製油所の常圧蒸留装置の仕組み
こんにちは。私の専門は医学、医科学、分子生物学、免疫学、分子遺伝学、量子学などなので、私の石油に関する記事を信じて良いものかお悩みかもしれません
そこでまず常圧蒸留装置の仕組みを説明することにしました
序
タンカーで運ばれた原油はどうなるの?
日本語の動画です。動画の1分から2分17秒の間で、原油からガソリン等が製造される流れが説明されています
概略:タンカーで原油が運ばれてくる→タンカーが外洋桟橋(シーバース)に着く→原油は海底パイプラインを通って製油所の貯蔵タンクへ運ばれる→360℃に熱した原油を常圧蒸留装置に送り、沸点の違いを利用して軽くて蒸発しやすいLPガス、ガソリン/ナフサ、ジェット燃料/灯油、軽油、重油/潤滑油原料にわけます→この後に重油流動分解装置、重質軽油水素化分解装置、減圧蒸留装置、接触改質装置、軽油深度水素化脱硫装置、重油直接脱硫装置にかけます
常圧蒸留装置とは?
常圧蒸留装置は、大気圧(約1気圧)下で原油を加熱し、沸点の違いを利用してガソリン、灯油、軽油、重油などの成分(留分)に分離する石油精製の基幹設備です。製油所の最上流に位置し、別名「トッパー」や「トッピング装置」とも呼ばれ、処理能力がその製油所の規模指標となります

Nano Banana 2 作画
2025年3月末現在の集計によると、日本国内の製油所における原油処理能力(常圧蒸留装置/トッパー能力)の合計は、日量3,110,400バレルです。
石油連盟のデータなどによると、実際の原油処理量は日量250万〜280万バレル程度で推移しており、平均的な稼働率は80〜90%程度となっています
国内の製油所は計19か所あり、需要の減少や脱炭素化の流れを受けて、処理能力と製油所数はともに減少傾向にあります
国内の主要な製油所と処理能力(2025年3月末現在)は以下の通りです。
ENEOS 水島製油所:350,200バレル/日(国内最大)
昭和四日市石油 四日市製油所:255,000バレル/日
ENEOS 川崎製油所:249,100バレル/日
鹿島石油 鹿島製油所:210,100バレル/日
出光興産 千葉事業所:195,000バレル/日
日本の製油所1か所あたりの平均処理能力(約16.4万バレル)は、韓国(約59万バレル)やシンガポール(約45万バレル)などのアジア近隣諸国と比較すると小規模な部類に入ります
次にこの動画から抜き出します
常圧蒸留装置の高い塔を蒸留塔と呼びます。直径が 10m以上もあります。
ここで原油の炭化水素成分を沸点温度によって粗く分けます

最下段が350℃、最上段が25℃で、順番に温度が下がっていきます

原油処理のスタート
原油を加熱炉で約350〜370℃に熱します。原油は気体と液体が混ざった状態になります

管内で「液体→気体」という相変化を伴うために、炉内におけるフローパターン、最高境膜温度(Peak Film Temperature)が加熱炉の性能へ影響します。
熱した原油を常圧蒸留装置の最下部(フラッシュゾーン)に流し入れます

蒸留塔内部で加熱することはありません。沸点の低い成分(ガソリンや灯油など)はすぐに蒸気になって塔の上へと昇っていきます。
蒸留塔の一番てっぺんの仕組み
蒸留塔の一番てっぺんからは、塔の中で最も沸点が低い(=蒸気になりやすい)成分がガスとして出てきます。主な成分は、メタン、エタン、プロパン、ブタン(これらがLPガスの主成分)、およびナフサ成分です。
塔のてっぺんから出たガスは、まず冷却器で冷やされて液体が混ざった状態になり、ドラム (受槽) に集められます。ドラム内で重さによって気体と液体に分かれます。

液体になったもの: これが「ナフサ」になります。沸点範囲が30〜80°C程度のものを軽質ナフサといい、石油化学工業でエチレン分解原料として多く使用されます。沸点範囲が80〜180°C程度のものを重質ナフサといい、ガソリンや芳香族製造用の原料として使用されます。
ガスのまま残ったものは、さらに別の装置(回収装置)へ送られ、そこでプロパンやブタンが取り出されて、私たちが知っているLPガスになります。
ナフサの一部を塔のてっぺんから還流します。下から昇ってくる蒸気の中には、ナフサになりたい「軽い成分」だけでなく、うっかり混じってしまった「少し重い成分(灯油の成分など)」も含まれています。上から冷たいナフサの雨が降ってくると、混じっていた「重い成分」は冷やされて液体に戻り、下の段へと押し戻されます。
蒸留塔は「上に行くほど冷たい」という温度の階段が必要ですが、塔自体には冷房がついているわけではありません。冷たいナフサが一番上の段に入ると、そこで下から来る熱い蒸気の熱を奪って、自らは再び蒸発します。この「蒸発する時に周りの熱を奪う(気化熱)」という働きによって、塔の最上段を一定の低い温度にキープし続けています。

