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揺れる高市外交――印象ではなく、為替・金融レジームを設計せよ――ロシア外交は“活路”たりうるか

ロイター外電は見出しは、なかなかエグい評価

ロイターの記者は、鬼原民幸, 竹本能文 両氏連名と出ているが、高市政権の為替・金融対応については、比較的シビアなトーンの記事が続いている。特に、為替・金利に対する政策対応が見えない、いわば「アンカー不在」の状態だという印象を受ける。高市首相としては、まず補正予算で姿勢を示す腹づもりなのだろうが、市場はそれを待てない。


片山財務相がタブレットで長期金利チャートを首相に見せ、「さすがにヤバいですよ」と警戒を共有したが、片山財務相・木原官房長官の「口先介入」は市場に完全スルーされている。市場の視線はすでに12月の日銀会合の利上げがあるかどうかに集中している。

「責任ある積極財政」と言いつつ、円安・債券安のリスクを後追いで見ている政権――政府の発信は「放漫財政ではない」と繰り返すが、マーケットはそれを信じていない(=スプレッドと為替が答え)

Jamie McGeever の円コラムも同じトーンで、「拡張財政+超低金利維持志向が、円の“安全通貨”としての条件を自ら壊している」として、高市政権の政策に極めて批判的だ。

「じゃあ、日銀とのアコードをどう設計すべきか」「財務省は何をコミットすべきか」いった政治側が取り得る具体策には踏み込んでおらず、そこが「対処不足」に見えるのかもしれない。

外交での“愛想”が経済悪化の要因になっている、という苛立ち

高市の「台湾有事=存立危機事態」答弁を受けて、中国側は、
・旅行・留学の自粛呼びかけ
・水産物輸入再開の棚上げ継続
・文化交流のキャンセル(北京–東京フォーラム延期・公演中止など)
・国連で「日本に常任理事国入りの資格なし」と公式発言

日本側は
・木原官房長官が「事実に反する中国の主張にはしっかり反論・発信していく」と明言

「対中では、愛想よく笑いながらも、実際にはワシントン寄りの抑止論を前面に出した強硬答弁をして、中国の“制裁カード”だけ増やした」という構図で、高市発言と中国側の対抗措置を描く報道が、主要メディアでほぼ共通している。

その一方で、為替・金利には愛想のかけらも見せず、後手に回っている。

「海外発信を強化します」が、なぜ逆効果っぽく見えるのか

木原が25日の会見で言ったのは、

  • 「事実に反する中国側の主張は受け入れられない」

  • 「政府として反論・発信していく必要がある」

  • 「日中双方の努力で課題・懸案を増やし、理解と協力を増やしていく方針に変わりはない」

つまり、

  • 対中の“情報戦”では、発信を強化する

  • しかし、為替・金融については、依然として“注視+必要な対応”以上の言葉が出てこない

この非対称性が、投資家から見ると、

「政治的には対中のイメージ戦には全力、 しかし足元の日本国債と円には、レトリック以外ほとんど手を入れていない」

という風に映りかねない。

高市外交は印象外交で実務がない

ロイターやBloombergが、
・「高市政権の大型財政で円はさらに弱くなった」
・「高市政権の政策には円にとってプラス要因がない」
という記事を世界に流している状況で、
・「海外発信を強化します」

だけが切り取られて海外に伝われば、「為替と金融はどうするのか」という問いへの“すり替え”に見えて、むしろPR偏重の印象を強める。

「高市外交の危険性」でも述べた通りで、現時点で見えている高市外交には、実務レベルの設計図や「どこで落とし所を作るのか」という構想が見えにくい。過去の政党政治の中で、政局を作り出したり、駆け引きを通じて落とし所を探るというタイプの政治家ではなかったのかもしれない。首相就任後も、いわゆる“夜の会食政治”をほとんど行わないことは特徴だが、それが結果として、各界の知見や「水面下での妥協案」を引き出しにくくしている可能性はある。

いま必要なのは、「発信」ではなく最小限の“レジーム宣言”

少なくとも、世界の目を少しでもマシな方向に戻すには、
高市政権側から、次のような“最小限のアコード的シグナル”が必要だ。

  1. 金利と為替の「許容レンジ」の暗黙合意

    • 具体的な数字までは言わなくても、「長期金利上昇を全否定しない」「実質金利をマイナス無限大にはしない」「○○会合までに現行政策を点検する」といった枠組みの明示。

  2. 財務省・日銀との役割分担の“絵”

    • たとえば:

