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掛谷・松本論文。いつものマガジン。分子進化の基礎はOpenです

こんばんは。オミクロン変異株が人工ウイルスであるのか?という問題はmRNAワクチンを国民のほとんどが接種した日本人にとって超超超重大です

オミクロンは人工ウイルスであると主張する掛谷・松本論文をまじめに解説しました

、Kakeya &Matsumoto、タイトル 『A Probabilistic Approach to Evaluate the Likelihood of Artificial Genetic Modification and Its Application to SARS-CoV-2 Omicron Variant 人工遺伝子改変の可能性を評価するための確率的アプローチとSARS-CoV-2オミクロン変異体への応用

あらかじめ:ブログなのですべてのチェックを提示しません

この論文を読む前に分子進化における中立理論を説明します


ダーウィンの進化論では『生物の形質に焦点をあて生存に有利なものが生き残る』とします。自然淘汰の考えかたです。

一方、分子進化の中立理論では『生存に有利でもなく不利でもない中立的な変異が偶然によって生き残る確率が高い(約80 ~ 90%)』とします。
DNAやアミノ酸のレベルで、『同義変異はアミノ酸を変えないので機能に影響を与えない。そのため同義変異は子孫に伝わる。非同義変異は機能に影響を与えることが多く、非同義変異が有害な場合は除去され子孫に伝わらない浄化選択がおこる』とします

興味のある人のために例題を作りました

例題1:1200アミノ酸からなるタンパク質をコードする遺伝子にランダムに変異が入るき、何個のアミノ酸が変化する確率が最も高いですか?
答え:1134個
解説:1200個のアミノ酸をコードする遺伝子の各コドン(合計1200個)が、すべてのヌクレオチドをランダムにU、C、A、G(各1・4の確率)に置き換えることで完全にランダムな64通りのコドンになります。元の遺伝子はストップコドンを含まないため、61個のセンスコドンに対する平均で変化しないアミノ酸の確率は、センスアミノ酸の退化度二乗和Σd_i²=215 を用いて p=215(61x64)=215/3904≈0.94493 です
変化するアミノ酸の数Kは二項分布 Bin(1200, q) に従います。モード(最も確率の高い値)はfloor(1200+1)xq=floor(1201x3689/3904)≈floor(1134.8589)=1134 です。

例題2:1200個のアミノ酸からなるタンパク質をコードする遺伝子のすべてのヌクレオチドがランダムにU、C、A、Gに変化した場合にちょうど30個のアミノ酸が変化する確率は?
解:二項分布Bin(1200,q) (ここでq=3689/3904≈0.94493 が」変化する確率)に基づきP(K=30)=\binom{1200}{30}q⌃{30}(1-q)⌃{1170}で与えられる。この値は約10⌃{-1414}でこのような事象が発生する確率は天文学的に小さい
*かけや先生の論文をみて作りました

例題1で示すように、すべてのヌクレオチドが等しく置き変わる条件で単純に計算すると終止コドンを含む非同義変異の発生確率は数学的に90%以上です
実際には、点突然変異はサイコロを振るようにおこるのではなく、
主にRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)のエラーでおこり、他にRNAの化学的自然分解、宿主細胞内の環境、変異原によってもおこります
しかし、
その変異がウイルスの生存にとって致命的であったり、単に次の複製機会を得られなかったりする理由で、すべての変異が継承されるわけではありません

RNAウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼのエラー率(変異率)は約 10⁻⁴ ~ 10⁻⁵ /塩基/複製です
コロナウイルスにはnsp14による変異を修正する校正機能があります。そのおかげでコロナウイルスの変異率は約 10⁻⁶ ~ 10⁻⁷ /塩基/複製 と、さらに低い
コロナウイルス(SARS-CoV-2)で、ゲノムに入る点突然変異の数は1回の複製サイクルあたり平均で約0.04個、または1個未満と推定されています (参照1、2)

用語:突然変異は、遺伝的多様性の起源を駆動する主要なプロセスです。突然変異率は複製忠実度の関数です。一方、置換率は、一定期間における突然変異の蓄積の尺度であり、選択の影響を反映しています

*️⃣はじめに_背景の基礎知識

用語:
dN/dS:分子進化の分野で非常に重要な指標(比率)です。進化の原動力として「自然選択(淘汰)」がどのように働いているかを定量的に評価するために用いられます
dN: 非同義置換率 (rate of divergence at nonsynonymous sites)。アミノ酸配列が変化する(タンパク質の機能に影響を与える可能性がある)塩基置換の頻度
dS: 同義置換率 (rate of divergence at synonymous sites)。アミノ酸配列が変化しない(タンパク質の機能に影響を与えない中立的な)塩基置換の頻度

