こまったね、 熊がいる。|||シン小説 No.045
においは、昔から同じだった。
甘いものと、油のにおい。
乾いた木と、古い布のにおい。
そこには、誰もいなかった。
においだけは残っていた。
戸は閉じたままだった。
風が通るたび、わずかに動く。
中には、食べるものがあった。
固くなったもの。
乾いたもの。
形のまま残っているもの。
それで足りていた。
開けた場所があった。
同じものが、並んでいた。
土はやわらかく、掘り返されていた。
いくつかは、そのまま残っていた。
いくつかは、もうなかった。
細い道があった。
固く踏まれていて、歩きやすかった。
その先にも、においがあった。
同じにおいだった。
だから、進んだ。
道は続いていた。
途切れることはなかった。
木のあいだから、
硬いもののあいだへ変わっても、
道は道のままだった。
水もあった。
魚もいた。
においは、強くなっていった。
暗くならなかった。
目を細めても、消えなかった。
白い光が、続いていた。
ーーー
デカい。四角い。
たくさん並んでやがる。
まばゆい、
やたらとまばゆい。
なんだ、あいつらは。
たくさん、いやがる。
やたらと速く走りやがって。
においが途切れない。
どこまでも。
とんでもない破裂音が、聴こえた。
聴こえたはずだった。
もうなにも視えなくなり、
聴こえなくなった。
においは、もうなかった。
ーーー
ごめんよ。

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