「作家を拾う」(四百字のスケッチ)
小さな作家を拾った。飼い方を調べ、中古のタイプライターを与えると、喜んでそこで生活し始めた。
「作家は生涯で数百の作品を書き、それが数千年読み継がれることもあります。しかしほとんどの作家は一作も書くことなく、ある日突然行方をくらませます」
そんな説明文を読みながら、小さな作家の生態を眺めていた。思い悩んだり、白紙のままの原稿を丸めたりしていた。
小さな作家愛好家たちの集いに参加してみた。仲良くタイプライターの上によじ登ったり、互いの原稿を読み合ったりしていた。しかし解散して一人になると、集まる前よりずっと寂しそうにしていた。以後集いには参加していない。
「何も書けなくてもいいから、突然いなくならないでよ」
小さな作家は頷きながら私の爪をかりかりと噛んだりした。
それでもやっぱり多数の小さな作家と同じように、いなくなってしまった。残された原稿には一言「完」とだけ記されていた。
「始まってへんがな」
以来小さな作家を見つけても、連れて帰っていない。
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