*️⃣1️⃣ ある特定のコドンについて、単一塩基置換によって生じる同義変異の確率は、遺伝暗号表に基づいて以下の単純な計算式で求めることができます

🟢 条件:点突然変異が同一の確率でランダムに起こる

*️⃣2️⃣分子進化生物学でdN/dSは、タンパク質をコードする遺伝子配列が受けている自然選択の方向と強さを評価するための極めて重要な指標です

dN/dS (ωと同じ)
2つの配列間の同義変異の頻度を定量化する指標です

*️⃣3️⃣ 同義変異確率と同義置換率の違い

同義変異確率と同義置換率は、どちらも「同義変異」に関連する概念ですが、適用される文脈と意味合いが異なります。
同義変異確率は、突然変異がランダムに起こった場合に、その結果がアミノ酸配列に影響を与えない(同義である)理論上の確率です。進化や選択圧は考慮されません。コドンごとに確率は異なります
同義置換率(観測値、KsまたはdS)は、実際に観察され、集団内に固定された同義変異の頻度です。これは、塩基配列を比較することによって推定されます。突然変異が起こるだけでなく、その変異が集団中に広まり、進化的に固定される必要があります。自然選択の影響を間接的に受けます。コドンごとに確率は異なります
両者は密接に関連していますが、「同義変異確率は突然変異の直後に焦点を当てた理論値」であり、「同義変異置換率は長い進化の時間を経て観察される結果」であるという点が決定的な違いです

*️⃣4️⃣ウイルス進化における同義置換率の考え方

進化生物学における同義置換率は種間で固定された同義変異の観測頻度です。ウイルス進化においては表現が異なり、同義置換率は「集団内で時間経過に伴って蓄積された、アミノ酸配列に影響を与えない中立的な変異の頻度」になります
進化生物において2つの配列間の同義変異の頻度を定量化する計算アルゴリズムにJukes-Cantor、Kimura 2乗則、Miyata-Yasuda法などがあります

*️⃣5️⃣1271アミノ酸からなるスパイク蛋白質にN変異が30とS変異が1できた場合のN変異とS変異の生存率の違い_荒川先生の論文←この発見が貴重で、すべてでもある

観察された変異数を標準遺伝暗号に基づく平均サイト数を用いて計算すると非同義変異Nの置換率は約0.0104、同義変異Sの置換率は約0.00108 です
これはN変異の生存率(固定確率)がS変異の約9.68倍高いことを示唆します
つまり dN/dS ≈ 9.68  です。これほどの偏りは非常に珍しいと言えます。このような高いdN/dS は、進化の異常を示す可能性があるためさらなる検証が推奨されます

2021 年度バイオインフォマティクス技術者認定試験
問:タンパク質をコードしている遺伝子の進化の過程における塩基置換は、同義置換と非同義置換に分類される。同義置換と非同義置換に関する以下の記述のうち、もっとも不適切なものを選択肢の中から一つ選べ。同義置換率は同義サイトあたりの置換数、非同義置換率は非同義サイトあたりの置換数である
1.同義置換はアミノ酸を変化させない置換で、非同義置換はアミノ酸を変化させる置換である。
2.大部分の遺伝子では、同義置換率は非同義置換率よりも小さい。
3.ウイルスの表面抗原の抗体によって認識される部位では、抗体による認識を避けるためアミノ酸置換が加速されることがあり、非同義置換率が大きくなる。
4.マウスとヒトのオーソログ遺伝子を比較する場合、同義置換率は遺伝子によらずほぼ一定の値になるが、非同義置換率はコードされる遺伝子によって大きく異なる。
解説:同義・非同義置換の定義は選択肢 1 のとおりである。また上記問題の解説のとおり、中立な変異の割合は遺伝子によって異なるので、選択肢 3 と 4 は正しい。ウイルスの表面抗原はアミノ酸変化により宿主免疫から逃れることができるので、非同義置換率が大きくなる典型例である。ただしそれ以外の大部分の遺伝子では、非同義置換は遺伝子機能上の障害のため選択されにくく、同義置換よりも少ないので選択肢 2 が正解である。

✴️掛谷・松本論文

目的:

オミクロン変異株におけるdN/dSが自然に発生する確率を見つける方法を提案する

変異の偏りを考慮し、変異の平衡を考慮して各変異の確率を推定する

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