大型犬のこと、実は全然わかってない
犬を預かる事業がしたい。いつかは大型犬も。
そう言っておいて申し訳ないのだが、わたしは大型犬のことを、ほとんど知らない。せめて今の解像度がどれくらい低いか、記録しておく。1年後に読み返して、頭を抱えたい。
## わたしの大型犬歴(ほぼ小学生)
子どものころ、祖父母の家に犬がいた。北海道犬と雑種で、20kg後半と15kg前後の計3匹がいた。ひと月ほど、その家で暮らしたことがある。
家は山の中にあって広く、ベランダも広かった。犬たちはそこでトイレを済ませていて、日常的な散歩は、していなかった。
そこへ小学生のわたしが現れ、良かれと思って散歩に連れ出した。当時は「散歩させている」と思っていた。実際は、リードを持ったまま、ただ引っぱられて走っていた。止まりたい場所で止まれた記憶が、ない。
小1の妹も引きずられた。転んで、引きずられながら、それでも両手でリードを握っていた。離さなかった。小1が、である。シュナがいま妹を「ボス」と崇めているのは、正しい人選だと思う。
## 噛まれるのは、いつも祖父だった
もうひとつ、覚えていることがある。祖父は北海道犬に、たびたび手を噛まれていた。数針縫うケガを、何度も。
でも、祖父以外に被害はなかった。わたしも、妹も、祖母も、一度もない。
子どものわたしは「おじいちゃんは犬に嫌われているんだな」で片付けていた。それ以上、何も考えなかった。
今は考える。あれは犬の性質だったのか、暮らしと関係の問題だったのか。散歩がなかったこと。ベランダで完結していた毎日。祖父とあの犬のあいだにあった、わたしには見えなかった何か。理由なく一人だけを噛み続けるものだろうか、と今は思う。
当時のわたしには、それを読む目がなかった。今もあるとは言えない。ここが一番こわい。
## シュナは大型犬が大好きである
一方、うちのシュナは大型犬が怖くない。むしろ好きだ。
パピーのころ、自分の20倍ほどあるジャイアントシュナウザーに優しくしてもらった経験がある。それが効いているのだと思う。おかげでドッグランでは体格差を考えず、「遊ぼ!」と突っ込んでいく。相手の顔がシュナの胴体より大きくても、いく。見ているこちらは、毎回ハラハラしている。
犬には恐怖がなく、飼い主には知識がない。この組み合わせで、大型犬を預かりたいと言っている。
## ハスキーに500ml飲み干された
決定的だったのは、ドッグランでの出来事だ。
シュナに水を飲ませていたら、シベリアンハスキーが寄ってきた。飲みたそうにしていたので、どうぞどうぞ、と注いだ。
飲む。飲む。まだ飲む。
200mlを超えたあたりで、わたしは注ぐ手を止めて、飼い主さんを探した。「あの、こんなに飲んで、大丈夫ですか?」
「大丈夫です!」
即答だった。結局、500mlのペットボトルを逆さにして、最後まで注いだ。
飼い主さんは終始にこやかだった。つまり、あれが日常なのだ。わたしの「え?!」は、あの人の「ふつう」だった。わたしの常識は、体重8kgの犬の常識でしかなかった。
水の量ですら、これである。呼吸も、体温も、疲れ方も、たぶん全部違う。
## 知らないことを、知らないまま始めない
水500mlで動揺している人間が、いきなり大型犬を預かれるとは思えない。
だから経験を積む。実務経験も、ボランティアも、必要なら大型犬のいる現場に入る。事業としても、最初は小〜中型犬に絞る可能性を、真面目に検討している。
できないことを、できると言わないこと。これが「もう一つの家」の最低条件だと思っている。
次にあのドッグランへ行くとき用には、リュックには1.5Lの水を入れていく。あのハスキーには、まだ会えていない。
