AI危険神話の有効期限〜Mythos騒動が示した6ヶ月の限界
Mythos騒動が示した6ヶ月の限界と、国家判断が間に合わない理由
5月11日に「AIハッカーvs AI防御」と題してClaude Mythosの構造を書いた。あれから数日、状況がさらに動いた。Anthropicの優位はすでに崩れ始めている。
「危険すぎて公開できない」というナラティブが、これほど短期間で陳腐化した例は過去にない。
1ヶ月で起きたこと
時系列で並べると壮絶だ。
3月下旬、Anthropic内部資料がCMS設定ミスで流出。Capybaraこと未公開モデルの存在が事前に露見していた。
4月7日、Anthropic公式発表。Claude Mythos Preview。サイバー攻撃能力が高すぎるため一般公開せず、Project Glasswingの12社+40組織に限定提供。
4月14日、OpenAIが「GPT-5.4-Cyber」を発表。ただしこちらはAnthropicと逆方向で、Trusted Access for Cyberの拡大による「verified usersへの広範配布」を打ち出した。サム・アルトマンはAnthropicの限定提供路線を「fear-based marketing(恐怖をテコにしたマーケティング)」と公の場で批判していた。
ところが4月30日、OpenAIは態度を翻す。新モデル「GPT-5.5-Cyber」を発表し、こちらは「重要なサイバー防衛者に限定」として配布対象を絞った。Anthropicを批判していた側が、2週間で同じ路線に寄せてきた格好だ。
4月18日、22歳の開発者Kye Gomez氏(swarms社創業者)が「OpenMythos」をGitHubに公開。Mythosのアーキテクチャを公開論文だけから推定し、PyTorchで実装したオープンソースプロジェクト。重みは含まれず、設計図だけだ。それでも数週間でGitHubスターが1万を超えた。
5月初旬、ニューヨークのAnthropicイベントでダリオ・アモデイCEOが語ったとされる。「中国が追いつくまで半年から1年だ」と。
5月14日、macOS 26.4.1のMemory Integrity Enforcementをバイパスする「データオンリーカーネル権限昇格チェーン」が公開された。Apple M5ハードウェア上で、非特権ユーザーからrootへ。発見したのはMythos単独ではない。Calif社(ベトナム/パロアルト拠点)の研究者チームが、Mythosの支援を受けて約5日で構築した。研究者ら自身が「human + AI」の協業であることを強調している。Cupertinoのアップル本社に直接持ち込んで報告したという。
そして同日、Yahooニュースに「22歳の天才エンジニアがほぼ完コピ」の見出しが躍った。
「半年から1年」の見積もりすら甘い
アモデイCEOは中国の追随を「半年から1年」と見ていた。本人としては警戒の意図で発した発言だろう。ただしこの数字、楽観的に過ぎる可能性が高い。
OpenAIが限定アクセス路線に寄せ直すのに2週間。Mythosの設計図再現に22歳の個人で3週間。
セキュリティ企業の動きも見逃せない。Aisle社のStanislav Fort氏は、小型で公開可能なモデルを使ってMythosが見つけたのと類似の脆弱性を再現することに成功した。Schneierがブログで取り上げた事例だ。さらにVidoc Security(Kloc氏)も、独自のorchestration手法で同等の発見プロセスを再現している。
つまり「Mythosでなければできないこと」が、最初からほとんど存在しなかった可能性が浮上している。
歴史的トレンドが残酷すぎる
フロンティアモデルが独占される期間は、指数的に短縮している。
GPT-3(2020) → 同等品が出るまで約2年。GPT-4(2023) → Claude 3 Opusまで約1年。GPT-4o(2024) → Claude 3.5 Sonnetまで数ヶ月。そしてMythos(2026年4月) → GPT-5.5-Cyberが似た路線に追随するまで2週間。
CloudNativeの分析は競合の追随に6〜18ヶ月。シュナイアーは「sea changeは既に起きたか、6ヶ月後に起きる」と表現している。Epoch AIの分析では、オープンウェイトモデルと最先端モデルのギャップは平均3ヶ月。
アモデイCEOの楽観論を採用しても優位期間は1年。現実的には6ヶ月、もう終わっている可能性すらある。
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