      • 為替の急変には財務省が為替介入で対応

      • しかし、構造的な円安には日銀の緩やかな利上げ容認で対応

      • その代わり、財政は中期的な国債発行枠の上限を明示し、プライマリーバランス目標の修正版でもよいので“ナンバー”をひとつ出す。

  3. 外交リスクと経済リスクを同じフレームで語ること

    • 対中関係の悪化が、

      • 観光

      • 貿易

      • サプライチェーン
        にどう影響しうるのかを正面から認めた上で、「だからこそ、エネルギー・食料・レアアースの多角化と、円の信認確保が一体パッケージだ」と説明する。

要するに今の高市政権は、

外交:言い過ぎて火をつけたあと、「発信を強化します」と言っている

金融:火がついているのに、「注視します」「責任ある積極財政です」としか言っていない

という“逆バランス”になっているので、鬼原・竹本のような記事は、国内的にはかなり妥当、そしてそれがグローバルに拡散すると、日本の「“印象優先でレジーム不在”の首相」のイメージが固着してしまう、という構図だと思います。(高市首相自身だけに責任があるとは言えないものの、結果責任として考えると)


世界覇権の多極化を前提にすると、ロシア外交し「主要な選択肢の一つ」として再構成せざるを得ない。

11月25日のトランプ大統領との電話会談では、「余計な事をするな」と米中交渉を踏まえたメッセージだった可能性もある。そうなると米中の“板挟み”に陥れば、日本の国防も、従来のような対米依存一本槍では維持しにくくなり、かといって中国との経済関係も思い切って拡大できない——そんな中途半端な状態に追い込まれかねない。

かたや、ウクライナ和平は、米国とウクライナの和平交渉に、ロシアが合意すれば米露協調 vs 欧州の構図がハッキリしてしまう。日本の国防を考えれば欧州との関係は維持しながらも、米国の立場に立たざるを得なくなるのは必定である。

その上、英国などによるロシアLNG向け保険・金融制限の強化に加え、米国の一般ライセンスが12月19日に期限を迎えることで、サハリン2由来のLNG調達が制裁スキームの影響を強く受けるリスクが高まっている。

欧州や英国の力を借りれなくなる近い将来と、米露が接近して米・露・欧州・イスラエル・インド・中国と地域覇権国家による多極構造が鮮明になりつつある中で、中国の地域覇権を牽制する意味でも、エネルギー安全保障の観点からも、ロシアとの関係を見直すことも主要な選択肢の一つ、無視できない軸だとも言える。

高市首相はロシアへの入国禁止措置を出されているものの、首相就任後のロシア外務省の期待感と歓迎ムードが示されている。表立った外交は、中国や欧州を刺激しかねないだろうから、裏ルートでのロシア接近を急速に図るべきであろう。北朝鮮・韓国も含めた中国の裏庭の安全保障環境を改善することが、米国の中台への如何なる対応が起こる場合にも、日本にとって有益と考えられる。

高市首相は意外に頑固なのか?

高市氏の政策や取組内容は、一貫性を持つ意味ではよいが、環境変化に耐えうるものではない。例えばインド・太平洋構想についても、約10年前に安倍総理が提唱したものだが、その後の菅・岸田・石破政権でその積み上げがなされているのか?仮になされていても、インドの対露・対米政策の変化や北朝鮮のロシア接近、など10年前とは国際環境は変化しているのである。

ウクライナ戦争についても、米国や欧州の対応や方針も変介しているのに、従来通りのスタンスで「ウクライナ支援」などと、有志連合に、明確な設計思想を示さないまま顔を出し続ければ、米側から水面下で「余計なことはするな」と牽制されていてもおかしくない。実際、25日のトランプ大統領との電話会談の詳細は公表されていないが、米中・米露との力学を踏まえれば、日本に求められているのは“追随”以上でも“独自行動”未満という微妙な線だろう。

ロシア外交についていえば、高市が前面に出る必要はないのだから、パイプを持つ政治家や、一案として民間人である安倍昭恵夫人、優秀な官僚を頼って、裏ルートの構築と、天然ガス供給をまず継続できることを目標に取り組むことくらい出来ないのだろうか。

こうした振る舞いを見るかぎり、高市首相の一貫性は、美徳であると同時に、環境変化に応じて戦略を微修正していく柔軟性──言い換えれば“頑固さを緩める力”──を欠いているようにも見える。

致命傷は高市内閣の布陣

総理官邸は、警察庁、防衛省・自衛隊、外務省の安全保障畑の官僚が色濃く中心を占めており、金融市場や経済外交の目線を前面に立てて動ける陣容は、少なくとも外からはあまり見えてこない。金融市場への適切なアプローチや、変化する国際環境に応じて外交と経済政策を組み替えられる環境づくりも、本来は必要なはずだろう。

首相就任や組閣において志したものとは異なろうが、日本国民と国益の為に働く内閣であれば、その政策パッケージが一枚しかないというような、愚かな事態にだけは陥ってほしくない。


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