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vast_dove812
最初の雨
地球はまだ幼かった。
真っ赤に熱く、空は灰色。
静かという言葉さえ、まだ生まれていない。
火山は歌うように炎を吹き上げ、
空には雲ではなく、水蒸気が果てしなく広がっていた。
ある日。
地球は、小さくため息をついた。
「少し、熱すぎるな。」
そのため息が合図だった。
空から、一粒の雨が落ちた。
その雨は、自分が世界で最初の雨だとは知らない。
「こんにちは。」
と地面に触れた瞬間、
ジュッという音を立てて消えた。
熱すぎたのだ。
でも雨は諦めなかった。
二粒。
三粒。
何百万粒。
何兆粒。
空は何万年も雨を降らせ続けた。
地球は少しずつ冷えていく。
そしてある日。
一粒の雨が消えなかった。
その隣に、また一粒。
また一粒。
やがて、小さな水たまりができた。
地球は嬉しくなって言った。
「君は誰?」
水たまりは答えた。
「まだ名前はないよ。」
その水たまりは少しずつ大きくなり、
川になり、
湖になり、
やがて海になった。
海は地球に言った。
「私は、空だったんだよ。」
地球は驚いた。
「そうだったのか。」
「うん。空で雲になり、雨になって、ここへ来た。」
地球は静かに笑った。
「帰ってきたんだね。」
海も笑った。
「うん。ただいま。」
それから何億年も過ぎた。
海には小さな命が生まれた。
その命は魚になり、
森へ上がり、
鳥になり、
獣になり、
そして、空を見上げる人間になった。
人間は海辺に立ち、
波の音を聞きながら言う。
「海って、不思議だな。」
海は優しく波を返す。
「君も、私と同じ旅の途中なんだよ。」
でも人間には、その声は聞こえない。
聞こえないけれど、
夕日を見てきれいだと思ったり、
石を見て「おにぎり」と名付けたり、
星を見てロマンを感じたりするたび、
海は少しだけ微笑む。
「ああ、この子たちはちゃんと覚えている。
自分たちが、とても長い旅の途中にいることを。
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