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Tyla 2ndアルバム『A*POP』、「アフリカ人らしさ」の基準は、はたして誰が決めるのか

2026年7月24日、南アフリカ出身のTylaタイラ)が2作目となるフルアルバム『A*POP』をリリースした。

このアルバムを「セカンドアルバム」の一言で片付けることはできない。デビュー作『TYLA』(2024年)が世界中のスターを客演に迎え、外へ外へと手を広げていく作品だったのに対し、『A*POP』はまったく逆の方向を選んでいるからだ。

客演としてクレジットされているのは、スウェーデンのZara Larssonザラ・ラーソン)ただ一人を例外として、あとはすべて南アフリカのアーティストで固めている。
「アフリカ的すぎない」「もっと海外向けにポリッシュすべきだ」と言われ続けてきたタイラが、ここで初めて自らのルーツに正面から向き合い、故郷の音楽仲間たちだけを呼び戻して作り上げた1枚、それが『A*POP』だ。


レーベル  : Epic Records, FAX Records
リリース日 : 2026年7月24日
名前    : Tyla
本名    :    Tyla Laura Seethal
年齢    : 24歳
出身地   :   南アフリカ


「アフリカ人らしくない」という声に、彼女は問いで返す

タイラのアマピアノは、ラジオ向けに整えられすぎている。そう評されることがあった。ログドラムのサウンドこそ残っているものの、本来の広がりやプロデューサーらしい大胆さが失われ、すべてが海外市場向けに作られているというのだ。

この指摘の根底には、さらに単純で辛辣な批判がある。「彼女はアフリカ人らしくない」というものだ。

タイラ自身、この言葉を何度も引き合いに出しており、率直に馬鹿げていると感じているという。そして彼女がこの批判に答えるとき、その答えはいつも問いの形を取る。

「その基準を決めるのは誰なの?」

この違和感こそが、『A*POP』全体の出発点になっている。

タイラはこう続ける。

「私は自分の生まれ育った場所と南アフリカ文化を本当に誇りに思っているわ。世界中の人に知ってもらいたいの」

アマピアノが背負う、南アフリカの記憶

Jorja SmithMajor Lazerといったアーティストも、すでにアマピアノを自身の楽曲に取り入れている。しかしタイラにとって、このサウンドは単なる流行のビートではない。南アフリカという国の歴史そのものを語る音だ。

そのルーツをたどると、アパルトヘイト終結後の1990年代、ネルソン・マンデラ大統領の時代にSowetoで生まれた「クワイト」というジャンルに行き着く。クワイトは、人々が手に入れたばかりの自由の喜びを表現するための音楽だった。

タイラはアマピアノの魅力についてこう説明している。

「アマピアノは南アフリカだけの特別な音楽よ。私たちは昔からハウス、ジャズ、クワイトを聴いてきた。特徴は力強いベースラインと『ログドラム』。木製ドラムの音をソフトウェアで再現したサウンドなんだけど、南アフリカでは誰もが大好きなのよ。街中、お店、公共交通機関、どこへ行っても流れているわ。そして、この文化を支えているのはDJたち。DJ MaphorisaのようなDJが音楽を作り、クラブでプレイしているの。Sha ShaやNasty Cなど、アマピアノのアーティストはみんな家族のような存在なのよ」

近年、アマピアノはパリをはじめ世界中のクラブシーンでも人気を集めている。この現象について、タイラは次のように語る。

「この音楽が世界へ広がって本当にうれしいわ。私たちは何年も前からこの音楽で踊ってきた。南アフリカ以外のアーティストが取り入れること自体は全然OKよ。ただ、そのルーツが南アフリカにあることを理解してくれたら、それで十分ね」

「人類のゆりかご」で、サルの声とともに

タイラは、南アフリカの「人類のゆりかご(Cradle of Humankind)」で開催されたソングライティング・キャンプでこのアルバムを完成させたことを明かしている。スタジオは、ブッシュ(原野)の中に屋外で設営されていたという。

