【白衣の記憶】眠れない彼女が、眠れるようになった理由
今日は、少し嬉しいことがありました。
✳︎
約三ヶ月前に、
「眠れないので睡眠薬が欲しい」と来院された、10代の患者さんが再診に来ました。
初診の時には、これまでの話をお聞きして、生活習慣についていくつか提案をしました。
薬は処方しませんでした。
きっと今回も、眠れないと言って来院されたのだろう、と思いました。
けれど彼女は、こうおっしゃいました。
「先生、おかげさまで眠れるようになりました。ありがとうございます」
その一言を、わざわざ伝えに来てくれたのです。
✳︎
彼女は、これまでいくつかのクリニックを受診して、睡眠薬を処方されていました。
✳︎
10代は、本来、体力に満ちています。
学校で一日を過ごして、勉強や部活、あるいはアルバイトに打ち込んで、帰れば自然と眠くなるといった感じでしょうか。
私は、薬の前に「生活」を見直す必要があるのではないかと思ったのです。
✳︎
お話を伺って、気になる点がありました。
食事のことでした。
朝はゼリー飲料だけ。
昼はお弁当。
夕方には甘い飲み物でお腹を満たし、夜はあまり食べられない。
その代わり、寝る前にお菓子やアイスを食べてしまうとのことでした。
✳︎
私が伝えたのは、特別なことではありません。
朝食を必ず食べること。
夕方に空腹を感じたら、おにぎりにすること。
甘い飲み物は控えること。
ゆっくりよく噛んで食べること。
夜のお菓子をやめて、朝食の時間を取るために早く寝ること。
どれもよく聞く内容ですが、とても大切なことです。
✳︎
甘いもので血糖値が急に上がった後は、その反応で急に下がることが知られていますが、それを繰り返すことで、夜の眠りを浅くします。
一方で、お米のようにゆっくり吸収される食事は、体を穏やかに保ちます。
✳︎
彼女は、私の提案をきちんと受け入れてくれました。
朝ごはんを食べられるようになるまで、時間がかかったそうです。
甘いものを断つのも、何度も誘惑に負けそうになったといいます。
✳︎
それでも続けてくれました。
私と約束したからです。
✳︎
「今ではどうしてあんなにたくさん甘いものが欲しかったのかわからない」と笑っていらっしゃいました。
大学の授業にも集中できるようになって、
体が整っていくのを実感していらっしゃるということでした。
✳︎
薬を処方すれば、外来はそれで終わります。
もちろん、大人の不眠は複雑で、薬が必要な場面も多いです。
けれど今回は違いました。
話を聞いて提案したことに対して、
それを受け入れて実行してくれたのです。
そのやり取りの中に、
言葉にしきれない、やわらかなものが生まれていました。
診察室の中で、確かに何かが通い合ったような、そんな感覚。
今日は、それが嬉しかったです。
☕️
