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LDLコレステロール「正常値」の落とし穴 〜目標は139じゃない〜

LDLコレステロール 128 mg/dL。

健診の結果用紙に「基準範囲内」と書いてあれば、たいていの人はそこで安心します。医者でもそうです。僕自身、正直なところ長い間そうでした。

でも2025年、世界中のガイドラインが相次いで更新されて、示された目標値を見たとき、少しぞっとしました。


健診の基準値と、ガイドラインの目標値

健診で使われるLDL-Cの基準範囲は 60〜139 mg/dL です。特定健診の受診勧奨値が140。139なら「問題なし」で返されます。

ところが、心筋梗塞や脳梗塞を起こした人に対して、2025年の各ガイドラインが求めている目標値はこうです。

  • 米国ACC/AHA(2025年2月):70未満。超高リスクで55未満

  • 欧州ESC/EAS(2025年8月):超高リスクで55未満。最高リスクで40未満

  • 日本動脈硬化学会(2025年12月):急性冠症候群後は55未満。脳梗塞・末梢動脈疾患は70未満

健診の上限が139。ガイドラインの目標が55。差は84。同じ検査項目の話とは思えないくらい、数字が離れています。

「正常値」は安全の保証ではない

そもそも健診の基準範囲は、健康とされる集団の統計分布から作られたものです。「多くの人がこのあたりに収まる」という意味しかない。「この範囲なら血管は大丈夫」とは誰も言っていません。

ガイドラインの管理目標は、リスクの高さによって段階的に設定されています。日本のJAS 2022では、一次予防でもリスク区分によって目標が変わります。低リスクで160未満、中リスクで140未満、高リスクで120未満。糖尿病があって末梢動脈疾患や細小血管症を合併していれば100未満。

つまり、糖尿病がある人にとって、LDL-C 128はとっくに「正常」ではない。高血圧があってもそう。喫煙していてもそう。リスク因子がひとつ加わるだけで、「安全圏」の境界線は大きく下がります。

それなのに、健診結果には「基準範囲内」としか書かれない。ここにギャップがあります。

「体質ですね」で済まされる人たち

LDL-Cがずっと高いのに、「体質でしょう」と言われて放置されている人がいます。

家族性高コレステロール血症(FH)。LDL受容体の遺伝子変異で、生まれつきLDL-Cが高い。頻度は300人に1人。日本では推定約40万人。珍しい病気ではありません。

ところが、日本でのFHの診断率は極めて低い。報告によれば1〜3%未満で、推定患者の95%以上が診断されていないとも言われています。

FHの人は、若いころからずっとLDL-Cが高い状態が続いています。健診で毎回LDLが160や180だとしても、「少し高いですね、食事に気をつけて」で終わってしまうことが少なくない。LDL-C 180の状態が20代から30年続いたらどうなるか。その累積ダメージは相当なものです。

2022年のFH診療ガイドラインに引用されたFAME研究では、治療を受けているFH患者ですら、一次予防でのLDL-C 100未満達成率は12.3%、二次予防での70未満達成率はさらに低かった。治療中でもこの数字です。まして未診断なら、コントロールなど望めません。

LDL-Cが若い頃からずっと高い人は、一度FHを疑ってもらう価値があります。家族に心筋梗塞や脳梗塞の人がいればなおさらです。

LDL以外に見るべきもの

2025年、もうひとつ注目されたのがLp(a)(リポプロテインエー)です。

LDL-Cとは独立して動脈硬化を進めるリスク因子で、遺伝的にほぼ決まっているため、食事や運動では下がりません。通常の健診では測定されない項目です。

2025年のESC/EASガイドラインは、成人であれば「生涯に1回はLp(a)を測定すべき」と明記しました。50 mg/dLを超えていれば心血管リスクの増加因子として扱う、という位置づけです。

日本でもLp(a)は保険収載されており、3ヶ月に1回まで測定可能です。ただ、健診に含まれていないので、頼まなければ測ってもらえません。LDL-Cがそこまで高くないのに若くして心筋梗塞を起こした、という症例の裏に高Lp(a)が隠れていることがあります。

現時点ではLp(a)を直接下げる薬はまだ実用化されていませんが、Lp(a)が高いと分かれば、他のリスク因子をより厳格に管理する判断材料になります。知っておいて損はない数値です。

なぜそこまで下げるのか

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