思考デッサン|勇者だったあの頃2枚目
旅立ち
その日の夜だった。
父が帰ってきた。
「ただいまー!」
なんだか機嫌が良かった。
手には茶色い紙袋。
「これなんだと思う?」
僕はたぶん分かっていた。
でも言わなかった。
父も分かっていたと思う。
だから少しだけ、もったいぶっていた。
袋の中から、ドラゴンクエストⅢが出てきた。
僕は「ありがとう。」と言った。
父は「うん。」とだけ言った。
嬉しそうにビールを飲みながら、
テレビを見ていた。
僕は急いで夕飯を食べた。
急いで風呂に入った。
そしてファミコンの前に座った。
黒いカセットだった。
孫悟空みたいな主人公が描いてあった。
電源を入れた。
母親に起こされる場面だった。
その頃は冬だった。
霜柱が立っていた。
僕も朝は苦手だった。
だから少し安心した。
勇者も朝は眠そうだったからだ。
城へ行った。
王様が何か話していた。
なんだか学校みたいだった。
校長先生の話を聞いている時と、あまり変わらない気がした。
ただ、王様はお小遣いをくれた。
そこは少し違った。
早く外へ行きたかった。
スライムがいた。
おおがらすもいた。
なんか敵が多い。
画面の端から端まで、スライムとおおがらすが並んでいる気がした。
僕は順番に殴られた。
そして死んだ。
ドラクエ1や2では、こんなことはなかった。
後になって知った。
ドラゴンクエストⅢは、一人から始めるドラクエではなかった。
(2026/6/7執筆)
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