常駐が必要なはずの民泊が無人運営?東京都の区別ルールと確認方法
「近所の民泊で、管理者らしい人を一度も見たことがない」
「夜中に騒音が起きても、誰も対応に来ない」
「問い合わせ先へ電話しても、海外のコールセンターにつながるだけ」
民泊の近隣住民から、こうした相談が寄せられることがあります。
実はスタッフ常駐必須の地域でも無人で運営をしている施設もあるんです。
ただし、施設に人がいないからといって、直ちに違法とは限りません。
「民泊」と呼ばれる施設には複数の営業制度があり、東京都内でも、区によって管理者の常駐義務や駆け付け要件が異なるからです。問題は無人であること自体ではなく、その施設に適用されるルールに従った管理体制が、本当に機能しているかどうかです。
「民泊」は一つの制度ではない
一般に民泊と呼ばれる施設は、主に次の制度で運営されています。
1.住宅宿泊事業法に基づく民泊
いわゆる「民泊新法」です。年間の営業日数は原則180日以内。家主が施設内に住んでいない場合などには、原則として住宅宿泊管理業者へ管理を委託します。
ただし、管理者が必ず施設内に24時間常駐するという意味ではありません。電話対応や現場への駆け付けなど、法令や自治体のルールに従った管理体制を整えることが求められます。
2.旅館業法に基づく簡易宿所・旅館・ホテル
年間180日という制限がなく、営業許可を取得すれば通年営業が可能です。一方で、玄関帳場に代わる設備、宿泊者の本人確認、緊急時の対応体制など、自治体の条例や審査基準に適合する必要があります。施設内への従業者の常駐を求める区もあります。
3.特区民泊
東京都内では大田区で実施されている制度です。通常の住宅宿泊事業とは異なる要件があり、大田区独自のガイドラインにも従う必要があります。
つまり、外から見ただけでは、その施設がどの制度で営業しているのか分かりません。「無人だから違法」と判断する前に、営業形態を確認する必要があります。
東京都内でも管理ルールは区によって違う
東京都23区内では、地域の住環境や民泊の増加状況に応じて、独自の規制が設けられています。
新宿区
新宿区の旅館業に関する審査基準では、営業従事者が宿泊者の利用場所まで、おおむね10分以内に到着できる体制を確保することが示されています。
また、新宿区が2026年2月に公表した資料では、同年1月15日時点の住宅宿泊事業の届出住宅数が3,620件で、全国最多とされています。区は家主不在型民泊について「管理が不十分な施設が多い」という課題も公表し、悪質な事業者には処分を視野に対応する方針を示しています。
施設内に人が見当たらなくても、直ちに違反とは限りません。しかし、苦情を伝えても対応がなく、現場にも誰も来ない状態なら、届け出られた管理体制が実際に機能しているのか確認する余地があります。
中央区
中央区では、旅館業施設における従業者の常駐が条例で義務付けられています。一方、住宅宿泊事業については、トラブルや苦情が発生したときに速やかに駆け付けられる体制などが求められています。
同じ「民泊のような施設」に見えても、旅館業の許可施設なのか、住宅宿泊事業の届出施設なのかによって、確認すべきルールが変わります。
墨田区
墨田区では、2026年4月1日から民泊対策を強化しています。同日以降に許可申請された旅館業施設には、営業施設内などへの従事者の常駐を義務化しました。
また、同日以降に受理された住宅宿泊事業については、管理者が常駐する場合などを除き、原則として日曜日の正午から金曜日の正午まで営業できません。同じ墨田区内でも、申請・届出の時期や管理者の常駐状況によって適用条件が異なります。
大田区
大田区では、住宅宿泊事業、旅館業、特区民泊という複数の制度が運用されています。2026年4月から強化された基準では、対象となる施設について、徒歩でおおむね10分以内に駆け付けられる体制や、複数の担当者を設定することなどが求められています。
大田区では「人が施設内に常にいるか」だけでなく、24時間の連絡と現場対応が実効性のある状態になっているかが重要になります。
