「ハナクソ貸して」
いきなり何てことを言うんだこのヘンタイ!と思う方もいるかも知れないが、1980年代わが職場ではよく飛び交っていた言葉なのだ。ぜんぜんフォローになっていない。
大河ドラマ「べらぼう」ってのはどうもせっかく忘れかけたオシゴトの事を思い出させていけねえ。ついついコストの心配までしてあげちゃう。
そうじゃなくて「ハナクソ」だ。DTPなんてものが主流になる前、アナログ末期にチラシやカタログなんかの編集企画をやっていた。自社広告の制作でレイアウトもすればコピーも書く。入稿して写植屋さんが版下をあげてきたら校正・チェック、印刷へと進む。そこで時間がないと、軽微な修正はテメエでやっちまおう、ということになる。
デスクの周囲はペーパーセメントやソルベント、定規、カッター、ピンセット、トレーシングペーパーなどがごろごろしている。これらを駆使して、ひどいときにはおなじ書体・級数の文字をそこらの雑誌から見つけ出して貼り付けちゃったりする。貼り付けると糊がぬちょっとはみ出したりする。そこで「ハナクソ」を使ってきれいに拭ってあげなければならない。「ハナクソ」は蓄えて、ではなくて引き出しになくてはならないのだが、その小ささゆえにどこかにしょっちゅう隠れてしまう。よって「ハナクソ貸して」とか「ハナクソある?」なんて言葉がよく交わされた。知らない人が聞いたらこの人たちはいったい何?と思うに違いない。
「ハナクソ」はまたの名をラバークリーナーともいい(いやこっちがホントだから)、テープ状に巻いたものや平たい四角形に予めカットされているものなどがあって今もちゃんと販売されている。
ところであの頃、紙媒体界隈の人はほんとにみんな「ハナクソ」って呼んでいたのだろうか。
ヘッダーは「lily_gelat」さんの作品をお借りしました。ありがとうございます。そういえばずいぶん銀座の伊東屋に行っていない。あそこに行くとオトナが楽しいおもちゃがたくさんありすぎて目のやり場に困ります。
