しゃべりが下手な書店営業

「〇〇さん、営業なのに喋りがあまり上手じゃないよね」と言われます。

流れるような営業トークを出来ていない自覚はあるので仰る通りなのですが、今日まで何とか営業職をやってきました。

流暢に話せなくても、熱意や誠意、本の素晴らしさは伝わると思います。そして、伝わるのはひとえに、忙しい時間を割いて版元営業の話に耳を傾けてくださる書店員さんのおかげです。

十年近く前、まだ私が駆け出しの営業マンだった頃。

ある既刊書(※発売したばかりの新刊ではなく、数年前などに出版された本のことです)を読み、「これは素晴らしい本だ!」と感じました。

発売から時間が経ち、売上も落ち着いているが、まだまだこの本は売れるチャンスがある、ということに気付いた私は精力的に営業して回りました。

少しづつ手応えを感じていた矢先、比較的コンパクトな店舗だけれども非常にお客様が多い書店様で、この本をセールスする機会を得ます。

ご多忙な書店員さんに声をかけ、申し訳ないと心中で謝りつつ、担当の方を呼んでもらいました。

心臓をバクバクさせて待つこと数分。

現れたのは、このお店で最も偉く、そして最も忙しいであろう店長さんでした。

心拍数が急上昇しましたが、自分なりに一生懸命、本の良さを伝えます。
二、三分間一方的に話し続け、終わった途端に吹き出す汗。

私からこの本の注文書を受け取った店長は、「検討します」と静かに仰って。
結局その場で注文してはもらえませんでした。

せっかく忙しい店長が時間をくださったのに全然上手く喋れなかった、とがっくり肩を落とし意気消沈して会社に戻った私に、同僚から声がかかりました。

「お帰りなさい。FAX届いてますよ〜!」

にこにこ顔で渡してくれたFAXには、今日訪問した書店さんのお名前が。

店長が先ほどの本をFAXで発注してくださっていたのでした。

衝撃と感動で思わず目頭が熱くなり、それを誤魔化すために瞬きを繰り返して、注文してくれた冊数を確認します。
五冊ぐらい発注して積んでくれたらいいな、と思っていました。
(※五冊あれば本棚の下や、エンド台と呼ばれる本棚両端の台に、表紙を見せて並べてもらえるからです)

恐る恐る目を走らせれば、そこに書かれていた数は…



──────“50冊”

「!?50冊!!?!!5冊ではなく!?」

見間違いかと目を皿のようにするも、やはりどう見ても50冊。
嬉しいを通り越して、不安と恐怖でいっぱいになりました。

全く売れなかったらどうしよう?!
返品が増えるのはもちろん、書店さんの返品率も上げてしまう!と焦る私。
(書店さんも、版元と同様に取次会社さんから返品率を下げるよう、厳しく注意されることがあります)

結果的には、この書店さんで4ヶ月で300冊以上売ってくださり、有り難いことに私の心配は杞憂に終わりました。
(置いてくださった店長さん、売ってくださった書店員さん、皆様その節はありがとうございました)

「誠意は伝わる」のを実感出来たこの経験は、私の営業人生において大切な宝物です。

お忙しい中、作業の手を止めて話を聞いてくださる書店員さんには感謝しかありません。
いつも本当にありがとうございます。



【追記】先日、推しを観に訪れた京都・大覚寺でステキなお土産を購入しました。

本投稿で記載の「本」にも関係がある「不動明王」のアクリルお守りです。裏面も赤い炎がキラキラしています!

干支によって定められるとされる「守り本尊」。
不動明王は、その仏様のうちのひとつですね。

(北野天神は本日まで。幸せなひとときをありがとうございました)

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