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夕月夜~ゆうづきよ~【妄想短編】


9月にこんなメッセージがきた。
恋人の由宇と連絡が取れなくなって一週間が経っていた。



私は由宇の夫です。

突然のご連絡を差し上げることをお許しください。由宇は現在、体調を崩して病院で眠ったままの状態にあります。私が彼女の身の回りを整理する中で、あなたとのやりとりを知ることとなりました。

由宇があなたに心を寄せていたことは理解いたしました。しかしながら、彼女は既婚者であり、私たちの生活や家族の事情を考えると、この関係を続けることは難しい状況です。あなたに非があるわけではなく、ただ事情が重なり、これ以上の交流は由宇にとっても、あなたにとっても良い結果をもたらさないと考えております。

どうか、由宇とのことはここで静かに終わらせていただければ幸いです。あなたの誠実さに感謝しつつ、これ以上のご連絡や訪問は控えていただけますようお願い申し上げます。

突然のお願いとなり恐縮ですが、ご理解いただければありがたく存じます。



夫、

私たちの生活、

家族の事情、、、


どういうことだ、、、?


すべて、寝耳に水だった。

私と由宇は5月に出会い(由宇から声を掛けてきた)、それから頻繁に食事に行くようになり、メッセージも毎日ではないがよくやりとりし、泊まることもあったし、ごく自然な流れで、付き合うようになっていた、と思う。

思う、というのは、それが私の思い過ごしだったかもしれないから。

でも、夏はずっといっしょにいたよな……?

紅葉を見に行きたい!って言ってたよな?

なぜ入院してるのか、一週間の間に何があったのか、夫とは誰なのか。

とにかく、私は激しく動揺しながらも、由宇の無事、ではないけれども所在の確認をできたことにほっとしていた。

しかしながら疑問だらけで、考えても仕方ないのに、ずっと由宇のことばかり思い出してしまい、仕事に身が入らなかった。

文面はまともそうだし、由宇の世話をきちんとしていそうだが、、、
しかし、ほんとうに送り主は夫なのか……!?


私は由宇との結婚を考えていた。
が、まだそれを伝えてはいなかった。
断られるかもしれない、とよぎることもあったが、諦める理由はなかった。
出会って長く時は経っていないものの、決意するのに十分なくらいの時間を共に過ごしてきた。私は彼女を愛していた。


由宇はよく笑う女だった。
たまに拗ねることもあったが、だいたい機嫌がよかった。
眉毛が薄く、瞼は少し腫れぼったく、チワワのように見えて、私には好ましかったが怒らせてはいけないので、それを言わなかった。
歩いているとすぐにギュっと腕を巻き付けてきて、それがこの上なく嬉しかった。私には由宇が必要だった。

由宇にとって、私とは何だったのか。

彼女はわがままなほうだし、それは私も理解して受け止めていた。
結婚には興味がないようにも見えた。
たまに彼女のSNSを覗くと、飲みに行った場所の写真に男の腕らしきものが写り込んでいたことがあった。
それについて、わざわざ訊ねることはしなかった。
バーベキューの写真では、隣にこどもがいたが、親戚の集まりのようにも見えたし、特に気にも留めていなかった。
母親の顔もあったのだろうか、いや、とてもそんな風に思えない。

彼女はいい意味で軽かった。
纏っている空気感、佇まい、こちらへ向ける目線。
それでいて熱かった。


私は騙されていたのだろうか。

いまだにそうは思えない。
由宇がひとを騙すようには。
純粋でピュアだとは言わないが、いつも本音を話してくれている、そう思っていたし、私も由宇にだけは素直に気持ちを話すことができた。


風に舞う 葉は戻らずに 君もまた


由宇、
紅葉が終わっちゃうよ。
元気になったら戻っておいで。
特別な景色を見せてあげるよ。一生忘れられないような。
君が結婚しているなんて、冗談だろ。
私を一番に思ってくれていたのではないの。
君が私にいってくれた言葉はすべて憶えている。
誰にも言えないんだと打ち明けてくれた秘密も。
次に会えたら、絶対に言うよ、いままで言えなかったこと。
君がいない毎日は、寒くてしかたない、まだ雪も降っていないのに。

もっと君に愛していると言えばよかった。

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樫ムシカ/国王見習い 助かります。