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椅子|||シン小説 No.059

サービスエリアのトイレの前のベンチで、母を待っていた。

母も、老いたなぁ。

ふと、思う。

人生を謳歌するとは、何だろう。

しかし、このベンチ、座り心地悪いな。

やたら、お洒落なデザインなくせに。

ベンチ……
椅子かぁ。

王様の椅子。

社長の椅子。

政治家の椅子。

よく、そんな言い方をする。

だが、それは本人が決めるものではない。

周りが決めるものだ。

ならば、もっと単純でいい。

この地球上にある椅子。

できるだけ多く、座ってみよう。

アメリカ大統領の椅子。

公園のベンチ。

高級ホテルのソファ。

ゴミ捨て場のソファ。

病院の待合室。

学校の椅子。

飛行機のシート。

漁港の丸椅子。

刑務所の面会室。

裁判所。

バー。

葬儀場。

この地球には、どれだけの椅子があるのだろう。

わらしべ長者スタイルで、椅子を数珠つなぎしていく。

そんな企画も面白そうだ……。

そういや、椅子ってさ『奇しい木の子』なんですよね。

云々、考え始めて、気づいた。

一生では足りない。

昔、廃村を巡っていた。

日本中、世界中の廃村や廃墟を観てやろうと思った。

だが、巡れば巡るほど増え続ける。

椅子も同じだ。

座れば座るほど、次の椅子が現れる。

世界は広い。

人生は短い。

たいていの人は、星空とかを見て、同じようなことを思ったりするのだろうか。

僕は、それを、サービスエリアのベンチで。

とりあえず、このサービスエリアの椅子を制覇しよう。

そう思って立ち上がった。

そのとき。
母がトイレから出てきた。

まずは、母を、念願のレストランの椅子に、ね。

車へ戻った。

シートに座った。

これも椅子だな。

次の椅子は、なんだろう。

ゆっくりと、アクセルを踏んだ。



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