【健診の読み方】「HDLは高いほど良い」は半分ウソ?HDL 90以上の人が逆に見落としやすい“血管リスク”の正体
こんにちは〜
いつも拝読いただきありがとうございます
最近、朝のコーヒーをアイスにするかホットにするか、コンビニのレジ前で30秒くらい真剣に悩んでしまいます。季節の変わり目ですね。そんな曖昧な空気に背中を押されるように、今日はずっと書きたかった『あの件』について整理してみようと思います。
「HDLが高いから安心ですね」と言われて、本当に安心していませんか?
みなさん、健康診断の結果ってちゃんと見ていますか。
最近、外来でかなり増えたなあと感じるのが、「先生、HDL高いんで大丈夫ですよね?」という相談です。
HDL。いわゆる“善玉コレステロール”ですね。
この“善玉”って言葉、かなり強いんですよね。健康診断でHDL 90とか100近い数字が出ると、なんとなく「自分の血管は優秀なんじゃないか」って気持ちになる。実際、「HDL高いですね〜、いいですね〜」と褒められた経験がある人も多いと思います。
しかも、HDLが高い人ってわりと健康意識も高いんです。サラダを食べて、ヨーグルトを食べて、少し歩いて、YouTubeで健康動画を見て、「最近オートミール始めました」みたいな。なんというか、“ちゃんとしてる人”が多い印象です
だからこそ、「HDLが高い=安心」というイメージがかなり強くなりやすいんですよね。
でも最近、この考え方は少しずつ変わってきています。
もちろん、HDLが低いより高いほうが良い。そこは大前提です。ただ、“めちゃくちゃ高いHDL”を手放しで喜んでいいのかというと、実はそんなに単純じゃありません。
実際、外来でも結構いるんです。
HDLはかなり高い。でも、中性脂肪も高い。脂肪肝もある。HbA1cもじわじわ上がってきている。
「え、思ってたのと違う……」
みたいなパターン。
しかも本人はかなり元気。仕事も普通にしているし、食欲もあるし、特に困っていない。だから余計に、「まあ大丈夫か」で数年過ぎていく。
でも健康診断って、本来、“今病気かどうか”を見るものというより、“このまま行くとどっちへ向かうか”を見るものなんですよね。
今日は、「HDLが高い=安心」と思っていた人ほど知ってほしい、“血管リスク”の話を書いていきます。
怖がらせたいわけではありません。むしろ逆です。
健康診断って、ちゃんと読めるようになるとかなり面白い。単なる数字の羅列じゃなく、「今の自分の体ってこういう流れなんだな」が少しずつ見えてきます。
それが見えるようになると、未来の変わり方もかなり変わります。
HDLが高い人ほどハマりやすい「健康診断の落とし穴」
これ、本当にあるあるなんですが、HDLが高い人って“安心感”がすごいんです。
なんというか、「自分は動脈硬化とは別世界の住人です」みたいな空気を少しまとい始める。
いや、わかるんですよ。だって“善玉”ですからね。名前がもう強い。
なので、
HDL 95
LDL 150
みたいな結果でも、「LDLちょっと高いけどHDL高いから、まあ実質プラマイゼロで!」みたいな気持ちになりやすい。
でも残念ながら、血管はそんなに“雰囲気”で動いていません。
たとえば、こんな健診結果。
HDL 98
LDL 162
TG 240
ALT 52
HbA1c 6.0
HDLだけ見るとかなり優秀です。でも全体を見ると、少し景色が変わる。
中性脂肪(TG)が高い。肝機能も少し高い。HbA1cも境界域。
つまり、「脂質だけの問題」というより、“代謝全体が少しずつ乱れ始めている”可能性があります。
ここで出てくるのが、インスリン抵抗性です。
難しい言葉ですよね。ざっくり言うと、“インスリンが効きづらくなっている状態”。
インスリンは血糖を下げるホルモンなんですが、効きが悪くなると、血糖だけじゃなく脂質の流れも乱れます。
共有資料でも、インスリン抵抗性では、中性脂肪が上がり、HDLが下がり、small dense LDLという“血管に入り込みやすい悪玉コレステロール”が増えるパターンが整理されています。
small dense LDL。名前がもう強そうですよね。なんか敵幹部みたいで、、、
でも実際、かなり厄介です。
