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明日で1年──売上10兆円なのに純利益95%が消えた日本製鉄「USスチール買収の通信簿」と、あなたのNISA鉄鋼株に潜むPBR0.6倍の罠

2兆円の賭けから365日。通信簿を開く

売上収益10兆632億円。日本の鉄鋼メーカーとしては史上最大の数字だ。

で、純利益は? 171億円。前の期の3,830億円から95.1%蒸発した。

明日、2026年6月18日で、日本製鉄によるUSスチール買収の完了からちょうど1年になる。約2兆円を投じた「日本企業による米国製造業の最大級M&A」の1年目の成績表が、これだ。売上は膨張した。でも利益はほぼ消えた。

もともと会社側の予想は700億円の純赤字だった。最終的に黒字で着地したとはいえ、「稼ぐ力」が一時的にせよ蒸発した事実は変わらない。

あなたのNISA口座に日本製鉄(5401)が入っているなら、この1年で何が起きたのか、そしてこれから何が起きうるのか、知っておいたほうがいい。

正直なところ、僕もこの決算を最初に見たとき「売上最大で利益95%減って、どういう構造なんだ」と思った。数字を追ってみたら、その構造がなかなかにえぐかった。

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なぜ「史上最大の売上」で利益が消えたのか──2,315億円特損の正体

利益消滅の最大の犯人は、AM/NSカルバートの持分譲渡損2,315億円という一発の特別損失だ。

USスチール買収を成立させるために、日本製鉄がアルセロール・ミッタルとの合弁事業の持分を手放した際に発生した損失。要するに「USスチールを手に入れるために、別の資産を安く売り渡さざるを得なかった」という話で、買収そのものに付随するコストだった。

それだけじゃない。国内の粗鋼生産が上期で4,007万トンにとどまり、コロナ禍のときよりも低い水準に沈んだ。建材需要の低迷、人手不足による工事遅延、さらに設備トラブルの連鎖──国内事業の足腰が弱っているところに、海外買収の一過性コストが乗っかった格好だ。

ここで見落とされがちなポイントがある。売上が10兆円を超えたのは、USスチールの売上が連結に加わったからだ。つまり売上が増えた理由と利益が消えた理由は、どちらも同じ「買収」から来ている。膨張と蒸発は表裏一体だった。

この構造を理解しないまま「売上最大だから大丈夫」とも「利益95%減だから危険」とも言えない。巨額M&Aの1年目とは、そういうものだ。

勝者と敗者──モンバレーの歓声と株主の沈黙

日経新聞が今日配信した「鉄の街・モンバレーを歩く」を読むと、現地の空気は明るい。

勝者は明確だ。 モンバレー周辺の労働者と地域経済。日本製鉄は当初確約した10億ドルの2.5倍、25億ドル(約4,000億円)の追加投資を決めた。87年物──つまりレーガン政権時代から動いている熱延設備を刷新し、自動車向けの高付加価値鋼へシフトする。6,381人分の雇用効果。トランプ政権は「黄金株」で拒否権を確保しつつ、関税で国内鋼材需要を底上げするシナリオを描いている。米国側は、ほぼ全員が得をした。

敗者は? 日本製鉄の株主だ。PBR(株価純資産倍率)は0.6倍。解散価値の6割でしか市場に評価されていない。純利益95%減。配当は実質横ばい。「2兆円で買った会社にさらに4,000億円を突っ込む」という経営判断を、株主は黙って見ている。

USスチール(ティッカー:X)の株価推移を見ると、日本製鉄の株主が何に賭けているのかが透けてくる。

で、ここからが本題になる。

日本製鉄は来期、純利益2,200億円を予想している。今期の171億円から13倍だ。USスチールのBig River 2(電炉の新工場)がフル稼働し、トランプ関税の恩恵で米国内の鋼材価格が上昇するというシナリオ。PBR0.6倍が0.8〜1.0倍に回帰すれば、株価は800円〜1,000円超の水準が見えてくる。

でも、本当にそうなるのか。

あなたのNISA口座に日本製鉄が入っているなら──あるいは「高配当バリュー株」として買い増しを考えているなら──この「来期13倍」の数字をどこまで信じていいのか、自分で判断するための材料がいる。7月下旬の第1四半期決算まで、あと5週間。その前に確認しておくべきことがある。あなたの証券口座を開いて、鉄鋼セクターがポートフォリオの何%を占めているか。その数字が、ここから先を読む出発点になる。


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