見出し画像

作品紹介『飛ぶ子ども』(文:Sassy/一吾)



 ドロップス書房からのアンソロジー第2弾は、大人のための幻想文学『飛ぶ子ども』。2024年5月の文学フリマ東京38で初頒布しました。

 このときのテーマ担当は私、Sassyでした。
 小さいときに図書館で読んだ萩尾望都先生の全集の中に『ハワードさんの新聞広告』という短いミュージカルタッチのお話があったんです。その中の「ただの子どもはみんな飛ぶんだ」という台詞が印象的だったので、ずっと覚えていました。
 今回のアンソロジーのテーマや拙作の療養所の名前には、『ハワードさんの新聞広告』からインスピレーションをもらいました。

『トラピカの繭』
 アンソロジー『飛ぶ子ども』一作目は鹿森千世さんによる『トラピカの繭』です。
 コティングリー妖精事件に着想を得たフィクションで、大戦で片腕を失った男とおてんば妖精が登場します。鹿森さんは史実と歴史的資料にきちんと当たって、そこからオリジナルの世界を創るのが得意な作家さんなので、今作はまさに本領発揮と言えます。
 この作品は鹿森さんの最新の作品集『午睡するせかい。』にも収録されています。


『君は心 僕は翼』
 二作目は春野わかさんによる、正統派ジュヴナイル。中学二年生の孤独な少年に生えた翼、孤高の美少女との交流、飛翔と墜落。青春小説にファンタジーとSF要素が入った、それでいてわかさんらしい、どこか背徳めいた仄暗さを併せ持つ作品です。
 『飛ぶ子ども』は当初、大人のための児童文学を目指し、最終的には幻想文学に落ち着いたのですが、今作にはまさに大人になる直前の苦悩と傷の眩しさが描かれています。


『恋の淵』
 三作目の著者は菖蒲ウララさん。冒頭から、踏み入れては行けない場所に入ってしまった感覚が寄せてくる、今回のアンソロジーの中で、いちばん大人でダークな作品です。
 湿ったような日本家屋の感覚、というのを表現できる作家さんってなかなかいないと思うんです。由緒ある家に生まれた血筋ゆえの葛藤と悲劇を「羽」というモチーフを使って描き出しています。


『412号室、アリエリ』
 四作目が私Sassyの作品。アリとエリという双子の姉弟の物語です。外部から閉ざされた療養所が舞台で、感覚を共有している双子、伸び続ける爪をもった男、療養所の壁を作り続ける石男などが出てきます。子どもが成長することへの憧憬と恐怖を双子の姿に込めました。


🐦‍⬛表紙イラストはBlancさんにお願いしました。

 この表紙イラストは、まず浮かび上がる天使さんに目を奪われるんですけど、天使さんの他にも可愛らしい描き込み、私たちがお願いして描いていただいた不思議なアイテムなど、見どころたくさんあるんです。どれほどの熱意と努力を持ってこの繊細な絵を描き上げてくださったのかと思います。

 Blancさんによる表紙絵創作秘話はこちらから読んでいただけます!

 四編の短編からなる作品集の紹介動画は、メンバーの菖蒲ウララさんが作ってくれました。
 岡田朔さんが楽曲を担当してくださった贅沢なムービーはこちら📽️


🐦‍⬛この作品集はboothで取り扱っています。興味を持ってくださった方はぜひ!
 鹿森千世さんの『午睡するせかい』も再販予定✨こちらをチェックしてください。
https://drops-shobo.booth.pm

 ところで「こども」という表記って、「こども」「子ども」「子供」が混在しているんですよね。官公庁の文章などで「こども」の表記をチェックすると、その組織がどんな「こども」像を持っているか、ぼんやり浮かび上がってくる気がします。この作品集では、『子どもの権利条約』と同じく「子ども」を採用しています。



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集