「本当に茂みの中だったわ(笑)。このアルバムを作る中で、自分の子どもの頃の感覚ともう一度つながりたかったの。毎朝、サルの鳴き声で目覚めて、虫もいて、本当に自然そのものだったわ。それが、このアルバムを一周して原点へ戻してくれたの」

新アルバムについて、タイラはこうも語っている。

「1枚目のアルバムのときは、とても慌ただしくて、急ぎ足だったわ。まるで、ある日突然、一晩にして狂騒が訪れたような感じ。だから、今は状況が落ち着いて、自分の進むべき方向や、自分が何をしたいのか、何を伝えたいのかが以前よりよく分かっている気がする」

今作の制作は昨年から始まったが、当初は「どのようなサウンドにしたいのか分からなかった」という。それでも彼女はこう振り返る。

「アルバムを制作していく中で、自然と形になっていくと分かっていたし、実際にそうなったわ。本当に新鮮で、いかにもタイラらしいものが作れたと思うの」

全14曲、約44分。アルバムの輪郭

全14曲が収録された新アルバム『A*POP』の収録時間は約44分。客演には、スウェーデンのシンガーザラ・ラーソンのほか、南アフリカ出身のアーティストであるLiquideepMaWhooBabalwa Mが脇を固めている。

タイラは、新アルバムが自分の可能性を試し、新たな表現に挑戦した作品になったと明かしている。

「このアルバムを作る中で、自分自身もすごく成長できたと思うわ。昔からやってみたかったことは全部試したかった。ソングライターやプロデューサーだけじゃなく、自分の声でも遊んでみたかった。自分に何ができるのかをもっと知りたかったし、今までやったことのない作品を作りたかったの」

珠玉の注目楽曲

『KISS』

Dua LipaやSabrina Carpenterのプロデューサーとして知られるIan Kirkpatrick、そしてWizkidやBurna Boyのプロデューサーとして知られるP2Jが共同プロデュースを手がけた楽曲。アフロハウス調のダンサブルなビートが印象的だ。

恋人とのキスや触れ合いを通じて、お互いの強い愛情や心のつながりを感じ、その幸せな瞬間を歌ったラブソング。

『IS IT』

2025年7月に先行シングルとしてリリースされたこの曲は、UKアフロビーツチャートで1位を獲得したほか、多くの批評家から「2025年の夏のヒットソング」と評された。相手に強く惹かれながらも、それが本気の恋なのか一時的な欲望なのか自分でも答えが出せず葛藤し、それでも相手ともっと親密になりたいという気持ちを歌っている。

『SHE DID IT AGAIN feat. Zara Larsson』

2026年4月に先行シングルとしてリリースされたこの曲について、タイラは「ザラ・ラーソンとコラボすることで、この曲はよりポップな方向へ広がったけれど、自分が表現したかった雰囲気は失われなかった」と明かしている。

自分の魅力に夢中になっていく相手を分かっていながら、その危険な駆け引きを楽しむ。「一度惹かれたら簡単には忘れられない」という自信を歌った楽曲だ。

『CHANEL』

2025年10月に先行シングルとしてリリースされたこの曲は、「愛しているなら、その言葉だけでなく、それに見合う特別な扱いをしてほしい」というメッセージを、ラグジュアリーの象徴である「シャネル」を通して表現している。

商業的にも世界各国でヒットを記録し、Billboard Global 200では11位、Billboard Hot 100では43位まで上昇。さらにTikTokでも1,680万本以上の動画で使用されるなど、「Water」や「Push 2 Start」に続く代表曲となり、タイラが世界的なポップスターとしての地位をさらに確立するきっかけとなった楽曲である。

おわりに

外野からの声や商業的な期待に迎合するのではなく、あえて母国の原野へと身を置き、自らのルーツと真っ直ぐに向き合った『A*POP』。一時の狂騒を抜け出し、アーティストとして圧倒的な進化を遂げたタイラは、このアルバムを通して「アフリカ人らしさの基準」を他人にゆだねる必要などないことを証明してみせた。

世界を魅了するポップスターでありながら、南アフリカの風と誇りをその歌声に宿し続ける彼女の物語は、いま、本当の意味で幕を開けたばかりである。

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