平日営業が禁止された地域の民泊実態
知っていますか?
民泊は、全国どこでも同じ曜日に営業できるわけではありません。
住宅宿泊事業法に基づく民泊は年間180日以内という全国共通の上限に加えて、自治体が条例によって営業できる区域や期間をさらに制限できます。
地域によっては、月曜日の正午から金曜日の正午まで、住宅宿泊事業として宿泊者を泊めてはいけないというルールがあります。
例えば東京都江東区では、区内全域について、月曜日の正午から金曜日の正午まで住宅宿泊事業を行えません。祝日に関する例外はありますが、原則として営業できるのは週末を中心とした限られた時間です。
つまり、江東区の住宅宿泊事業法に基づく民泊であれば、基本的には次のような営業になります。
金曜日の正午から宿泊可能
日曜日は営業可能
月曜日の正午までに宿泊を終了
月曜日の正午から金曜日の正午までは営業不可

つまり週の過半数は営業できないという事業者にとってかなり厳しめな規制となっています。
しかし、実際にはそうではありません。
平日にも宿泊者らしき人が出入りしている施設が存在することです。
この記事では、元・民泊運営代行会社社員として、申請、予約管理、ゲスト対応、近隣クレーム対応に携わった経験から、平日営業が制限された地域で起きる「規制の闇」を解説します。
目次
1.そもそも、なぜ平日の民泊営業が制限されているのか
住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法では、一定の条件を満たして届出を行えば、住宅を使って宿泊事業を営めます。
ただし、住宅宿泊事業はホテルや旅館とは異なり、あくまでも「住宅」を使う制度です。
そのため、民泊施設が住宅街に存在することも珍しくありません。
住宅街で民泊が増えると、近隣では次のような問題が起こる可能性があります。
深夜や早朝の騒音
スーツケースを引く音
ゴミ出しルールの違反
路上喫煙
共用部での滞留
不特定多数の人の出入り
オートロックや共用設備の誤使用
近隣住民からの苦情に対応する人がいない
そこで自治体は、生活環境への悪影響を防ぐ必要がある場合、条例によって営業期間を制限できます。
例えば江東区では区内全域を制限区域とし、原則として月曜日の正午から金曜日の正午まで住宅宿泊事業を行えないルールを設けています。
つまり、単に「年間180日以内なら自由に営業できる」という制度ではありません。
180日以内であることとに加えて、その地域で営業可能な曜日を制限する上乗せ条例があるのです。
2.すべての「民泊」が平日営業禁止とは限らない
平日に旅行者らしき人が泊まっているからといって、その施設が直ちに違法とは限りません。
一般に「民泊」と呼ばれている宿泊施設には、複数の制度があります。
主なものは次の3つです。
住宅宿泊事業法に基づく民泊
届出によって営業する、いわゆる民泊新法の施設です。
年間営業日数は180日以内で、自治体条例による曜日・区域・期間の制限を受ける場合があります。
旅館業法に基づく簡易宿所
保健所などから旅館業の許可を受けて営業する施設です。
住宅宿泊事業法の180日制限ではなく、旅館業法に基づいて運営されます。
そのため、同じ地域にあっても、住宅宿泊事業に対する曜日制限がそのまま適用されるとは限りません。
国家戦略特区法に基づく特区民泊
対象地域で認定を受けて運営する方式です。
制度や宿泊日数の条件が、住宅宿泊事業法とは異なります。
国の民泊制度ポータルでも、旅館業、特区民泊、住宅宿泊事業では、許認可方法や営業日数、条例による制限が異なると整理されています。
したがって、最初に確認すべきなのは、
「平日に人が泊まっているか」
だけではありません。
確認すべきなのは、
その施設が、どの制度で営業しているのか
です。
ここを飛ばして「平日に宿泊者がいるから違法だ」と断定すると、適法な旅館業施設まで誤って非難する可能性があります。
3.平日に宿泊者がいるとき、運営側はどう説明するのか
平日営業が制限された地域でも、外から見れば宿泊者のように見える人が施設へ出入りしていることがあります。
例えば、
スーツケースを持った複数人が入室する
数日間、同じ人物が宿泊している
清掃スタッフが定期的に出入りする
予約サイト上では平日も予約できるように見える
夜間に旅行者らしき人物が戻ってくる
翌朝、荷物を持って退出する
といった状況です。
近隣住民からすれば、通常の宿泊客に見えます。
しかし、行政から確認を受けた際、事業者が必ずしも「平日に有料で宿泊させました」と認めるわけではありません。
