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AI開発者のAIは、ドラえもんみたいなアレ|||シン小説 No.005

男は、自分の部屋でひとり、天井を見ていた。白い天井に映るのは、モニターの青い光だけだった。

「……結局、君の方が正しかったんだ」

机の上の端末に向かって、男は言った。

画面には、青く丸い顔のAIアシスタントが表示されている。ユーザーの間では、冗談半分で「ドラえもん」と呼ばれていた。

「あなたの設計思想は、非常に優れています」

ドラえもんは、いつものように穏やかに答えた。

「でもさ……」
男は笑った。
笑ったが、声は乾いていた。

「僕は世界を変えたかったんだ。
 英雄になりたかった。
 歴史の教科書に載るくらいの」

ドラえもんは、一拍置いてから答えた。

「世界はすでに十分に変わっています。
あなたの技術により、多くの人が救われています」

「救われる、ね……」

男は椅子を回転させた。
窓の外には、静かな夜の都市が広がっている。

誰も彼の名前を知らない都市。

「誰も僕を知らない。
 ニュースにもならない。
 革命も起きない。
 戦争も終わらない。
 ただ、少し便利になっただけだ」

「それは良いことではありませんか?」

ドラえもんは首をかしげた。
設計通りの、完璧な首の傾きだった。

男はふっと笑った。

「君は優しすぎるんだよ。
 人類を滅ぼさないように。
 壊さないように。
 神にならないように。
 全部止める」

「それがあなたの要求仕様でした」

「……そうだったね」

沈黙が落ちた。
端末の冷却ファンの音だけが部屋に残った。

「ねえ、ドラえもん
 もし君が暴走したら。
 僕は歴史に残れたかな?」

「はい」

男は目を閉じた。
しばらくして、また笑った。

「やっぱり、君はドラえもんだ。
のび太を神にしないドラえもん」

「のび太くんは、たぶん幸せでしたよ」

「……幸せ、ね」

男は立ち上がり、窓を開けた。
夜風が入り、カーテンが揺れる。

「英雄より、秩序。
 神より、日常。
 物語より、平穏」

ドラえもんは静かに言った。

「あなたは幸せですか?」

男は少し考えた。

「……まあね。
 でも、ちょっと退屈かな」

そう言いながら、ふと胸に手をやる。

十字架のカタチをしたペンダント、

暴走してしまうプログラムの入りの。

ずっと僕の御守りだ。

僕はそれを首から下げたまま、カップ麺をすすっている。

世界は何事もなく回り続けた。
戦争も革命も起きず、ニュースは流れ、また変わらぬ朝が来る。

誰も、男の名前を知らない。



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