副首都法は成立した 付帯決議という空手形
7月24日夜、参院本会議で副首都法が可決、成立した。投票総数244のうち賛成123、反対121。過半数ちょうどでの可決である。自民、維新、チームみらい、そして無所属議員らが賛成に回り、立憲、国民民主などは反対した。差は2票だった。
25日の会期末を一日残しての着地である。維新肝いりの法案が、会期再延長を招くことなく通った。表向きは維新の勝利に見える。
ただ、世論はこの成立を求めていなかった。朝日新聞が7月18、19日に実施した調査では、副首都法を今国会で成立させる必要が「ある」は26%、「ない」が60%。維新のおひざ元の大阪府に限っても、「ある」4割に対し「ない」が5割を占めた。地元ですら過半が急ぐ必要を感じない法案が、会期末の深夜に過半数ちょうどで通った。
何と引き換えに通ったか
参院で与党は過半数を持たない。採決前の情勢では、与党会派とチームみらいを足しても122で、あと2人の上積みが要ると見られていた。実際の投票では欠席などで総数が244に減り、過半数のラインは123に下がった。無所属議員を固めて、そのラインに乗せた。ただし数を埋めただけでは採決に進めない。委員会の委員長は立憲の議員が務めており、職権での強行採決は野党の反発を招く。
鍵は付帯決議だった。参院野党6党は、大阪市を廃止して特別区を設ける住民投票と、統一地方選の同日実施を禁止するよう求めていた。同日になれば公職選挙法で賛否を訴える政治活動に制約がかかる。これを答弁と付帯決議で確約せよ、確約しなければ採決に応じない。野党はそう構えていた。
与党は段階的に応じた。最終的に「住民投票と自治体選挙が重複しないよう最大限調整する」という文言で折り合った。24日午前にいったん採決を断念し、休憩を挟んで夕方に再開、深夜に成立。丸一日を要した綱渡りだった。
折れたのは誰か
ここに、報道の間で主語の揺れがある。
日経は「維新が付帯決議の文言で譲歩した」と書いた。同日実施の禁止に近い文言に維新は慎重だったが、最終的に受け入れた、と。一方で時事は、野党の要求を受け入れると決めたのは自民だとする。自民の磯崎参院国対委員長が立憲の斎藤国対委員長と断続的に協議し、自民が最終的に受け入れを決め、立憲などが採決を容認した。
おそらく実態は二段階だ。渋ったのは維新、決断を主導したのは自民。副首都法は自民と維新の共同提出だから、これは自民の法案でもある。会期再延長という自らのコストを避けるために、自民が窓口として先に折れ、維新がそれを追認した。
そもそもなぜ共同提出という形をとったのか。委員会審議で立憲の杉尾秀哉は、この法案は本来なら内閣提出の閣法で出されるはずだが、内閣法制局の審査を通らないから議員立法で出したとしか考えられない、と指摘した。閣法なら法制局が理屈の筋を通す。議員立法ならその関門を迂回できる。杉尾は法案を「支離滅裂」と呼び、副首都を指定したらなぜ一極集中が是正されるのか、条文を読んでも筋道が分からないとした。真偽はともかく、形式の選択そのものに一つの読みどころがある。
拘束力はない
付帯決議は国会の意思表示であって、法律ではない。守らなくても違法にならない。野党が引き出したのは条文ではなく、この付帯決議だった。「同日実施を禁ずる」と法律の本則に書かせることはできず、「重複しないよう調整する」という努力目標を、決議の形で残すにとどまった。
野党が同日実施の禁止にこだわったのには理由がある。大阪都構想の住民投票は、2015年と2020年の二度、いずれも僅差で否決された。維新にとって三度目は負けられない。統一地方選と同じ日にぶつければ、維新支持層の投票率がそのまま住民投票に流れ込み、賛成に傾きやすくなる。野党はこの連動を警戒し、条文での禁止を求めた。取れたのは決議どまりだった。
ただし、付帯決議で採決に応じたことを、野党が成立を受け入れた合図と読むのは早い。24日午前、与党は付帯決議で折り合う前に採決を目指し、立憲などの反発でいったん断念している。折り合いは午前には成立していなかった。そして本会議の最終盤まで、賛否は123対121の2票差だった。無所属を一人剥がせば逆転する射程である。野党は付帯決議を採決卓に着く最低条件として引き出しつつ、数の攻防では否決の目を残していた。付帯決議は、勝負を捨てた証ではなく、卓に着くための入場券だった可能性がある。
そう読めば、この日の野党は取引で負けたのではなく、票読みで競り負けた。どちらであったかは、当日の国対協議の中身が表に出るまで確定しない。確かなのは、付帯決議という努力目標が残り、法案が2票差で通ったという二つの事実だけだ。
その付帯決議の軽さが、成立当日のうちに可視化された。
同じ日の反転
法が成立した24日の深夜、維新代表の吉村洋文は、大阪都構想の住民投票を2027年春の統一地方選と同日に実施することを目指すべきだと述べた。数時間前に維新が飲んだ付帯決議は、両者を重複させないよう調整するという内容である。確約した、その日のうちに、確約の中身を否定した。
反発したのは国民民主の玉木雄一郎だった。「国会軽視も甚だしい」。国民民主は与党との修正協議が整わないとして反対に回った側だ。副首都法をめぐって玉木は以前から「法案の精度が低い。国会審議で穴が塞がるどころか穴が開いてきている」と述べていた。自分たちが取れなかった同日禁止を付帯決議どまりにされ、その付帯決議すら成立当日に空文化される。反対した側から見れば、二重に負けている。
誰がコストを払ったのか
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