清次郎
そこには、口元から涎を垂らすユウギ
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・」
「この涎を・・・」
「あははっ・・・
 ユウギ様は前に食べ過ぎてお腹をこわしてから、きつく止められているんです」
「ではやはりこの涎は・・・」
「はい!食べたくて食べたくて、辛抱しています笑」
「あははっ!
 可愛いのぅユウギ殿
 まるで赤子のようではないか・・・」
すると

 「グゥゥ!」

低く唸る獣の声
その凶暴は声の主は、ジン!?
お万の手の中で暴れると
「あああ‶!」
 シュタッ!
すり抜けて着地
そして素早く地面を蹴って飛び、清次郎の手に体当たり!

 「キャウ!」
 「おおお!」

手に内あった野苺が宙を舞う
「ヨシッ!」
と、空中のジンは目の端でそれを捉える
そしてまるで猫のように体をひるがえして着地
その着地の力を利用して後ろ足に力を蓄えて、また跳ねる
もちろん目標は赤く輝くそれだ!

 「イタダキマース!」
 「だーめっ!」

しかしお万にそれを阻まれ、空中で捕縛
また手の中に収まった

 「グゥッ!グゥゥゥー!」

暴れるジン
「おぉぉぉ・・・」
引く清次郎
「ごぉ、ごめんなさい!
 早く野苺を!ユウギに!」
叫ぶお万
清次郎は空飛ぶ野苺を掴んだ
そして
「ユウギ殿!」
と手の平に乗せて、素早く膝を付いて3つの野苺を差し出す
「・・・」
それを見て、嗅いで・・・
清次郎の目を見るユウギ
後ろでは
「グゥゥゥゥゥ!」
と、まだジンが唸っている!
「良いぞ」
と返すと
「ウフッ!」
と喉を鳴らして
 ペロリッ
平らげた

「はぁー」
お万はため息をついて、ジンを放した
 フンッ!
と荒く鼻息を漏らすジン
そして清次郎の周りを回る
 クンクンッ、クンクンクン・・・
「まさかジン殿が、あのような俊敏さを隠しておったとは・・・」
ジンの豹変に、清次郎はやや引き気味だ・・・

 クンクンッ、クンクンクン・・・
しゃがんだままの清次郎
その周りを嗅ぎ回るジン
先程の跳躍力であれば、一足飛びに顔に噛みつかれるかもしれない・・・
いつ牙を向けられるかと、気が気でない
「ジンは、食べることになると眼の色が変わるのです・・・」
「なるほど
 そのようだな・・・」
「はいぃ・・・」
「しかし・・・
 御駆追では、あの力は発揮されぬのか?」
お万は首を左右に二度振って
「一度も・・・・・」
「あははっ
 そうか・・・おおぉ!」
ジンが袴に潜って、股の下まで確認しているようだ
「入念だな・・・」
「はいぃ・・・
 お恥ずかしい・・・」
清次郎の股から顔を出したジンはそのまま正面に回って・・・
眼を細めて、見上げる・・・
そして低い声で
「クゥゥゥ・・・」
それはまるで
「ワタシノ野苺!カエシテッ!」
とでも言いたげだ・・・
「怖ろしいなぁ・・・」
「変なところで野生を取り戻してしまうようで・・・
 本当に、お恥ずかしい・・・・・」
「はははっ・・・」
 すると
 ペロッ
また頬に良く知った感触が
「ユウギ殿・・・」
丁度膝を付いた清次郎の顔の真横にユウギの顔がくる
「ウマカッタ!」
満足そうな顔
「本当に、ユウギ殿は笑っているような顔をするのだな・・・」
「ハッ、ハッ、ハッ!」
その顔を見ていた清次郎は
「はははっ」
自然と微笑んでしまう
すると
「ん?・・・どうしたのだ?」
ユウギはゴロリと地面に寝っ転がる
そしてお腹を見せて
「ハッ、ハッ、ハッ!」
清次郎を見つめる
「・・・ユウギ、殿?」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!」
「・・・・・お万殿、これは!?」
振りむいて、少し眉をひそめてお万を見る
「ふふっ
 ユウギはどうしてほしいと思います?」
「それは・・・」
また視線をユウギに戻すが・・・
「分からぬ!
 お万殿、意地悪をせんでくれ!」
「意地悪?」
「だって、先程の苺で腹を下したのではないか!?久しぶりであったのであろう?
 どっ、どうしたら良いのだ!?」
「あぁ、心配して・・・」
「違うのか?」
「うふふっ
 お腹を、撫でてあげて下さい」
「矢張り腹を下したか!」
「違います笑
 そんな顔に見えますか?」
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!」
ユウギはまた、いつもの笑顔・・・
「見えぬな・・・
 しかし腹を見せたので・・・つい、てっきり・・・」
「ふふっ
 御心配、ありがとうございますっ」
「うむ・・・
 難しい・・・」
「ふふっ」
「でもしかし、腹にはあまり毛が無いように見えるが・・・・・
 触っても痛くはないのか?」
「はい
 優しく撫でてあげれば」
「そうか・・・」
と、恐る恐る、手をお腹に当てると
 トクッ・・・トクッ・・・トクッ・・・
「おぉぉ、鼓動が・・・」
 トクッ・・・トクッ・・・トクッ・・・
「温かくて、柔らかい・・・・・」
そして手を出来るだけ優しく、ほんのわずか表面だけに降れるようにして、優しく撫でる・・・
すると
「クゥゥゥゥ・・・」
喉を鳴らしている
「・・・・・・お万殿の言う通りだ・・・気持ち良さそうにしておるぞ!」
と、お万の顔を見た清次郎の無邪気な顔
「はい
 私にも伝わります」
「そ、そうか!
 御犬様は、ここが気持ち良いのか・・・」
「・・・」
「すごいな、お万殿は・・・」
「ふふふっ・・・」
「こんなに、腹まで見せて・・・」
「グゥゥゥウゥゥ・・・」
「おおお・・・・・
 眼もつぶってしまったぞ?」
とまた、お万を見る
「ふふっ
 気持ちいいんですよ」
「そうか・・・・・気持ちが良いのか・・・・・
 しかし隙だらけであるぞ、ユウギ殿?」
「ふふふっ」
「はははっ
 さっき私を翻弄して、気を失わせた手練れには思えんな!」
「あはは・・・」
「何と、温かい・・・・・」



