バベルの塔? いやいやいまは 「ノンバーバルの灯籠」 かな、 たぶんね|||シン小説 No.010
争い合うバラバラは、いつの時代にも存在した。
項羽のあとに、劉邦が現れ、漢は、争いを畏れる秩序を手に入れた。
信長のあとに、家康が現れ、江戸は、互いを尊重する静けさを得た。
ヒットラーのあと、世界は米ソに分かれ、恐怖の均衡という名の冷戦に耐えた。
その均衡も、今は昔、世界は再びバラバラだ。
そして、魔王のような存在は、もう降臨しにくい構造になっている。
恐怖は分散し、正義は細分化され、魔王は、一人では立てなくなった。
それでも、人は争う。
バラバラのままに。
そこで、人々は灯籠を置いた。
そっと、足元を照らすために。
誰かを導くためではない。
夜を消すためでもない。
ただ、暴れないための小さな光。
だが、灯籠は増えすぎた。
光は集まり、業火のような燈になった。
灯籠は、燈籠になった。
籠は溶け、世界は焼き尽くされそうになった。
長い、つらい日々が続いた。
その炎のなかで、人々は思い出す。
争いは、誰の勝利でもないということを。
誰が始めたわけでもない。
誰が命じたわけでもない。
それぞれが、手を尽くした。
燈籠を、灯籠に戻すために。
完全に消すこともできた。
だが、誰もそれを選ばなかった。
暗闇に戻ることが、別の破滅を呼ぶことを、もう知っていたからだ。
灯りは残った。
小さく、低く、籠に守られて。
世界は救われなかった。
だが、焼け野原にもならなかった。
それで、よかった。
誰かが言った。
このままでは、また燈籠になってしまうのではないか。
あの灯籠も。
この灯籠も。
至るところにある。
そこで、私は尋ねた。
「また燃え上がらせたいのか」
少し間があって、答えが返ってきた。
「いや、それはない」
私は、さらに続けることもできた。
だが、しなかった。
その答えで、いまは十分だった。

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