つまり、LDLの数字だけでは見えないリスクがある。そして、HDLが高いからといって、それが全部打ち消されるわけではない。
ここ、かなり大事です。
「痩せてるから大丈夫」が、一番危ないこともある
これも外来でかなり多いです。
「いや先生、自分そんな太ってないんで」
実際、BMIは普通だったりします。でも問題はそこじゃないことが結構ある。
最近増えているのが、“見た目はそこまで太っていないのに、内臓脂肪型”の人です。
体重はそんなに増えていない。でも腹囲が増えてきている。中性脂肪が上がってきている。HbA1cもじわじわ上昇している。
こういうパターン。
しかも怖いのが、本人が元気なことなんですよね。
普通に働けるし、ご飯も美味しいし、特に症状もない。だから、「まあ大丈夫か」で数年過ぎていく。
でもその間に、脂肪肝、高血圧、糖尿病、動脈硬化が少しずつ積み上がっていく。
病気って、ある日突然やってくる感じがしますけど、実際にはかなり前から“小さい予告編”を流していることが多いんです。
健康診断は、その予告編を見るイベントなんですよね。
だから、本当に大事なのは、「今病気かどうか」より、“どっち方向へ向かっているか”。
これです。
“健康意識が高い人”ほどハマりやすい
これ、かなり面白いところなんですが、HDLが高い人って、健康への興味が強い人も多いんです。
なので、
サプリを飲む。
運動する。
食事を気にする。
糖質を気にする。
油を気にする。
かなり頑張っている。
でも、健康意識が高いからこそ、“自分は大丈夫側の人間”という意識も少しずつ強くなっていく。
ここが落とし穴だったりします。
特に最近多いのが、“部分最適化”です。
たとえば、
「オリーブオイルは体に良い」
↓
たくさん使う
「ナッツはHDLを上げる」
↓
永遠に食べる
「赤ワインは血管に良い」
↓
ボトル半分いく
みたいな。
いや、気持ちはわかるんですよ。
僕も健康番組を見ると、一瞬「トマトジュース箱買いしようかな」と思いますしね
でも、人間の体ってそんな単純じゃない。
HDLだけ良くても、全体が崩れていたら意味がないんです。
だから最近は、“何か1つの数字を良くする”より、“全体の流れを整える”という考え方がかなり重要になっています。
“善玉コレステロール”という名前が、逆に思考停止を生む
これ、今回いちばん伝えたいところです。
HDLって、“善玉”って呼ばれるじゃないですか。
この名前、わかりやすい。でも、わかりやすすぎる。
だって“善玉”って聞いたら、「増えれば増えるほど良い」と思いますよね
でも実際には、HDLって“量”だけじゃありません。
ちゃんと働いているか、が大事なんです。
資料でも、HDL-C 90mg/dL以上では逆にリスク上昇の報告があり、“機能不全HDL(Dysfunctional HDL)”の可能性が整理されています。
つまり、数字としてはHDLが高い。でも、ちゃんと血管を守れているとは限らない。
ここがポイントです。
なので最近は、「HDLを上げる」ことより、“代謝全体を整える”方向へ考え方が変わってきています。
HDLが高い人ほど、実は“お酒”を見直したほうがいいこともある
これもかなり多いです。
「先生、お酒ってHDL上がるんですよね?」
はい、上がることがあります。
でも問題はそこだけじゃない。
共有資料でも、アルコール多飲ではHDLが上がる一方で、中性脂肪も上昇しうること、さらに心血管保護効果は単純ではないことが整理されています。
つまり、
HDL↑
TG↑
γGTP↑
みたいなことが普通に起こる。
これ、健診だと結構あります。
特に、
「平日は飲まないんですけど、週末だけで」
と言う人。
いや、その“週末だけ”が結構強いことあるんですよね。
しかも、お酒って不思議で、“飲んでる人ほど適量だと思っている”。
これは本当にあるあるです。
問診で、
「お酒どのくらいですか?」
と聞くと、
「そんな飲まないですよ〜」
から始まり、
最終的に、
「ハイボール4〜5杯ですね」
みたいになる。
いや、それはもう普通に飲んでます笑
もちろん、お酒が全部悪という話ではありません。でも、“HDLが高いから飲酒は問題ない”とは考えないほうがいい。
特に、
TG高値
脂肪肝
腹囲増加
睡眠の質低下
この辺があるなら、一度立ち止まって見る価値があります。