 清次郎の手を気持ちよさそうに受け入れて、目を閉じているユウギ
満足そうで、気持ちよさそうな・・・
溢れる柔らかい空気と、甘い薫り
「ふふふっ」
お万は気が付いた
ユウギはその全てで、清次郎を受け入れたことに

 そうお万は、想っていると・・・
「お万殿・・・」
清次郎の声
「はい?」
少しの間
それから
「犬とは・・・」
「・・・」
「御犬様とは、こんなにも愛らしいものだったのだなぁ・・・・・」
清次郎はしみじみと、そう言った
「はい!」
「はははっ
 今日は沢山教えてもらった
 お万殿にも、御犬様にも・・・」
「そんな・・・」
「だから今なら、なぜ犬が大切にされているのかも、なぜ犬を殺してはならぬのかも・・・
 聞かずとも分かる気がしておるよ・・・・・」
「はぁぁぁぁぁ、はい!」
「はははっ
 よしよし・・・」
「ムゥゥゥゥウゥ・・・」
清次郎にお腹を撫でられて揺れながら、喉を鳴らすユウギ
「はははっ
 本当に、気持ちが良さそうにして・・・」
「ふふふっ」
「羨ましいぞ・・・」
「・・・」(うらやましい・・・?)
と少し疑問に思うお万
しかし、清次郎の話は続く
「何故だろうか・・・」
「え?」
「不思議と、ユウギ殿といると・・・
 素直な気持ちになれるのだよ・・・」
「・・・」
「まるで術にかかっているかのような・・・」
「・・・」
「しかし、温かくて・・・・・」
そう言って、止まらない程度にゆっくりと、ユウギのお腹を手が撫でる
「・・・」
段々、段々と・・・
その手はゆっくりと・・・
そして清次郎の話はどんどん、どんどん深く・・・
心の内を、洗い出すようにして・・・
「今は、将軍様の御意向も・・・
 父上が処罰を受けたのにも、理解を示すことができてしまう・・・・・」
「将軍様?お父上?」
「・・・・・」
「・・・清次郎様の?」
「そうだ
 父上は・・・・・我が家は、将軍様の生類憐れめとの数々のお達しを無下にして、それに反する行いばかりしておった・・・」
「・・・」
「旗本であった」
「はたもと・・・」
 コクッ
と頷く清次郎
それから振り返って、お万の顔色を見てから
「将軍様にお目見えのできる、それなりに大きな武家であるよ」
「お目見え・・・犬公方様に!?」
「あぁ・・・」
と優しく返して、眼を伏せて・・・
「・・・お達しを無下にした上、あまつさえ、将軍様に御触れの数々を見直すよう求めたのだ・・・
 水戸の光圀公の、虎の威を借りてな」
「・・・」
「・・・水戸光圀公は、存じておるか?」
「は、はい!
 儒学に通じて、天下國家の歴史をまとめている大変立派な御方だと、父上がっ」
「はぁぁ、すごいなぁお万殿は・・・
 気を遣ったつもりであるが・・・」
「私ではございません
 父が、儒学者で・・・
 私も本を読むの好きなのもので・・・」
「そうか・・・」
そう言ってお万をまじまじと見る
「お父上は、儒学者であったか・・・」
「はい」
「・・・」
「・・・」
ユウギのお腹を撫でていた清次郎の手は、止まっいた・・・
「・・・それで、生類憐れめとのお達しに反するばかりの父の行いの数々は、将軍様の逆鱗に触れてた」
「・・・」
「そして家は改易・・・浪人に・・・・・」
「ロウニン・・・」
「それで、その上・・・
 殉死は禁止されておるにも関わらず兄上は後を追い・・・次男である私と、郎党が残ったのだ」
「ロウトウ・・・」
「あぁ
 あのお万殿を傷つけた大男の千右衛門も、大切な・・・・・代々家に仕えてくれた、郎党なのだ・・・」
「・・・」
「御犬様によって全てを失ったわが家だ・・・」
「・・・」
「だから今日の日は、私にとってとても大きな・・・・・
 天地がひっくり返るような出来事の連続であったのだよ」
「そうでしたかぁ・・・」
「うむっ!」
「・・・・・」
 すると

