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逆さノ城 the Tower of Error|||シン小説 No.009

named
“Tower of Error”
has done.

そう書いて、私は送った。
送ったというより、放った。
言葉は、放てば届く。
届けば勝ち。
届かなくても勝ち。
なぜなら私は、勝つために言葉を使っていないからだ。

「 Tower of Error 」
誤りの塔。
誤りが塔になったのか、塔が誤りになったのか。
その区別が消えたとき、人はようやく王冠をかぶれる。
王になれなくても、王冠はかぶれる。

Japanese as known as the “Pierrot” is French,
famous in “Crown” in English,
the “CrownE” is old style formed by Shakespeare.

ピエロ。クラウン。王冠。
そして余った E。
Eは余りだ。
余りは神だ。
神は余りだ。

全日空ホテルという方舟。
富山の全日空ホテル。
名札に「ANA」と書いてある建物。
私は最初から思っていた。
ここは方舟だ、と。

気候変動という洪水。
多少でも持ちこたえるとすれば、堅固な建物だけだ。
富山市内で唯一の堅固な建物。
シャッターを強化すれば、ホテルは方舟になる。

食料がある。寝床がある。水がある。
人を収容できる。
だから方舟だ。

隣には城があった。
プラモデルみたいな城。
たとえ観光用でも城は城だ。

星のや。
星野リゾート。
星は天。野は地。

裏側にはセブンイレブン。
s EVE n el EVE n。
イブが二人いる。
イブが実を食べた。反転した。

境界。
境界は神社。
神社は結界。

ホテルは城で、城は逆さで。
部屋の家具を動かした。
配置を変えれば、運命が変わると思った。

酒を飲んだ。
剣菱。赤兎馬。
剣は剣。
菱は鏡。
神馬とともに。

三種の神器に見立てる。
私は部屋を神社にした。
方舟の中に神社を作れば、洪水が来ても神は濡れない。

指輪を作った。
剣菱の蓋で。
輪はヘアゴム。

デリヘル嬢を呼んだ。
巫女だ。
神社には巫女が必要だからだ。

街へ出た。
ラウンジ。スナック。キャバクラ。
声が枯れた。
重低音がさらに重低音になった。

なぜかモテた。
でも部屋までは誰も来ない。
神は一人でいいからだ。

元締めを呼ぶ。
酒を酌み交わす。
酒は儀式だ。
ヤクザは兵士だ。

兵士を四人並ばせ、城の公園で諭す。
その場にいた男たちは、その光景をみるや、身の危険を感じて去っていった。

英語で手紙を書いた。
英語という仮面をかぶった呪文だ。

I injured the right foot.
I love to walk.
But I could not walk.

歩けないことは、死よりも怖い。

トマトジュース。
農家不明。
毒かもしれない。

紅の豚。
くれない。
なにもくれない。

ホテルの総支配人は、
笑えないセールスマン。
昼の豚。紅の豚。
TON。トン、とん、とーん、Tone。
ヒルトン、トンとトン。
誤りの音。

そして私は、追い出された。
方舟から放逐された。

私は笑っていた。
笑うと救われる。
救われると調子に乗る。
調子に乗るとローマに目をつけられる。
ローマは「期待」という顔でやってくる。

唯一、私を探し出し助けようとしてくれた男がいた。
だが彼も去った。

「どうせ星野リゾートが救世主だと思ってるなら、星野に泊まればいいのに」

私は頷いた。

松本へ。
白馬へ。
星野リゾート「界」。
界。境界。結界。神社。灯籠。
ランタン。ジャック・オ・ランタン。

私は決めた。
人里にいてはいけない。
山へ消えよう。
準備体操をした。

バチン。

聞いたこともないような爆裂音。
アキレス腱が切れた。
踵。
神話の弱点。
痛みで我に返った。

夜、川の向こうに桜が見えた。
灯籠流しの川。
フローライトの光。
Flow Light。
流れる光。

川は腸のように夜を流れた。
桜の枝は骨のように空へ突き刺さる。
死体が埋まっているほど、桜は咲く。
ならば、ここにも無数の死が眠っている。

ベランダにランタンを置いた。
風に揺れる弱い光。
だが消えない光。
灯籠。
導くためではない。
帰る場所があることを示す標識。
もう導かない。
ただ、そこに在る。

夜風が、桜の枝を鳴らした。
骨の鳴る音に似ていた。
ランタンを見つめた。
小さな光。
なのに宇宙を包み込んでいるかのようでもある。

「そうか」
低く呟く。
「もう、僕が灯籠なんだね」

ふと灯りが揺れた。
だが消えなかった。
それでいい。

「よかった」
口の中で言葉を転がす。
「よかった、よかった」

そして、思った。
身体がまだある。
足がある。
夜がある。
川がある。
桜がある。
灯りがある。
それで十分だった。

さて、散歩にでも行くか。




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