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《「便利」よりも大切な生活の「軸」とは》名もなき読書家の読書感想エッセイ⑲ #159

日本新記録の暑さに、津波警報。
ざわざわする気持ちを抱えながら、それでも読書をして違う世界を味わおうとした昨日。
良いことも悪いことも1日で起こる。
そこから逃げられないのが人間なんだろう。


夏の読書リスト、3冊目の読了はこの本。

『いとしきもの 森、山小屋、暮らしの道具』 
小川糸

読み始めたのは、6月だったか。
その後、読書が出来ない日々に積読化してしまっていた。

この本は、作家の小川糸さんが八ヶ岳の美しい森に出会い、「山小屋」を建て、移住し生活する様子をフォトエッセイにしたものである。

小川糸さんの小説は、実のところ『食堂かたつむり』しか読んだことがないのだが、エッセイは殆ど読んでいる。
エッセイに表れている小川さんの率直さや正直さ、そして生活を大切しているところが、心に響き、好きになった。
毎年出版されているエッセイは日記形式だが、今回はフォトエッセイ。
どんな本か楽しみにしていた。

読み始めると、何故積読になっていたのか不思議なくらいするすると読め、ほぼ一気読みと言っていいくらいだった。
エッセイ1本ごとに美しい写真が挟まれているので、文章からイメージを膨らませながらも、実際の風景をも堪能できるようになっていた。

特に好きな写真がある。
p.70-71の山小屋の2階の様子である。
大きな窓から美しい森が覗き、毎日この風景を見られる小川さんが本当にうらやましくなった。
私が住んでいるのは市街地なので、窓から見えるのは建物だけ。
その為、部屋には観賞植物を置いて、少しでも緑に触れている。
しかし、生まれ育ったのは田舎の山奥なので、窓から見えるのは山や田畑ばかりであった。
それが嫌だった時期もあったが、都会に出るとその贅沢さに気づいた。
小川さんが窓から見える風景が美しいように、私の実家から見える風景も美しかった。

田舎から都会に出るのは何故か簡単に感じるのに、一旦都会に住むと田舎に戻るのに大きな勇気が必要な気がする。
少なくとも私はそうだ。
「便利」さ。
これを味わうと、人はなかなか手放しづらい。

しかし現代では、人手不足から様々なサービスが縮小している。
特に日本では今後それが益々顕著になるだろう。
「便利」さを手放さなくてはならなくなった時、私たちはどうすべきなのだろうか。
勿論お金がふんだんにあれば、手放さなくても済むかもしれない。
けれど、それは一部の人間だけだ。
私は、どうするのだろう。

小川糸さんの生活を見ていると、「便利」さよりも、「心地よさ」や「気持ちよさ」を大切にしているようだ。
他人は、わざわざ不便な森の中に家を建てることを理解しないかもしれない。
しかし、本当に小川さんは「不便」なのか?
その答えは否である。
この本からは、小川さんが「便利」「不便」といった物差しで生きてはいないことが良く分かる。
心の安寧や体の健やかさ、そういった人として本当に大切なことを「軸」にして生活している。
これこそが、本当の丁寧な暮らしなのかもしれない。

私が、小川さんのエッセイや生き方に憧れるのは、その「軸」が美しく見えるからだろう。
だとすれば、私がどこに住んでいようと、彼女の「軸」をお手本にできるはずだ。
「便利」さに囚われている自分であると自覚しているが、生活を見直すいいきっかけとなった。

今いるこの場所で、小川さんの「軸」を頼りに、自分なりの丁寧な暮らしを模索していこうと思ったのだった。

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