 「キューン・・・」

続いて

 「クゥゥーン・・・」

ジンとユウギが見上げて、二人を交互に見る
「ネー?
 サッキカラナンノハナシー?」
「ジン・・・」
「ドウシタノ?」
「ふふっ、心配してるの?ありがとっ」
「アウウウッ!」
「ふふっ」
とジンを抱き上げるお万

「サッキカラ、変ダゾ?」
「おお!ユウギ殿・・・」
ユウギは清次郎の知らぬ間に、立ち上がっていた
「そうか、いつも間にか手が止まっていたか・・・」
「ダイジョブカ??」
ペロッ
「ぁはははっ
 辛気臭くてすまんなぁユウギ殿!」
顔を両手でワシャワシャして、気持ちを伝える清次郎
そして
「・・・このように・・・家の話をしたのは初めてだよ」
「・・・」
「聞いてくれて、有難う」
「あ、いえ
 こちらこそ失礼しました・・・」

 その声は明るい清次郎
だが
(公方様のお達しで、家を失って・・・家族を失って・・・・・)
それはきっと、大変な・・・
さっき清次郎が言っていたように、天地がひっくり返る程の事だというのを、お万は清次郎の放つ空気から察した
そしてユウギが不思議なくらい清次郎に寄り添って、懐いたのにも納得出来た・・・



 「チィー!」

と、お万の頭に鷹丸が降りる
「あっ、鷹丸ー」
お万はいつものように、鷹丸の口元に指を出して少し挨拶をする
いつの間にか、門の近くまで歩いていたようだ
 その鷹丸とお万の様子を見ていた清次郎
「はははっ
 鳥までもか・・・」
「はい!
 私の大切な仲間です!」
「仲間か・・・」
「はい!ロウトウです!
 チィーチィー!」
と鳴きまねをしながら、お万は人差し指で鳥の嘴を真似るようにする
「あははっ
 もはや鳥とまで通じていたとしても、疑わんよ」
「ふふっ」
「チィー!」
そこに

