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羽生善治と羽生結弦:「二人の羽生」の、意外かつすばらしき共通点(2015. 12. 30記す)~羽生結弦 My History Vol. 16~

シーズンになるとその関連の記事を連発してここに載せるほど、私はかなりディープなフィギュアスケートファンである。

(その割には一度も現場で観戦できていないのが残念だが)

と同時に、私は永年の将棋ファンでもある。

そのフィギュアスケートの世界で男子シングルの「絶対王者」として君臨しているのが羽生結弦。

そして将棋界でかつて7つのタイトルを独占し、今もなお4冠王(名人・王位・王座・棋聖)として確固たる地位を築く第一人者が羽生善治である。

羽生(ハブ)善治と羽生(ハニュウ)結弦。

読み方は違えど同じ苗字のこの2人が、ともにそれぞれの世界でトップを極めているのは偶然だけど面白いな、

なんてくだらないことを考えていた私だったが、

先日この2人に「意外だがすばらしい共通点」があることを知った。

スポーツ専門誌「Number」892号はフィギュアスケート特集。

その記事の中心は、NHK杯とGPファイナルで異次元の世界最高得点を連発した羽生結弦である。

ここに掲載された羽生関連の3つの記事は、さすがNumber、どれもすばらしい内容だったが、

とりわけ目を引いたのが松岡修造氏の記事だった。

松岡氏はGPシリーズとファイナルで総合司会的な役割を務め、

解説の織田信成氏とともに「情熱の司会」を続けてきたが、

(最近はこの「アツさ」があまり気にならなくなってきた。

同じようにアツい佐野稔氏の実況解説(私は彼の解説が大好きだ!)に影響されたようだ)

このNumberで連載している「熱血修造一直線」は、

アツさに元アスリートらしい冷静なまなざしと分析が加味され、かなり読ませる内容になっている。

今回はこの「熱血修造一直線」の特別編として、

「羽生結弦だけに見える、パーフェクトの向こう側」

と題したインタビュー記事である。

NHK杯でのパーフェクト演技に至る経緯について羽生結弦が語るのだが、

記事の最後に非常に興味深いエピソードが語られていた。

NHK杯のSPで自分の前にボーヤン・ジン(中国)が95.64をマークした時のこと。

「95点って点数を見た瞬間、

『おお、ノーミスだったんだ! 彼の完全なる実力が出たんだ。よっしゃー』

と思って」

「よっしゃー? やばいじゃなくって?」といぶかる松岡氏に、羽生がコメントを続ける。

「昔からそうなんですけど、誰かが悪い演技をしたときに勝つのってすごい嫌なんですよ。

相手が実力を全部出した上でそれでも俺が1位なんだ、っていう。

そこまで追い詰めたいんだと思うんですよね。自分を」

「相手が悪い演技をした時に勝つのは嫌」これを目にした時、

「あれ、これどこかで見たな」と思った。

そこで思い出したのが、将棋界のスーパースター・羽生善治四冠王のエピソードである。

我がブログの「書評」にしたためた

「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?」の記事。

2009年の第57期王座戦、羽生王座と山崎隆之七段(当時)の一戦でのこと。

終盤まで息詰まる攻防が続いたが、

最終盤で山崎七段が失着を指し、羽生王座の勝ちとなった。

その時、羽生王座が喜びではなく怒りの表情を浮かべたのだ。

「あれ、むかつきますよ、勝ってんのに」とこぼす山崎七段。

勝ったのに怒るとはどういうことか。

それは、羽生さんは勝負師であるとともに

「すばらしい、美しい将棋を指したい」

というアーティストの側面も持った人だからだ。

将棋は自分と対戦相手との共同作業で1局の将棋が出来上がるわけだが、

双方が最後まですばらしい手を続けた時、羽生さんの目指す「美しい将棋」が完成する。

しかしこの時は、終盤まですばらしい熱戦が続いていたのに、

最後の最後で山崎七段が失着を指したため、

それまで2人で築き上げてきた「美しい将棋」が壊れてしまったのだ。

羽生さんの怒りは、その「美の崩壊」に対する怒りだったのだ。

谷川浩司・日本将棋連盟会長がかつて

「羽生さんには、他の棋士には見えないものが見えている」

と語っていたが、それはこういう境地を言っているのではないだろうか。

勝ち負けを超えた、深淵かつ崇高な地に羽生さんは立っているのだ。

この「二人の羽生」は、同じ境地に立っているのではないか。

「究極の美しい将棋」を目指す羽生善治、

「自分がスケートをしている目的は、どれだけ自分の演技を極められるか」と語る羽生結弦。

ともに己を厳しく見つめ、決して現状に満足せず、常により高みを目指す。

これからもこの二人の活躍、これから残していく足跡に目が離せない。

(いつかどこかのメディアでこの「二人の羽生」の対談をやってくれないかな。

かなり面白くて興味津々の内容になると思うんだけど)

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