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被選挙権18歳法案、4回目でわかること

7月2日、立憲民主党が被選挙権年齢を18歳に引き下げる法案を参議院に提出した。党として参院に出すのは初めてらしい。

被選挙権の引き下げ自体は、筋の通った話だ。2015年に選挙権が18歳になったのに、立候補できる年齢は25歳(一部30歳)のまま据え置かれている。2023年には19〜25歳の6人が、この年齢制限を憲法違反だとして東京地裁に提訴もしている。当事者が動くほどには実在する不整合で、そこは割り引かずに認めておく。素材は正当。問題は、その正当な素材の扱われ方にある。

法案の線引きも見ておく価値がある。衆院議員と地方議員は18歳、参院議員と首長は23歳。「一定の社会経験が必要」という説明が付くが、2022年版では市町村長を18歳から23歳へ後から修正した経緯があり、当時は総務省に聞いても5歳差の根拠が明快に出てこなかった。理念で引いた線ではなく、ヒアリングの都度ずらしてきた調整の産物に近い。


4回目だった

立憲はこの法案を2018年、2022年、2025年と衆議院に出してきた。いずれも廃案。今回が4回目で、提出先が初めて参院に変わった。青年局長の山内佳菜子議員は会見で「提出し続けなければいけないという思い」と語っている。成立ではなく、出し続けること自体が目的になっていると、当人が明かしているに等しい。

施行日の設定が本音を漏らしている。令和9年3月1日、つまり2027年4月の統一地方選に間に合わせる日付だ。本命は衆院ではなく地方議会。低投票率で組織票が効き、参入障壁の低い地方議員選を最初の舞台に据え、若手をそこから送り込む苗床にする射程が透けて見える。

野党の議員立法が単独で通る見込みは、そもそも薄い。参院で仮に可決しても、衆院で自民が単独3分の2を握っている以上そこで止まる。通す気があるなら与党を巻き込む算段を練るはずだが、その形跡はない。同じ叩き台を、宛先だけ替えて4回目に投げている。

なぜ参院なのか

普通なら「衆院に出せるのに、あえて参院を選んだ戦略だ」と読みたくなる。僕も最初そう考えた。

だが、今の立憲には、衆院に党名がない。

2026年1月中旬、衆院選の直前に、立憲は公明党と合流して「中道改革連合」を結成した。そして2月8日投開票の選挙で、公示前167議席から49へ沈んだ。自民が316で単独3分の2という戦後初の圧勝の裏で、中道は3分の1以下に落ちている。衆院に「立憲民主党」という会派は、もう単独では存在しない。

参院では、立憲と公明は合流していない。それぞれ独立した会派のまま残っている。被選挙権法案の参院提出は、あえて参院を選んだのではなく、党名が生き残っている院がそこしかなかった、というだけの話になる。

発議者の顔ぶれも替わった。過去の衆院版は落合貴之が筆頭。今回の参院版は小西洋之が筆頭で、山内ら参院の青年局勢が握っている。同じ玉を、別動隊が自分の場所で撃ち直した。主語の付け替えが、党の重心が衆院から参院へ移ったことを映している。

合流が撃たせなくした

もう一段えぐると、合流はこの玉を撃ちにくくした側面がある。中道改革連合は立憲と公明の寄り合い所帯で、単独提出には会派内の合意が要る。公明は被選挙権引き下げに前のめりな党ではない。若者政策の力点も違う。衆院で立憲単独の看板を振るには、公明という調整のブレーキが挟まる。

だから参院に回った。衆院では公明と足並みを揃えねばならず単独色を出せない、党名も単独提出権も残る参院でしか、立憲の玉を立憲の名で撃てない。

縮んだのは提出先だけではない。過去の提出時、被選挙権法案は「立候補休暇法案」——仕事を辞めずに立候補できる制度——とセットで打ち出されていた。パッケージが細れば、それも体力低下の目盛りの一つになる。

履歴と並べると絵が反転する。2018年から3回、立憲は廃案覚悟でも衆院に単独で出し続けた。看板政策として機能していた時代だ。その看板を、合流で自分の判断だけでは掲げられなくなった。参院への「初提出」は前進の記録ではなく、本丸で撃てなくなった玉の退避先になる。宛先がどこかという一点が、党の単独性がどれだけ削れたかの目盛りになっている。

正しさは票にならない

皮肉はむしろその先にある。

若者に響かせたいなら、要るのは「若者法案を出す党」ではなく「若者が実際に議席を取れる党」だ。ところが立憲の18〜29歳支持率は、産経・FNN合同世論調査(2025年12月)でゼロ%を記録した。若年層のサンプルは小さく、この0%は回答者の中に支持者がいなかったという意味で、真の支持率がゼロというわけではない。それでも全体4.5%、30代1.4%という数字の傾斜まで含めれば、若い層ほど薄いという構図は動かない。被選挙権を下げてくれるはずの党そのものが、選挙で沈んでいく党として若者の目に映る。

数字が対比を裏づける。2026衆院選で国民民主は28、初参戦のチームみらいは11議席を取った。若年層の受け皿が伸びる隣で、中道改革連合は49へ沈む。若者が反応したのは政策の精度ではなく、議席が実際に伸びているという手応えのほうだった。立憲の若者法案は、善い政策を、負け続けている党が、通せないまま出し続けるという、若者が最も冷める組み合わせを全部そろえている。

「政治は成功体験だ」という趣旨の発言も過去の会見で出ていた。その法案自体が4連敗の失敗体験になっているのは、笑えない。

誰も数えていない

現実には有権者のほとんどが、この法案が4回出されていることを知らない。追っているのは政治好きと当事者団体、あとは僕のように構造で読む物好きだけだ。

4回目という事実は、発している側の内輪で閉じている。世間には無風、知る少数には「また廃案か」の減点。どちらに転んでも支持は積まれない。届かないと知りながら書き続ける行為に、僕自身、覚えがないでもない。だからこの空回りを、外から嗤う気にはなれない。

会見では各党に協力も呼びかけたという。だが与党からも国民民主からも、この法案に乗る動きは今のところ報じられていない。呼びかけは、返事のない部屋に向けられている。

正しい政策を、誰も見ていない場所で、通らないまま、4回続けた。額面の「若者に向き合う党」の裏で露出したのは、自分たちが衆院で名前を失ったことのほうだった。

2018年、2022年、2025年、そして今年。同じ法案が四度出された。四度目だけ、宛先が衆院から参院に替わっていた。


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