ハプニングバー判決が性風俗のグレーゾーンを壊した
ハプニングバーの経営者が正式裁判で争って、負けた。
風俗摘発のよくある話に見えるかもしれない。でもこの判決、相当重い。
過去の摘発は全て略式だった
2022年5月、渋谷の「眠れる森の美女」が摘発された。日本最大級と言われたハプニングバーで、経営者・従業員ら10人が逮捕されている。結果は略式起訴、罰金15万円。
2023年10月、新宿の「バーエデン九二五九」。経営者ら6人が逮捕された。経営者は容疑を認め、こちらも正式裁判にはなっていない。
ハプニングバーの摘発自体は珍しくないし、ストリップやピンサロも時折捕まる。ただ裁判になっているのを見たことがない。略式起訴で罰金を払って終わり。経営者側も争わない。それが「相場」だった。
2024年10月、錦糸町の会員制ハプニングバー「ノクターン」が摘発される。経営者のI被告が公然わいせつ幇助で逮捕・起訴。ここまでは同じ流れです。
違ったのは、I被告が「悪いことをしていたとは思わない」と言ったこと。略式では終わらず、正式裁判へ。2026年1月30日、懲役3カ月・執行猶予3年の判決が出ました。
なぜ正式裁判になったのか
FRIDAYの記事でI被告本人が経緯を語っています。
検事に公然わいせつの「公然性」について疑問をぶつけたことが、反省していないと捉えられたのではないか。あるいは、毎年新しいハプニングバーができている状況に対して「これから取り締まりを厳格にする」という見せしめにされたのか。略式起訴で終わるなら仕方ないと思っていた。だけど起訴されたから、納得できないところは争おうと決めた、と。
弁護側の主張は大きく三つありました。
一つ目。I被告は事件当日、ちょうど入店する捜査員の受付対応をしていて、逮捕された男女の行為を見ていない。だから「幇助」は成立しない。
二つ目。当日、客を装った警察の協力者が店内に入り、裸になるなどして犯行を誘発した疑いがある。違法なおとり捜査ではないか。
三つ目。会員制の閉鎖空間で、全員が了承のうえ参加している。被害者がいない。公然性はない。
裁判所は三つとも退けました。おとり捜査については「AがBに声をかけたことが発端であり、おとり捜査ではない」と。捜査員が客を装って入店したのは「証拠を隠される可能性があるため」で、証拠能力に問題はないと判断しています。
そして核心の公然性。会員制であっても、ネットで会員を募集し、身分証を出せば基本的に誰でも入会できる以上、不特定多数が認識できる状態にある。公然性は認められる。
弁護士の間でも割れた議論
この判決を受けて、YouTuber弁護士の藤吉修崇氏がXで疑問を投げました。公然わいせつは「健全な性的道徳」を守るための罪だけれど、元々その道徳が存在しない場所に適用して、何を保護しているのか。被害者がいない、と。
弁護士の高木小太郎氏はこれに対し、通説では保護法益は「性的秩序・性的風俗」という社会的法益であり、見たくない人の感情という個人的法益ではないと指摘しています。被害者がいなくても成立する。それが通説の立場。
どちらにも理はある。ただ、この裁判が残した問題の本質はそこじゃないと思っています。
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