米国で何が機能獲得(DGoF)研究として排除されるのか?
こんにちは。
NIHで続く抗争
Science 誌のスクープです。NIH (アメリカ国立衛生研究所) の微生物学・感染症部門長(DMID) John Beigel 氏が辞任しました
これによって季節性インフルエンザ研究もストップするかもしれません
ターゲットはクリストファー・B・ブルック教授などの研究です
季節性インフルエンザウイルスの遺伝子進化などの研究です
インフルエンザAウイルスのヘマグルチニン(HA)は遺伝子の変異によって抗原性が変化し、既存の免疫から逃避するようになります
ウイルスのヘマグルチニン(HA)糖タンパク質は、細胞への結合と侵入を媒介します。防御中和抗体は主にここをブロックします。ウイルス側は抗原ドリフトによって中和抗体から逃避する。そこでヘマグルチニンの変異を先回りして予測したい
インフルエンザウイルスのエンベロープには、もうひとつノイラミニダーゼ(NA)があります
HAはシアリン酸に結合して細胞への侵入を促進しますが、NAは通常シアリン酸結合を切断してウイルス粒子の放出を促進します。つまり、HAとNAの作用は相反する
そこでブルック教授は、ヘマグルチニン(HA)の遺伝子進化にノイラミニダーゼ(NA)遺伝子進化が影響すると仮説をたて研究を進めています
優秀なラボです
論文の例:The evolutionary potential of influenza A virus hemagglutinin is highly constrained by epistatic interactions with neuraminidase.
Cell Host Microbe. 2022
*これをエピスタシス的相互作用(エピスタシス)と言います。ある遺伝子座の遺伝子が、別の遺伝子座の遺伝子の発現や働きを抑制・変調させる遺伝子間の相互作用のことで、ある遺伝子の表現型が別の遺伝子の存在に依存する現象を指します
バタッチャリア NIH 所長は機能獲得研究をストップさせたい。しかしどこまでを停止すべき研究とするかは闘争中
連邦政府は資金拠出を一時停止することで、機能獲得(DGoF)研究をストップさせている
2025年5月5日付の大統領令(EO)「生物学的研究の安全性とセキュリティの向上」は、特定の実験成果を追求する研究と定義され、重大な社会的影響をもたらす可能性があると判断される危険な機能獲得(DGoF)研究に対する連邦政府の資金拠出を一時停止する措置を講じました。この措置により、機関のバイオセーフティ委員会が、DGoFの特定と自己報告において中心的な役割を担うことになります
NIH は5月7日と6月18日付の通知において、助成金受給者に対し、DGoFを特定し自己申告するよう指示しました
危険な機能獲得(DGoF)は、成果が「重大な社会的結果を引き起こす可能性がある」(SSC)研究として特徴付けられ、SSC はこれまでの機関研究監督方針には含まれていなかった新しい基準です。大統領令は、『SSCを潜在的なDGoF研究プール内のリスクを層別化し優先順位付けするための最終フィルターと定め、倫理的配慮な基づいて明確なSSC評価基準を定義する』としています
現時点の闘争の背景にある(予測される利益と潜在的な悪影響の倫理的評価)の定義は難しい
米国が、すべての機能獲得研究を停止させたとしても
新型コロナウイルスが、もし中国の武漢ウイルス研究所からのものだったとしたら世界的な協調が絶対に必要です
参考資料
1) Ethical criteria for self-identifying societal risk associated with dangerous gain-of-function research. Patricia Delarosa, et al. 12/10/2025 訳
2)Evaluating safety and security in biological research. Williams A, et al. 9/30/2025 訳
3)United States government policy for oversight of life sciences dual use research of concern. 訳
https://aspr.hhs.gov/S3/Documents/us-policy-durc-032812.pdf
以上です
米国では、機能獲得研究GoFを制限する方針はたっているけれど、何を制限するかはまだ課題です
日本では、東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター 河岡義裕 機構長の名前は知られていますが、ウイルス学の研究が進んでいたとはいえない状況でした。危険な機能獲得研究を制限する必要はありますが、日本が take behind of では困る
そして全世界が協調していないと意味がない
