医学部放校の実態 6年までストレートでも「高卒」になる仕組み
医学部の「卒業」という出口で梯子を外される話
6年間、一度も留年せずストレートで進級した。全国模試でも合格圏内にいた。それでも卒業試験で落とされ、そのまま放校になった女性の話がSNSで広まった。
残されたのは数千万円の学費を払い終えた後の「高卒」と、面会を拒絶する大学の通告。
一人の不運な話ではない。
当事者が、さとみな先生にDMを送った。
6年生で医学部を放校になった女性からメッセージをいただきました(SNS投稿承諾済み)。
— さとみな@Q-Assist (@muroyamuron) April 11, 2026
6年生までストレート進級、模試で合格圏内でも放校になる残酷さ。御本人は私立医学部の厳しさをもっと色々な方に知ってほしいとおっしゃっていました。 pic.twitter.com/yUHLOIbMF3
経緯はこうだ。6年生までストレートで進級し、1度留年した後、2回目の卒業試験で不合格となり、12月に除籍処分の通告を受け、3月に自主退学した。模試では合格圏内だった。
通告を受けた際、学長や除籍を決めた教員には1人を除いて面会すら許可されなかった。唯一面会した教員の言葉はこうだった。
「卒業試験の結果がすべてで、模試や背景は一切加味しない。CBTとの相関で、君は国家試験に一生受からないと判断された。何年やらせても受からなさそうだから、"早めに"別の進路につけるよう判断してあげた」
CBTは4年次に実施される基礎医学の知識確認試験で、臨床実習の入口として使われるものだ。それと国試合格可能性の相関を根拠に「一生受からない」と判定するのは、その後5年分の臨床教育の効果を自ら否定することになる。6年間教育しておきながら、評価の根拠は入学直後の試験だというのは、教育機関として相当奇妙な論理だ。
本人の文章にあった一節が、ずっと引っかかっている。
「何よりも医師(医学生)であることが自分のアイデンティティでした。五感を失ったのに等しい感覚です」
「カウンセリングを受けていますが、レイプを受けた子と同じ心理状態であると言われました」
「大学受験で浪人を重ね、大学生活の勉強も苦しかったですが、その結果が『高卒、アラサー、職歴なし』で正社員にもなれない状況です」
読んでいて、苦しかった。
構造の話をする
この問題を「不運な個人の話」で終わらせないために、数字を見てほしい。
厚労省が毎年公表する医師国家試験の結果には、「出願者数」と「受験者数」が並んでいる。通常の大学ならその差は数名程度で、体調不良による欠席がほとんどだ。全国平均の乖離が数名にとどまる中、特定の私立大学では二桁台の差が複数年にわたって続いている。
10月に願書を出させ、2月直前になって受験票を渡さない。「新卒合格率100%」という看板を守るために、リスクのある学生を分母から消す。 この「消えた受験生」が、卒試というブラックボックスで弾き飛ばされた学生たちの実数だ。
なぜそうなるのか。私立医学部にとって国試合格率は、志願者数と偏差値を左右するマーケティング指標だからだ。合格率が下がれば翌年の志願者が減り、極端に低くなれば文科省の指導と私学助成金カットが控えている。合格可能性の低い学生を一人受験させて不合格者を出すより、卒業させずに分母から消したほうが残りの学生と大学の評価を守れる。大学側の計算はシンプルで、その計算が教育の論理より優先されている。
5年以上かけて進級させておきながら最後の出口で切り捨てるのは、それまでの自校教育が失敗だったと自ら認めているに等しい。卒試を不合格にした後に再試・補講で救済する大学と、即放校にする大学では性質が根本的に違う。「選別」か「教育」かは、その後の対応でわかる。
密室の試験という問題
国試は全国一律の客観的な基準で行われる。卒試は違う。各大学、各講座の教授の裁量に委ねられた完全なローカルルールで、外部から監査する仕組みは制度上存在しない。
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