実際、どこを優先して改善すればいいのか
ここもよく聞かれます。
「結局、何から直せばいいんですか?」
答えとしては、まずは“インスリン抵抗性を改善する方向”です。
つまり、
・中性脂肪を下げる
・腹囲を減らす
・血糖を改善する
・睡眠を整える
・運動習慣を作る
この辺。
逆に言うと、“HDLだけを上げよう”としなくていい。
ここ、かなり大事です。
資料でも、HDL低値への対応は、単純にHDLを上げるより、減量・運動・禁煙・TG改善など、全体の代謝改善が重要と整理されています。
つまり、“血管を守る”ことが目的。
HDLは、その結果として変わってくるものです。
なので、
「HDLを5上げるぞ!」
みたいなゲームにはしないほうがいい。
健康診断って、RPGのステータス画面じゃないので。
去年との比較が、実は一番大事
これ、本当に大事です。
健康診断でありがちなのが、「基準値内だから大丈夫」という考え方。
でも実際には、
LDLが毎年上がっている。
TGがじわじわ増えている。
HbA1cが少しずつ上がっている。
こういう“流れ”のほうが重要だったりします。
病気って、ある日突然始まるわけじゃない。
かなり前から、少しずつ数字の中で準備をしています。
だから健康診断は、“単発の結果”ではなく、“連続ドラマ”として見る。
去年と比べる。
3年前と比べる。
すると、
「あ、自分この数年でかなり変わってるな」
って見えてくる。
これが見えると、行動も変わります。
最後に
最後まで読んでくださってありがとうございます。
HDLが高い。それ自体は悪いことではありません。
でも、「HDL高いから自分は安心」と思考停止してしまうと、逆に他のサインを見落とします。
特に、
中性脂肪。
脂肪肝。
HbA1c。
腹囲。
この辺はぜひセットで見てください。
そして、去年との比較もかなり大事。
健康診断って、“今病気かどうか”だけを見るものじゃありません。
むしろ、“未来の自分を守るためのヒント”です。
HDLが高かった人ほど、今年はぜひ、「他の数字はどうかな?」まで見てみてください。
たぶん、去年までより健康診断が少し面白く見えてきます。
今日の一言

参考文献
📖 本記事は、以下のガイドライン・レビュー・大規模研究をもとに、臨床現場向けに再構成しています。
日本動脈硬化学会(JAS)
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版」American College of Cardiology / American Heart Association(ACC/AHA)
Cholesterol Management GuidelinesEuropean Society of Cardiology(ESC)
Dyslipidemia Guidelines 2025CTT Collaboration
Efficacy and safety of LDL-lowering therapy meta-analysis日本肥満学会(JASSO)
肥満症診療ガイドライン 2022American Diabetes Association(ADA)
Standards of Care in Diabetes 2026AACE(American Association of Clinical Endocrinology)
Obesity Clinical Practice Algorithm 2025SELECT Trial
Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in ObesitySTEP / SURMOUNT Trials
GLP-1受容体作動薬・GIP/GLP-1作動薬に関する主要試験KDIGO Clinical Practice Guidelines
CKD・代謝・腎保護関連ガイドライン各種レビュー論文(PubMed / Mayo Clinic / 欧米レビュー)
📣 なお、本記事は「健診結果をどう臨床的に読むか」に重点を置いており、専門的内容を一般向けに噛み砕いて説明しています。
実際の診断・治療は、個々の背景や合併症によって変わるため、必要時は医療機関へご相談ください。