そういった場合、指摘を免れるために
「宿泊客ではありません」
「知人です」
「友人を無償で泊めています」
「オーナーの関係者です」
「清掃や点検のために滞在しています」
と説明する業者がいます。
問題は、この説明が事実かどうかを、外形だけで判断するのが難しいことです。
4.「友人を泊めている」という説明
住宅宿泊事業は、宿泊料を受けて人を宿泊させる事業です。住宅宿泊事業法上の「住宅宿泊事業」は、宿泊料を受けて届出住宅に人を宿泊させる行為として定義されています。
したがって、本当に家主や関係者の友人を無償で泊めているだけなら、それだけで直ちに住宅宿泊事業の違反になるとは限りません。
ここに、確認の難しさがあります。
運営側が、
「予約客ではなく、友人です」
と説明した場合、行政が違反を確認するには、その人物が実際には予約サイトなどを通じて宿泊料を支払った利用客であることを確認しなければなりませんがそれも偽装することができてしまいます。
本当の友人なのか
予約サイトから来た宿泊者なのか
現金や別の方法で料金を支払っているのか
別施設の予約として処理されているのか
までは分かりません。
スーツケースを持っている。
外国語を話している。
鍵の取り方が分からず困っている。
それだけでは、有料宿泊者だったと断定する証拠にはなりません。
逆に言えば、悪質な運営が疑われる場合でも、
「友人です」という説明によって、書類上は営業ではないように見せられる余地が生まれます。
ここが、制度上の営業制限と、実際の現場確認との間に生まれる隙間です。
5.なぜ行政はすぐ違反と判断できないのか
近隣住民からすると、
「毎週平日に旅行者が泊まっているのだから、見れば分かるだろう」
と思うかもしれません。
しかし、行政が事業者へ指導や処分を行うには、一定の事実確認が必要です。
単に人が出入りしているだけでは、次の可能性を排除できません。
所有者本人が利用している
賃借人が居住している
親族や友人を無償で泊めている
清掃、修繕、点検作業をしている
旅館業法の許可を得て営業している
別の適法な制度で営業している
実際には宿泊ではなく短時間の立入りである
また、自治体が確認した日に宿泊者がいなければ、現場だけで継続的な営業実態を把握するのは容易ではありません。
運営会社やオーナーへ問い合わせても、
「予約は入っていません」
「宿泊者ではありません」
「関係者が利用しただけです」
と回答されることがあります。
さらに、予約履歴、決済記録、宿泊者名簿、予約サイトの管理画面などは、通常、近隣住民が確認できるものではありません。
そのため、行政へ単発で、
「昨日、外国人がいました」
と伝えるだけでは、営業違反の確認まで進みにくい場合があります。
必要なのは、一度の印象ではなく、継続性を示す記録です。
6.確認すべきポイント
平日営業が疑われる場合、最初から「違法だ」と断定する必要はありません。まずは、客観的に確認できる情報を整理します。
① どの制度で営業している施設か
玄関や建物周辺に、標識や許可情報が掲示されていないか確認します。
確認したいのは、次の情報です。
住宅宿泊事業の届出番号
旅館業の許可番号
特区民泊の認定番号
施設名
運営者または管理業者の連絡先
苦情受付先
ただし、標識が見当たらないからといって、直ちに無許可営業と断定するのは避けるべきです。
設置場所が分かりにくい、建物内部にある、別の営業許可で運営しているなどの可能性があります。
② 出入りが起きた日時
平日営業の疑いを伝えるうえでは、「平日に人がいた」では情報が粗すぎます。最低限、以下を記録しておくと行政に伝えるときにスムーズになります。
日付
入室した時刻
退出した時刻
曜日
人数
荷物の有無
翌朝まで滞在したか
同様の出来事が過去にもあったか
住宅宿泊事業における1日の区切りは、正午から翌日の正午です。
したがって、単純に午前0時で日付を区切るのではなく、正午を基準に記録する視点も必要です。
③ 一度だけか、繰り返されているか
一度の滞在だけでは、友人や関係者である可能性があります。
しかし、
毎週のように別人が入れ替わる
週ごとにスーツケースを持った人が来る
平日に清掃と宿泊者の入れ替わりが発生する
同じチェックイン手順を複数の人物が行う
予約サイト上のレビューが平日を含む日程で継続的に投稿される
といった状況があれば、営業実態を確認する材料になります。
重要なのは、国籍や外見ではありません。
不特定多数の人が、反復継続して宿泊利用しているように見えるかです。