なぜ「管理者がいるはずなのに誰も来ない」のか
管理業務が何重にも外注されている
施設所有者、運営会社、住宅宿泊管理業者、清掃会社、夜間コールセンターがすべて別会社というケースがあります。住民から苦情が入っても、コールセンターから運営会社、管理担当者、宿泊者へと伝達され、現場対応が遅れることがあります。
電話に出る人が、現場へ行ける人とは限りません。
「電話対応」を「現場対応」として扱っている
宿泊者へメッセージを送っただけで、対応済みとして処理される場合があります。しかし、深夜の騒音、路上喫煙、ごみの放置、共用部分への侵入などは、メッセージだけでは改善しないことがあります。
届出上の体制と実態が変わっている
営業開始時には近隣の管理拠点や担当者が存在していても、その後の人員削減、管理会社の変更、事業者との契約終了などにより、実際には迅速な対応ができなくなっている可能性もあります。書類上では体制が整っていても、現在その体制が維持されているかは別の問題です。
元・民泊運営側から見た無人運営の実態
私は以前、民泊運営代行会社で、行政への申請・届出、予約管理、ゲスト対応、近隣クレーム対応などに携わっていました。
現場で感じたのは、運営会社が「緊急連絡先を設けていること」と、住民が必要とする「実際の現地対応」が同じではないということです。
夜間や休日は、まず電話やメッセージで宿泊者へ注意し、それでも改善しない場合に現地担当へ連絡する運用になりやすい。しかし、担当者が複数施設を受け持っていたり、遠方にいたりすれば、すぐに動けるとは限りません。
運営側では一件の問い合わせとして処理されても、住民側では、眠れない夜や、何度伝えても繰り返される生活被害です。この認識差が放置されると、「連絡先はあるのに誰も助けに来ない」という状態が生まれます。
だからこそ、施設に人がいるかだけではなく、問題発生後に誰が、何分で、どのような対応をしたかを記録する必要があります。
住民が記録すべき9項目
近隣の民泊に疑問を感じた場合、次の内容を記録してください。
問題が発生した日時
騒音、ごみ、喫煙、侵入などの具体的状況
施設に掲示されている標識や届出番号
緊急連絡先へ電話した時刻
相手が電話に出た時刻
現場へ担当者が来たか
対応までにかかった時間
同じ問題が再発した日時
運営会社から受けた回答
大切なのは「管理者を見たことがない」という印象だけで終わらせないことです。
「午前0時15分に騒音が発生し、0時20分に連絡したが、午前1時を過ぎても現場対応がなかった」というように、行政が確認できる事実へ変換します。
無人だから違法なのではない。管理が機能していないことが問題
民泊は、無人運営そのものが一律に禁止されているわけではありません。しかし、無人運営が認められる施設であっても、苦情への迅速な対応、宿泊者の本人確認、緊急時の駆け付け、近隣住民への連絡先の明示など、守るべき条件があります。
さらに、東京都内では区によってルールが異なり、同じ区内でも営業制度や申請時期によって条件が変わることがあります。
「民泊だから仕方がない」「管理者がいないように見えるから違法だ」のどちらかに決めつけず、その施設に適用される制度と、実際の管理状況を分けて確認することが重要です。
DENGOOONについて
DENGOOONは、民泊による騒音、ごみ、路上喫煙、無断侵入などに悩む近隣住民に代わり、運営会社や関係窓口へ状況を伝えるサービスです。
単に感情的な苦情を伝えるのではなく、発生日時、継続状況、連絡履歴などを整理し、相手が確認できる形にして伝えます。
「どこへ連絡すればいいか分からない」「運営会社へ伝えても改善されない」「行政へ相談するための記録を整理したい」。そのような場合は、DENGOOONへご相談ください。
※この記事は2026年7月23日時点の自治体公開情報を基に作成しています。個別施設の適法性は、営業形態、所在地、許可・届出内容、申請時期などによって異なります。
