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BRICSとG7のパワーバランスは逆転したのか? ~経済、軍事、AIという視点から考察~

はじめに

2023年、BRICSにサウジアラビア、イラン、UAE、エジプト、エチオピアが加盟し、2024年にはインドネシアが新たに加わった。新興国の中でも軍事的、政治的、経済的に影響力を持つ複数の地域大国の加盟は、G7に変わるBRICSという新たな世界秩序の誕生を予感させた。
20世紀はG7が絶大な影響力を誇る時代であった。超大国アメリカ、戦勝国の英仏、工業大国の独日、経済に強みを持つ伊加と、西側諸国が世界の中心であった。
しかし中国の躍進を筆頭に、BRICS諸国が徐々に力をつけていった。もはや「世界の中心は西側諸国」と自信を持って言える現状は過去のものとなった。
主に西側諸国からなるG7と、東側陣営および第三世界の国々からなるBRICSは、今後対立する二大陣営となり、新たな冷戦もしくは戦争に突入可能性がある。たびたび議論される「BRICS vs G7」という構造を、経済、軍事、先端技術という点から改めて整理してみようと思う。

① 経済規模ではBRICSが優位?

2024年G7の世界の総GDPに占める割合は約30%、BRICSの占める割合は35%である。すでに経済規模ではBRICS諸国がG7を上回っている。米国を除くG7諸国の経済が桁なみ衰退しているのに対し、BRICS諸国の経済は発展を続けている。
人口を比較してみると、BRICS諸国の人口は約41億人G7の総人口は約7.8億人である。総人口では圧倒的にBRICSが上回っているため、今後一人当たりGDPが伸びてくれば、世界経済に占める割合はBRICSがさらにリードを広げることになる。
一方株式市場の企業の時価総額の合計ではG7は推定57兆ドル、BRICSが27兆ドルであるため、「企業価値」という観点から見るとG7が倍以上の差を付けてリードしている。
これはつまり、「循環する財やサービスの総量はBRICSに軍配が上がるが、今後のイノベーションや価値の想像を期待されているのは現時点でG7」であるということが言える。今後BRICS諸国で証券取引所の整備が進み、株式市場が全世界に開かれればこの状況はやがて逆転する可能性がある。よって、経済はBRICSに軍配が上がると言える。

① 軍事力はNATOを味方につけているG7に軍配か

軍事力を比較するためにはいくつかの指標を見なければいけない。防衛費、軍隊の規模、兵器の量と質などである。
世界の国々の総合的な軍事力を数値で示したGlobal Firepower Indexという指標によると、G7諸国とBRICS諸国の軍事力の比較は以下の通りになる。

G7とBRICS諸国のGFIスコアの比較(Perplexity調べ)

この表を見ると、BRICS諸国は世界2位、3位、4位の軍事力を持つ3つの強国と、それ以外の中堅国家の集まりという構図になっている。一方G7はアメリカ1強であるものの、そのほかの国々水準は高いレベルであることがわかる。一概にどちらが優勢とは言えないが、G7にはNATOという強力な味方もいることを忘れてはならない。G7とNATOは切っても切れない関係にあるため、趣旨とは少しズレるが、NATOを考慮しなくてはならない。NATOは史上最大の軍事同盟であり、軍事費、兵器の質ともに世界最高である。ロシアや中国といった超大国の物量を持ってしても現時点ではNATO、すなわちG7に軍配があがる。

③ 最先端技術は米国と中国の争いに

AIや量子コンピューティング、半導体技術などの最先端技術は、今後の経済や軍事力に多大な影響を与えることが予想される。これらの領域でアドバンテージを取ることは今後の覇権争いにも関わってくることである。
現在、これらの領域で優位に立っているのは米国であり、次点で中国となる。全ての根幹にある半導体技術は一朝一夕で完成されるものではなく、工程が細分化された現代では、革新的イノベーションによってその立場が急にひっくり返るということは考えにくい。米国と中国以外でこれに並ぶ可能性があるのはインドだが、現時点ではこの2カ国には遠く及んでいない。
ただ、何があるかわからないのが先端技術の面白いところである。ありえないと思われていた状況がひっくり返るという可能性がある限り、現状「少し優位な米国」と「それに次ぐ中国」という一騎打ちの構造が変化しない保証はない。

④ 懸念点

ここまでBRICS諸国が今後G7を上回るような趣旨の主張をしたが、G7にあってBRICS諸国にない大きなものは「反西側以外の共通の理念がない」ということである。G7諸国は全てが同盟国であり、「自由民主主義」という共通の理念を持っている。日本以外は「キリスト教の国」という共通項もあり、歴史的にも強い繋がりがある。一方のBRICS諸国には、中国共産党、ロシア、キリスト教勢力、イスラム勢力と、本来であれば油に水ともいえる勢力が手を組んでいる構図になっている。このような国々が一時的に手を組むのは、「対西側勢力という秩序を構築したい」という利害の一致によるものである。
つまり、仮に西側諸国を超えるパワーを付けたら、今度はBRICS内での争いが始まり、新たな秩序の形成には至らないのではないかと思う。

結論

現時点で①経済規模はBRICS②軍事力はG7③最先端技術もG7という結果であった。すなわち、G7とBRICSの力関係はまだ逆転していないと言える。
ただし、G7の経済的、軍事的な力は米国に依存している。人口の規模的にも米国に代替できる国は一つもない。一方でBRICS諸国も中国依存といえる部分があるが、インドやブラジル、インドネシアなど、人口規模的に超大国になれる可能性のある国々が控えている。今後BRICSがG7を大きくリードし世界秩序を創造する未来も見える。しかし、④で示した懸念の通り、BRICS諸国は一枚岩ではない。仮にG7を上回る力をつけたとしても、それは新たな世界秩序の形成という未来を意味しない可能性は高い。


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