「おもしろかった」しか出てこない。読書感想文に4週間かかった夏
みなさん、夏休みですね。
今は自由課題になっている学校も多いけれど、今日は読書感想文の話をしたい。
リクが小学2年生のとき、通っていた小学校では、読書感想文が全員必須の課題だった。
小2に読書感想文を書かせるなんて、とても大変だ。そう感じた私は、夏休みに入る前から何冊か本をピックアップして、図書館で借りてきた。
私自身が本好きで、よく図書館に通っていた。リクにも小さい頃から本を借りて読み聞かせていたので、リクは本が大好きな子に育っていた。
だから、こう思っていた。小2にはハードな課題だけど、本を読むこと自体は苦労しない。勝手に読むだろうし、感想文も少し時間はかかっても、まあ大丈夫だろう、と。
すんなり行きそう、と思ったのに
案の定、借りてきた本はすべて数日で読み終えた。どの本にする?と聞くと、あまり深くは考えていない様子だったが、「これにする」と決めた。
あれ、思ったよりすんなり行きそうかも。
そう思ったのは、ここまでだった。
読書感想文の書き方の紙を見ながら、「じゃあ書いてみようか」と促し、どんな感想だったか聞いても、出てくるのは一言だけ。
「おもしろかった」
これしか出てこないのだ。
「どこが面白かったの?」
「全部」
「もう少し細かく教えて。3つくらい、どこがどんなふうに面白かったか、どう思ったのか書いてみて」
そう言っても、リクは明らかにイライラして「もういい」とふてくされてしまった。
私も、その本を読んでみた
また改めて、と思っても、このやり取りばかりが繰り返されて、まったく進まない。
仕方がないので、私もその本を読むことにした。
読んでみた感想は、「いっぱい書くところあるのになぁ」だった。でも、私があれこれ口を出したら、それは私の読書感想文になってしまう。だから、あえて言わないようにした。
私は自分が書き始めたら一気に書き上げるタイプだ。だからこそ、本を読んでも何の感想も出てこないリクに、心底困り果ててしまった。
そこで見つけたのが、付箋を使って読書感想文を書く方法だった。
リクは本を読むこと自体は好きだ。だからもう一度読み直しながら、「ここが面白い」というところに付箋を貼って、何が面白かったのかを書くように伝えた。
付箋に書かれていたのは
その本は、主人公の成長や、最後のオチがある物語だった。
しかし、リクが付箋に書いたのは、こうだった。
「戦いのところがおもしろかった」
「〇〇が走っていたのがおもしろいと思った」
「おもしろい」以外の感情が、まったく入っていない。映画で言えば、アクションシーンのことしか書いていないのだ。
そこじゃないんだよ…と思いながら、私は伝えた。「気持ちについてもう少し細かく書いてみようか。もう少し、リクが主人公の〇〇になったら、どんな気持ちになるか考えてみて」
すると、返ってきたのは。
「いやなきもちになる」
これの、連呼だった。実際には、主人公はそれぞれの場面で、驚き、心配、葛藤、不安、怒りなど、いろんな感情を出していた。だけど全部リクは同じ表現で返してきた。
そのとき、私ははっきりと認識した。この子は、感情を表す言葉が、明らかに足りていない。
「ことばのたからばこ」
みなさんは知っているだろうか。
小学生の教科書の後方には、「ことばのたからばこ」というページがある。取り扱う図書によって違うとは思うが、学年が上がるごとに、そこに載る言葉は増えていく。
小2でも、その中の『気もちをあらわすことば』には、半分ほどを見るだけでも、こんな言葉が並んでいる。
「ざんねん」「くやしい」「うらやましい」「きんちょう」「はらが立つ」「さびしい」「しあわせ」「すっきり」…
さまざまな表現がある。
しかし息子は、これらすべてを「いやなきもちになる」としか表現できなかった。「いやなきもちになる」以外の言葉が、ない。これには驚いた。
具体的にそれが何にあたるのか、この『気もちをあらわすことば』を見ながら確認していった。一覧を見ながらなら当てはめられるだろう、と思っていた。
しかし、まさかだった。言葉を見ても、意味がわかっていないのだ。愕然とした。
リクはもともと、嫌なことには人より向き合えない。だから集中力も続かない。
また日を改めて、言葉の説明をするところから始まった。そうして付箋の「嫌なきもち」「面白かった」に、一つひとつ当てはまる言葉を入れていった。
こうして、2年生の読書感想文は、3週間から4週間少しづつ、ほぼつきっきりで、ようやく仕上がったのだった。
今ならわかる、書けなかった理由
当時はまだ、リクに発達の特性があることを知らなかった。ただ「なんでこんなに書けないんだろう」と困り果てるばかりだった。
でも今なら、いくつか思い当たることがある。
ひとつは、ワーキングメモリ(短期的に覚えておく力)が弱いこと。だから言葉の意味を覚えるのが苦手だし、本を読んでいても、先を読むことに集中している間に、前の中身が頭から抜けていく。いざ感想文を書く段になると、きっともう忘れているのだ。
もうひとつは、そもそも感情を読み取ることが苦手なこと。これはおそらく、リアルな場面での人の気持ちだけでなく、文章の中の登場人物の気持ちに対しても同じなのだと思う。だから「主人公はどんな気持ち?」がいちばんの難所だったのだろう。
本が好きで、たくさん読む。それと、感想文が書ける・書けないは、まったく別の話だったのだ。
それでも、思うこと
読書感想文は、書けるにこしたことはないのかもしれない。
でも、もし特性があって、こういうことがどうしても苦手なお子さんなら、あえて苦手なところに正面から挑まなくてもいいのかな、と今の私は思う。
我が家の場合は、特性があることも知らず、当時は夏休みの必須課題だったので、やるしかなかったけれど。
そして、付箋を使う方法は、時間はかかっても、少しずつでも前に進んでいく。
もし同じように読書感想文に困っているお子さんがいたら、特性のあるなしに関わらず書きやすい方法なので、「読書感想文 付箋」で調べてみてほしい。やり方が出てくるので、ぜひ試してみてほしい。
あの夏、4週間かけて読書感想文を書き上げたリクは、今も本が大好きだ。それだけは、あのとき無理にリク自身が感じられていない感想を絞り出させなくてよかったな、と思っている。
あなたと、あなたの大切な人の明日が、少しだけ軽くなりますように。
この記事が「うちだけじゃないんだ」と思えるきっかけになれたら嬉しい。
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