中段の仕組み
横から抜き出す(サイドストリーム): ちょうど良い温度の棚に溜まった液体を、パイプで横から抜き出します。
仕上げの掃除(スチーム): 抜き出したばかりの液体には、まだ「本来ならもっと上で分かれるべき軽い成分」が少し混じっています。そこで、サイドストリッパーの下から熱いスチームを吹き込み、余分な成分を蒸発させてメインの塔へ追い戻します。

各棚にある「バブルキャップ」の働き
バブルキャップは、「下から昇ってくる蒸気を、トレイに溜まった液体の中に強制的にくぐらせる」ための装置です。ただの穴だと蒸気がシュッと通り抜けるだけで、液体とあまり触れ合えません。バブルキャップがあると: 蒸気がキノコのカサにぶつかって下向きに方向転換され、トレイに溜まっている液体の中を「ブクブク」と泡(バブル)になって突き抜けるようになります。「気液接触(蒸気と液体のぶつかり合い)」を高めるため泡にして蒸気と液体の触れ合う面積を増やします

蒸留塔の中には数十枚の棚(トレイ)があります。
「上に行くほど冷たく、下に行くほど熱い」という温度の階段ができています。エンジニアは、それぞれの成分が液体として溜まりやすい「高さ」をあらかじめ計算して、そこに「抜き出し口」を作っています。
灯油は沸点が150〜250°Cの留分。トレイの材料は一般に炭素鋼が使われ、腐食の激しい部分はステンレス鋼が用いられる。油蒸気と液の接触効率を上げるため、セラミックス、ステンレス鋼などの充填物を塔内に入れた充填塔にトレイを入れる場合がある
軽油は沸点が250〜350°Cの留分。軽質軽油、重質軽油に分けて取り出す場合もある。灯油、軽油の各留分には軽質分が混入しているので、ストリッパーに送り、過熱水蒸気によって軽質分を蒸留塔に戻したのち、抜き出す。
サイドストリーム(側流)で抜き出す
各棚の上には、上昇してきた蒸気が冷やされて液体になったものが溜まっています。
これを、塔の横に取り付けたパイプから抜き出します。これをサイドストリームと呼びます。
「サイドストリッパー」で仕上げる
実は、棚から抜き出したばかりの液体には、まだ少しだけ「本来ならもっと上で分かれるはずの軽い成分(ガソリン分など)」が混じっています。これをそのままにすると引火点が低くなり、危険な燃料になってしまいます。
そこで、抜き出した直後に「サイドストリッパー」という小さな塔に通します。
仕組み: 下から熱い蒸気(スチーム)を吹き込みます。
効果: 混じっていた軽い成分だけを蒸発させてメインの蒸留塔へ追い戻し、純度の高い「灯油」や「軽油」だけを底から取り出します。
最下段に残ったもの
蒸留塔の「一番底」に溜まった油は、専門用語で「常圧残油(じょうあつざんゆ)」と呼ばれます。
混入する軽油分を除くため、塔底に過熱水蒸気を吹き込んでいます。
約350℃〜370℃まで加熱しても蒸気にならなかった、石油の中で最も「重く、黒く、ドロドロした」部分です。
常圧残油は高沸点炭化水素のアスファルト成分や重金属などが濃縮された複雑な混合油で、重油、潤滑油、アスファルト材となり、一部は流動接触分解装置にかけられてガソリンとなります。
用途: そのままの状態では、大型船の燃料(C重油)や、道路のアスファルトの原料として使われます。
このドロドロからさらに価値のある成分を絞り出すために、「減圧蒸留」という別の蒸留塔へ送ります。
原油の場合は5種類の留分に分けて取り出します。沸点30°C以下のLPガスに、30〜150°Cのナフサ留分、150〜250°Cの灯油留分、250〜350°Cの軽油留分、そして、最後まで残る沸点350°C以上の残油(重油やアスファルトになる)です。原油から各留分がどれくらいの割合で取り出せるかは、基本的には原油の種類によって決まります。
ざっくりと常圧蒸留装置の仕組みを説明しました
イラストはGeminiさんのNano Banana 2 が作画してくれました
Geminiさんなしではできなかった記事です。ありがとう
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