ただの観光地から、涙を流す場所へ。私と熊本城の、30年越しの「心の距離」
熊本城と、私の歩み
私が1番古くに熊本城を訪れたのは、中学の学校行事だったように思います。
歴史的建造物であるという理由で旅行プランに組み込まれ、決められたルートを同級生と通り、特に興味も持てないまま過ごしていました。
ただ「珍しい」とか「ウケる!」という、中学生特有のよくわからないノリで写真を撮った記憶があります。
お城の特徴を詳しく見るわけでもなく足早に最上階まで登っており、天守閣から出た後のお土産屋さんの雰囲気の方がテンションが上がっていたような、朧げな記憶が蘇ります。
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2度目は、専門学校時代です。
仲の良かった友人たちと「隣の熊本県まで遠出しよう!」ということになり立ち寄りました。
中学時代から6年ほど経過していましたが、観光のノリは大して変わっていませんでした。
熊本城に強い興味があって足を運んだというよりは、
「せっかく熊本まで来たのだから、王道の観光スポットを巡っておこう!」
そんな気軽なノリでした。
この時は、自分のカメラや携帯では写真もそんなに撮りませんでした。
19歳から20歳の成人をまたぐ世代。何気ないことでバカ笑いし、ただただ深い意味もなく楽しかった思い出が残っています。
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3度目は、妻と付き合いたての頃。今も交流が続く友人夫婦と4人で訪れました。
この時も「せっかく熊本観光をするなら」という理由でしたが、歴史的建造物に興味を持っていた妻の足取りに合わせ、ここで初めて、城内に続く石垣や井戸、敵襲に備えた様々な仕掛けをじっくりと見ることになりました。
天守閣内に掲示されている熊本城の説明書きも、丁寧に丁寧に見学しました。
付き合いたての妻の前で格好つけたかったという、邪(よこしま)な思いがあったことは否めませんが、妻に引っ張られる形で、3度目にして初めて熊本城という建造物に興味を持って鑑賞したのです。
当時は多くの観光客で賑わっており、天守閣前での写真撮影で周囲の人が写り込まないよう、タイミングを見計らうのが大変だったことを覚えています。
余談ですが、このとき丁度テレビ番組のロケが行われており、元モーニング娘。の中澤裕子さんと石川梨華さんが訪れていました。
ミーハーな私は芸能人の姿に簡単に浮かれました。珍しい出来事だったため、妻との共通の思い出として今でもよく話に出るのが、嬉しくもあり懐かしくもあります。
傷ついた象徴と、溢れた涙
ここまでの3度目が地震前の記憶です。
その後、熊本地震があり、熊本城も大きな被害を受けたことをニュースで知りました。
熊本で生活されている方、ご出身の方々をはじめ、被災された皆さんにとって、地域の象徴である熊本城が傷ついた出来事は本当に大きなショックであったと思います。
たった3回訪れたことがあるだけの、鹿児島に住む私にとっても、それは非常に悲しいニュースでした。
熊本城へ足を運んだ、4回目。
熊本地震から約2年が経過した時期でした。
熊本市内に住む友人の結婚式に出席するため、現地を訪れました。
その頃には市内の主な機能は回復しており、素晴らしい式でお祝いの席は大いに盛り上がりました。
しかし、町外れや細かな場所には、まだ被災の影響が生々しく残っていました。
友人が手配してくれたホテルに宿泊した翌朝。
朝の6時前に起床し、私は一人で歩いて熊本城へと向かいました。新幹線で来ていたため、ホテルからお城までは歩いて30分近い距離がありましたが、「今の姿を、実際にこの目で見ておきたい」という思いが勝り、気がつけば歩き出していました。
その時の熊本城の姿は、まだまだ悲惨な状況でした。
お城の前の広場までしか立ち入ることができず、天守閣の本来の姿は失われていました。周囲の神社も見学ができない状況です。
それでも、復興に向けて、崩れ落ちた石垣が入場制限された広場に綺麗に並べられ、一つひとつに番号が振られていました。
傷ついた姿にショックを受けつつも、復興に向けて少しずつ、でも確実に作業を進めている関係者の方々の姿に激しく胸が熱くなり、一人でちょっと泣いてしまったことを覚えています。
過去にはあれほど興味を持っていなかった場所に、これほど感傷的になっている自分自身に、なんだか不思議な違和感を覚えた瞬間でもありました。
10年目の再会、そして未来へ
そして、5回目。
熊本地震から10年が経過した2026年3月に、久しぶりに熊本城を訪れました。前回の訪問からは約8年ぶりとなります。
2021年4月から天守閣の再建が完了し、一般の見学や入城が再開されていました。

立ち寄った直接のきっかけは、近くで開催されていた『ONE PIECE』の復興10年展に参加するためでした。しかし今回は、イベントの4時間ほど前に駐車場に車を停め、「復興した熊本城をこの目で見たい!」という、明確な自分の意志を持っての行動でした。



震災後、初めて間近で見る熊本城には、新しく見学用の遊歩道が建設されていました。



かつて友人や妻たちと歩いた天守閣までの道は、落石の危険があるため入場が制限されています。過去に石垣に挟まれた道を、その石に触れながら歩いた記憶が頭をよぎりました。
入城が再開された天守閣は、美しく、そして力強い象徴としての姿を取り戻していました。
城内の展示もリニューアルされて見学しやすくなっており、最新の耐震構造を組み込みながら、歴史的建造物としての特徴と最新技術が共存する素晴らしい作りになっていました。
3度目に妻と訪れた時のように、今度は自分自身の意志で、一人でじっくりと展示や説明書きに見入りました。



周りを見渡すと、過去に訪れた時よりも圧倒的にインバウンド(外国人観光客)の方々の姿が増えていたことも印象的です。
天守閣は見事に復活したものの、周囲の建造物はまだまだ復興工事の真っ最中。




全体の復興工事が完了するのは「2052年頃」になる見込みだそうです。道のりは、まだまだ長いようです。
地震大国である日本において、この先大きな地震が絶対に再来しないという保障はどこにもありません。
それでも、人々が力を合わせ、力強く復興に取り組んでいるその姿に、再び胸が熱くなりました。
これから先、6度目、7度目も、妻や子どもたち、友人と。
あるいは、また一人でも。
その時々の年齢と心境で、変わりゆく熊本城の姿を見に来てみたいと思います。
今回は、そんな私の心の軌跡を綴ってみました。
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
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