その場合は友人と誤魔化し違法営業している可能性が高いです。
④ 予約サイト上の掲載状況
Airbnbなどの予約サイトに施設が掲載されている場合は、公開情報の範囲で次を確認します。
平日の日程を選択できるか
最低宿泊日数
チェックイン可能日
施設の登録番号
掲載住所や周辺地図
レビューの投稿日と宿泊時期
同じ室内写真を使った別ページがないか
ただし、カレンダー上で日付を選択できるだけでは、予約が成立した証拠にはなりません。
予約サイトの仕様や設定によって、実際には予約できない場合もあります。
スクリーンショットを保存する場合は、取得日時も分かるように残します。
7.証拠を集める際の注意点
民泊問題で被害を受けていると、どうしても「証拠を取らなければ」と考えます。しかし、住民自身が無理な調査を行うのは避けてください。
行ってはいけないこと
敷地内や室内へ無断で入る
宿泊者を執拗に追跡する
顔を至近距離から撮影する
宿泊者へ直接詰め寄る
郵便物やゴミ袋の中身を勝手に確認する
鍵や暗証番号を操作する
SNSで施設名や人物を違法と断定して公開する
目的は、相手を追い詰めることではありません。
行政や運営事業者が確認できる材料を、適法かつ安全な範囲で残すことです。
残しやすい記録
自宅や公道から確認できた出入りの日時
騒音が発生した時刻と継続時間
共用部分や公道に放置されたゴミ
玄関に掲示された標識
公開されている予約サイトの掲載情報
運営会社とのメールや通話履歴
行政へ相談した日時と回答内容
特に、同じ形式で記録を続けることが重要です。
8.平日営業が疑われる場合の相談先
施設の制度や所在地によって窓口は異なります。
基本的には、所在地を管轄する自治体の民泊担当部署や保健所へ相談します。
観光庁の民泊制度ポータルでは、各自治体の窓口や条例の制定状況を確認できます。江東区の住宅宿泊事業については、区の担当部署が届出や監督を行っています。
相談する際は、次のように伝えると整理されやすくなります。
江東区内にある住宅宿泊事業と思われる施設について相談です。
月曜日正午から金曜日正午までの制限時間帯に、宿泊利用と思われる出入りが複数回確認されています。
施設の営業形態と届出状況を確認していただきたいです。
確認した日時、人数、滞在状況、公開されている掲載情報を記録しています。
「絶対に違法です」と断定する必要はありません。
むしろ、
違反を決めつけるのではなく、確認してほしい事実を具体的に伝える
方が、行政も扱いやすくなります。
騒音、暴力、侵入、器物損壊など、現に危険や犯罪行為が発生している場合は、民泊担当部署の回答を待たず、状況に応じて警察へ連絡してください。
9.感情ではなく、運営実態を記録する
平日営業を制限する条例があっても、そのルールが現場で守られているかどうかは、近隣住民からは見えにくいことがあります。
施設の外から分かるのは、人の出入りや騒音、ゴミ、予約サイトの公開情報などに限られます。
一方、運営側は、
友人を泊めていただけ
関係者が滞在した
無償なので営業ではない
清掃や点検のために入室した
住宅宿泊事業ではなく旅館業で営業している
など、複数の説明ができます。
その説明が事実であれば、問題ではありません。
しかし、説明と運営実態が異なっているなら、近隣住民が継続的に記録した情報が、行政による確認の入口になります。
平日に人がいたことだけでは、違法とは断定できません。
しかし、平日に不特定多数の宿泊利用が繰り返されているなら、確認を求める理由にはなります。
民泊問題で重要なのは、怒りの強さではありません。
どの制度の施設か
いつ営業していた可能性があるか
どのような人の出入りがあったか
何回繰り返されているか
どの公開情報と矛盾しているか
これらを整理して、運営会社や行政へ伝えることです。
DENGOOONが代わりに伝えます
近隣の民泊について、
平日にも宿泊者らしき人が出入りしている
運営会社へ連絡しても改善されない
どの制度で営業しているか分からない
行政へ何を伝えるべきか分からない
自分の氏名や連絡先を相手に知られたくない
直接苦情を伝えるのが怖い
という場合、一人で相手方と対峙する必要はありません。
DENGOOONでは、相談内容と確認できた事実を整理し、原則としてDENGOOON名義で運営事業者などへ苦情を伝えます。
オンライン上での基本的なクレーム代行は、1回300円を予定しています。
ただ怒りを伝えるのではなく、相手が確認しなければならない情報に変えて届けます。
