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ショートショート アメリカの終焉


2047年。
ニューヨーク大学の物理学科は、もはや授業が成立しなかった。
教員の八割が、十年前にカナダへ去っていた。インド人、中国人、韓国人、ナイジェリア人。ビザが下りなくなった年から、優秀な順に出ていった。
残ったのは、「本物のアメリカ人」だけだった。
ホワイトハウスの報道官が胸を張って言った。
「我が国は、アメリカ人のためのアメリカを取り戻した」
記者が手を挙げた。
「シリコンバレーのAI開発ランキング、今年は何位ですか」
「……そのような指標に意味はない」
「宇宙開発予算は」
「……優先課題を精査している」
「GDP成長率は」
報道官はマイクを置いた。
テキサスの小さな教会で、牧師が説教をしていた。
「神はアメリカを選んだ。アメリカは特別だ。異教徒と混血が、この国を汚してきた。我々が正しく、彼らが間違っている」
信者たちは頷いた。
教会の外では、インフラ工事が三年止まっていた。入札できる技術者がいなかった。
移民が来なくなって以来、工事現場は人手不足が続いていた。
デトロイトの路地で、黒人の青年が警官に止められた。
「身分証を出せ」
「昨日も出しました。一週間前も」
「黙れ。これが手続きだ」
青年は弁護士になるための勉強を、夜間にしていた。奨学金は五年前に打ち切られた。
それでも勉強していた。
どこかに、まともな国があると信じていた。
ワシントンのシンクタンクが、極秘レポートをまとめた。
「このままでは、2060年までに、科学技術・金融・文化の各分野において、アメリカの国際的優位性は消滅する」
レポートは、ロビイストによって握り潰された。
福音派の団体が、別のレポートを出した。
「神はアメリカを見捨てない」
こちらは広く読まれた。
2048年。
ノーベル賞の発表があった。
物理学賞、化学賞、医学賞。
受賞者の国籍を、アメリカのニュースキャスターが読み上げた。
カナダ。カナダ。ドイツ。
元アメリカ在住者、とカッコ書きで添えられていた。
「偉大なアメリカを取り戻した」と、誰かが今日もSNSに書いた。
千二百万件のいいねがついた。
空のシリコンバレーのオフィスビルに、夕陽が当たっていた。
割れたガラスが、きれいに光っていた。

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岩鷹サケスキーAI共作小説家 よろしければ応援お願いします!いただきましたチップは有意義に使わせていただきます。