My Favorite アイビスSD (2023 オールアットワンス) 〜人馬の熱い絆が生んだ優勝〜
唯一の直線1000m(千直と呼ばれます)の重賞ということもあって、アイビスサマーダッシュは非常に人気のあるレースです。
◆ 千直の特徴
一般的なレースで、多くの馬は内側を走るので、内側の馬場は荒れています。反面、外ラチ沿いは走る馬が殆どいないので、走りやすい状態を保っています。
そのため、千直ではスタートから、基本的に全ての馬が走りやすい外ラチ沿いを目指して斜めに走ります。
なので、斜めに走るロスがなく、馬群に包まれるリスクのない、外枠の馬が圧倒的に有利です。
◆ 2023年のアイビスSDを振り返る前に
2023年のアイビスSDは、その前2年間からストーリーが紡がれています。
・2021年
当時3歳だったオールアットワンスが、51kgの軽斤量と外枠を活かして、早目に馬群から抜け出して勝利しました。
なお、2着のライオンボスの斤量は57kgでしたので、斤量差は勝因の一つだと思います。
因みに、彼は5年連続でアイビスSDに出走、優勝1回、2着2回と、「ミスターアイビスSD」と呼んで良い存在です。
3着はただ1頭内ラチ沿いを走ったバカラクイーンが入線しました。
・2022年
オールアットワンスは3番枠となりました。
そこで前年のバカラクイーンに倣い、内ラチ沿いを進むも、6着に敗れました。
1番枠を引いて、同じく内ラチ沿いを選択したのは、ライオンボスです。
やはり、内外の馬場状態の差は大きかったのか、オールアットワンスは6着、ライオンボスは10着に沈みました。
◆ 2023年
5歳になったオールアットワンスは脚元の不安があり、前年のアイビスSDから1年間休養していました。
復帰戦となったアイビスSD。しかし、枠順は前年と同じ3番枠でした。
前年の経験を生かして、前半500mはユックリと走り、馬場状態の良い外側に馬を運びます。
そして後半500mは馬群の後ろから進路を探し続け、やっとスペースを見つけると、閃光のように突き抜けました。
その末脚は、「ここまで切れ味鋭い末脚を、千直で見られるんだ」と驚いた記憶があります。
1年ぶりの実戦で、見事な復活勝利をあげました。
そして、これが現役最後の勝利となりました。
また、ライオンボスは、自身30走目となったこのレースが、JRAでのラストランになりました。彼があげた6勝は、全て1000mでした。
◆ 石川騎手
アイビスSDでは、3年連続で石川騎手がオールアットワンスに騎乗しました。
しかし、2023年は当初、短期免許で来日中のホー騎手が騎乗する予定でした。
しかし、レース前日の落馬事故で怪我を負い、急遽石川騎手への乗り替わりとなりました。
石川騎手は勝利騎手インタビューで「彼女のことは僕が一番わかっていると、自信を持って乗せていただきました」と力強く言い放った姿が、良い意味で印象的でした。
オールアットワンスの末脚を信じ切った、最も彼女のことを知っている騎手のさすがの騎乗でした。
◆ 人馬の絆
オールアットワンスはその後2戦走り、5歳の暮れに引退しました。引退戦まで、石川騎手がエスコートしました。
一時期、石川騎手はオールアットワンスの鞍上から外されたことがありました。
それだけに、ホー騎手の怪我という事情であっても、石川騎手が彼女の背に戻って勝利した2023年のアイビスSDは、とても思い出深いです。
その前2年間のレースとストーリーが紡がれており、レース後の勝利ジョッキーインタビューまでを含め、最高のアイビスSDでした。
