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夜店から

夜店から漂う匂いで、今日も夕方になったと気づく。

甘じょっぱい照り焼きのようなダックの丸焼き。鉄板で焼かれるニラ饅頭。ラーメンの湯気。油に混じるニンニクの香り。

カンボジアへ来るまで、「夜店」といえば年に数日だけ現れるものだった。

でも、ここでは違う。

午後三時ごろになると、昼食を終えてハンモックで休んでいた人たちが、ゆっくり起き出す。
軒先や歩道で炭に火を入れ、ワゴンを並べ、料理の準備を始める。

何もなかった歩道に、プラスチックの机と椅子が広げられる。
数十分後には、そこが立派な食堂になっている。

豚が一頭丸ごと焼かれている店もある。
鶏よりもダックの方がずっと多い。
香ばしい香りが通りいっぱいに広がり、仕事帰りの人たちを自然と引き寄せていく。

そもそも、こちらの店には壁も窓もないことが多い。
店の中と外の境目が曖昧で、街全体が大きな屋台のように見える。

リバーサイドを歩くたびに思う。
日本なら、この景色は「お祭り」だ。

カンボジアには、「夜店」という季節がない。
毎日が、「夜店から」始まる夕暮れがある。

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