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兵庫県338億円違法借換第8稿 文書は、ある〜令和13年3月31日まで〜

検証部会が設置される。探すのは、490億円の借換を決めた経緯だ。前知事の指示があったとされる以上、多くの人が想像するのは指示の文書だろう。レクのメモ、復命書、決裁の付箋。

その前に、確認できることがある。文書が存在するかどうか自体、県が公表している目録で誰でも調べられる。調べた。結果は、予想と二段階ずれていた。


二つの検索窓

兵庫県の公文書を外から調べる入口は、二つある。

一つは公文書目録検索システム。2003年に開設された古参のシステムで、平成14年10月以降に県が作成・収受した公文書の標題を検索できる。情報公開請求の参考用として案内されている、いわば県民向けの正面玄関だ。

もう一つは公文書ファイル管理簿。令和元年10月制定の公文書管理条例が、令和2年4月から県に義務づけたもので、公文書ファイルの名称・保存期間・満了日・満了時の措置をインターネットで公表する仕組みである。

同じ県の文書を映しているはずの二つの窓は、まるで違う景色を見せた。

途絶えた目録

正面玄関の方から入る。目録検索システムで「財政フレーム」を引くと、全庁・全期間で0件。「借換」を2018年度から2021年度で引くと0件。「県債」も同期間0件。「起債」は16件出るが、市町振興課、治山課、上下水道課。県自身の借金を扱う財政課の文書は、一件もない。

システムが壊れているのではない。同じ期間の「予算」は296件並ぶ。他の課の文書は普通に載っている。無いのは、財政課の県債と資金の綴りだけだ。

さかのぼると、途絶の時期が見える。財政課の「財務>資金」分類に残っているのは、グループファイナンス実施伺いが平成14年度から17年度、用地先行取得事業債の充当伺いが平成15年度から16年度、県債管理基金の運用伺いが平成18年度から19年度。そこで、切れている。

残っている中に、見覚えのある標題が二つあった。平成18年度の「県債管理基金現金と県内部基金(集約対象基金)保有債券等との保管替について(伺い)」と「県債管理基金による兵庫県住宅供給公社債の購入について(伺い)」。第二稿と第三稿で追った、2006年の基金集約と、基金がグループ内の債券の買い手になる運用の、実行文書そのものだ。20年前の伺いは、標題まで特定できる形で今も目録に生きている。2020年の借換の文書は、この窓からは見えない。

古い方が残り、新しい方が無い。

ファイルは、ある

もう一つの窓に回る。公文書ファイル管理簿で「行財政運営方針」を引くと、65件出た。財政課が管理する方針のファイルが、平成31年から令和6年まで、方針・実施計画・実施状況報告書の三点セットで毎年分、そろって現存している。

方針本体のファイルの詳細画面は、こうなっている。

文書番号B000000009060。ファイル名、行財政運営方針。作成・取得年度、平成31年。作成・取得者、企画県民部企画財政局財政課長。媒体は紙、保存場所は事務室。保存期間10年、起算日は令和2年4月1日。

作成年度が平成31年になっているのは、取組期間が2019年度からの10年間だからで、庁内の文書管理上、あの方針は平成31年の文書として扱われている。知事が7月13日に紹介した「平成31年の行革プラン」という呼び方は、この年次と一致する。

もう一つのファイルがある。490億円の借換債が発行された年度の、県債の協議書類の綴りだ。

文書番号B000000009829。ファイル名、起債協議等。作成・取得年度、令和2年。作成・取得者、企画県民部企画財政局財政課資金財産室室長。媒体は紙・電子、保存場所は事務室と文書管理システム。保存期間10年、起算日は令和3年4月1日。

作成者の職名を、シリーズの会議録と並べてみる。2018年8月、方針案の審議で「積立不足率は低減していく」という前提の質問に答え、但馬空港ターミナル社債を基金が買う運用を語ったのは、資金財産室長だった。2019年3月、「未達成計画を初めて見た」という質疑に変更版の差分を説明したのは、資金財産室長兼財政課副課長だった。そして借換の協議文書を綴じたファイルの作成者が、資金財産室の室長である。答弁に立った職と、実行の文書を作った職は、同じ室だ。

つまり、こういうことになる。目録検索システムという県民向けの検索窓には無い。管理簿には有る。検索できる場所と、実際に有る場所が、分かれている。 廃棄されたのではなかった。正面玄関から見えない棚に、今も置いてある。

存在しない名前

一つだけ、どちらの窓にも無い名前がある。

19.9%という数字は、490億円を返さない前提を置いた試算からしか出てこない。その試算はどの綴りにあるのか。「財政フレーム」という名のファイルは、目録にも管理簿にも存在しない。方針ファイルの中に試算のワークシートが綴じられているのか、起債や予算編成の綴りに紛れているのか、外からは分からない。開示請求で綴りを開けるまで、計算の紙の居場所は特定できない。

無いのは紙ではなく、名前だ。

満了時の措置

管理簿の詳細画面には、最後にもう一つ欄がある。保存期間満了時の措置。ファイルが保存期間を終えたとき、どうするかを定めた欄で、廃棄か、移管かが入る。

二つのファイルの欄には、どちらもこう書いてある。廃棄。

方針のファイル、B000000009060の期間満了日は令和12年3月31日。起債協議等、B000000009829は令和13年3月31日。歴史的な文書として保存へ回す設定は、どちらにも入っていない。490億円の経緯を検証すると県が表明した今も、方針の綴りは2030年3月末に、借換の綴りは2031年3月末に、消える予定のまま置かれている。

検証部会は「持続可能な財政運営検討会」の中の専門部会として設けられる。検証には時間がかかる。文書には時限がある。二つの時計は、逆向きに回っている。

誰でも請求できる

検証部会が探すべきものについて、このシリーズの見立てを書いておく。

指示のメモは、期待薄だと思う。この種の意思決定は口頭で降り、残ったとしても私的メモの扱いになりやすい。掘って空振りに終わる公算がある。探す価値が高いのは、指示の紙ではなく、指示の結果を計算した紙だ。19.9%を見通し表に印字するには、全額借換の前提を置いた試算が必ず先行している。その試算がどこかの綴りに一枚でも残っていれば、指示の文書が無くても、2018年の時点で県庁の中に前提が文書化されていたことの立証になる。

入口の文書番号は、もう公開されている。B000000009060と、B000000009829。管理簿に載っている以上、情報公開請求の対象であり、請求は県民でなくてもできる。検証部会を待つ必要すらない。

このシリーズは一貫して、公表された資料だけを読んできた。段差は公表された方針に印字されていた。490億円は公表された決算に実名で印字されていた。そして文書の在りかと消える日付も、公表された管理簿に印字されていた。読まれていなかっただけだ。

起債協議等。令和2年。作成者、財政課資金財産室室長。保存期間満了日、令和13年3月31日。措置、廃棄。


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