 「おお清次郎様ー!お帰りですかい?」

 「あぁー
 これはこれは、五郎殿
 此度は誠に、世話になり申した」

遠くから歩いてくる皆を見ていた五郎
ユウギと親しそうに並んで歩く清次郎の姿を見て
「へへっ」
思わず笑みがこぼれた
そして
「・・・どうでしたか?噂の真偽は?」
「あっ、あぁ・・・・・
 そのような話も、していたな・・・」
「・・・どうでした?」
目を覗き込むように見る五郎と、たじろく清次郎
「ははっ・・・
 そのように見られると、まいったなぁ・・・・・」
「へへへっ」
そこにお万
「ふふっ
 清次郎様は、ユウギ様や私が物の怪だと思っておられたのですか?」
「ええっ?」
「私の父に噂があるように、妖術使いはおりましたか?」
「ぁぁっ、お万殿ぉ・・・」
とたじろぎながら
「やはり、知っておったか・・・」
「はい!」
「お七殿もだが、お万殿も意地が悪い・・・」
「ふふふーっ」
五郎も
「で、いかがでした?噂は?」
「それは・・・」
「それは?」
「・・・物の怪など、おらんかったよ」
「・・・」
「それに真っ黒になった五つ子も、他の御犬様と変わらぬ可愛い子犬であった!」
「へへっ、でしょう?」
「あぁ!
 五郎殿の言う通り、噂は・・・噂であったよっ!」
それを聞いた五郎
 フゥーーーー!
と強く息を吐いて
「誰もが清次郎様のように実際に見て触れれば、そこいらの里犬と変わらぬものと分かるものを・・・
 せめて自分の目で見てから言えってんんだぃ!
 でしょう?お万様?」
「うん!それは大切!」
「ヂュン!」
「はははっ・・・
 私が言えたものではないが・・・御察しいたすよ、五郎殿・・・」
「じゃ清次郎様も、周りの奴らにホントのことを言ってやって下せぇな」
「あっ、あぁ!
 心得たよ」
清次郎もたじたじ
「でも・・・」
「?」
「でも私には、妖術や呪術にも思えるような・・・
 目が開かれるような不思議で奇怪なとこを、今日は沢山経験させてもらったよ・・・」
しみじみと、清次郎
そしてお万も
「ふふっ
 それは私もでしたっ」
「はははっ」
「あははっ」
また、笑い合う二人
「へへっ・・・随分と仲良くなって・・・」
と、五郎
「人は・・・自分に理解が及ばないものを、何でも妖術や物の怪のようなありもしないモノに結び付けるもんですぁ
 自分の知っている誰かのせいにしたり、自分の知識の中にある都合の良いモンと結びつけて、自分の中で勝手に納得して安心する
 世の中もっと広くて、知らねーモンが沢山あるってーのにさぁ・・・
 そういうもんじゃぁーありませんか?」
「いやぁ、全く、その通りであった・・・・・
 面目無い!」
そう言って、五郎に頭を下げる清次郎様
「おぉ清次郎様!
 お侍さんがっ、止めて下せぇ・・・」
「いやぁ
 これは五郎殿にでもあるが、五郎殿の後ろの、村に皆に対してでもあるのだ」
「村の?」
「そうだ
 あらぬ噂を信じ込んで濡れ衣を着せていた・・・
 そんな自身を、恥じておる」
「・・・」「・・・」
確かに、清次郎の頭は神社に真っ直ぐ、向いてる・・・
「謝らなくては、それこそ名折れでである」
「そうですかぃ・・・」
これには五郎も恐縮して
「ほんとあんたぁ・・・
 お侍さんらしくないねぇなぁ・・・・・」
「・・・」
「頭、上げて下さいよ・・・」
「うむぅ・・・」
「へへっ」
そして、五郎は清次郎の目を見て
「村のみんなも分かってもらえて、嬉しいと思いますぜ?」
「そうであると、良いな・・・」
そう言った清次郎
さっきすれ違った村人を思い出しながら・・・

そのしんみりとしてにる清次郎の横顔に、お万
「ふふっ
 またユウギ様と遊んでくださいねっ!」
「ん!?」
「?」
「それは・・・」
「・・・?」
「それはまた来ても良いと、受け取っても相違ないか?」
「え?」
横から、五郎が
「いいんじゃないですかぁー?
 ユウギ様も離れたくなさそうにしれますしっ」
「あぁ、ユウギ殿」
足元で自分を見上げて、いつもの笑っているような顔で、尻尾を振って
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ!」
「名残惜しいのぅ・・・」
とかがんで、撫でて・・・
「こんなにも、後ろ髪引かれるとは・・・」
「クゥゥーン」
「まるで、行くなと言ってくれているようだ・・・・・
 おぉっ!」
 ペロリッ
と、顔舐め攻撃
「しかしこれにはまだ慣れぬなぁ笑」
 ペロリッ
「ははっ!」
「へへへっ」
「ふふっ
 いつでもいらして下さいねっ」
「あぁ是非とも、そうさせて頂くよ!」
と言って、ユウギに手を触れたまま、門を跨ぐ
そして
「では、またっ!」
とまた丁寧に頭を下げて、清次郎は去って行った・・・



 「オゥーーーーーーーー!」

薄暗い獣道を帰る清次郎に、ユウギの声と分かる遠吠えが届く
「ふふっ・・・」
何故か背中が、温かかった

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