▶ 月2,004万人到達も瞬間は57万人、多チャンネル「35人に1人」の構造とは【7/24】

衛星放送協会は7月22日、ビデオリサーチが実施した6月度「テレビ接触率 全国ペイテレビ調査」の結果を発表しました。
調査期間は6月1日から30日、全国32地区・10,700世帯のパネルを対象とした機械式調査です。
結果は、多チャンネルサービス全体の累積到達人数が約2,004万人、平均接触人数が約57万人でした。
まず注目したいのは、この2つの数字の開きです。
累積到達人数は「1か月間に1分以上見た人」を重複なしで数えたユニーク到達値で、日本の4歳以上人口に照らすと、おおよそ6人に1人が月に一度は多チャンネルに触れている計算になります。
一方、平均接触人数は「ある瞬間をランダムに切り取ったとき、何人が見ていたか」を示す値で、約57万人です。
つまり、1か月を通せば2,004万人が一度は接触しているのに、いま画面の前にいるのは57万人。
逆にいえば、到達した2,004万人のうち、ある瞬間に見ているのは35人に1人にすぎない、ということです。

これは、多チャンネルサービスが「常に大勢が張り付いているメディア」ではなく、「多くの人が、それぞれのタイミングで、必要な番組だけを見に来るメディア」であることを示しています。
広告主にとっては、リーチの広さと、狙った層への到達精度をどう組み合わせて評価するかが問われる構造といえます。
もう一点、番組ランキングの偏りも見逃せません。
6月はセ・パ交流戦の期間にあたり、「見逃した番組をネットで見る」層の上位5番組はすべてプロ野球中継が占めました。

最上位のGAORA SPORTS「阪神vs楽天」(6月5日)は約16万8,300人と、他ジャンルを大きく引き離しています。
野球の集客力は多チャンネルの強みですが、同時に依存度の高さも意味します。
オフシーズンの落ち込みは構造的に避けにくく、DAZNやU-NEXTといった配信勢がスポーツ権利の獲得を進めた場合、この牽引役が揺らぐ可能性があります。
アニメや海外作品が各ターゲット層で健闘している点をどこまで日常的な視聴の土台に育てられるかが、今後の課題となりそうです。

米国では、Nielsenがパネルにビッグデータを統合し、Comscoreはセットトップボックスの視聴ログを活用して、ケーブル・衛星チャンネルはアドレサブル広告へと移行しました。
日本の「疑似推計によるターゲット表現」は、その手前の段階にあると言えるでしょう。
ただし、より本質的な課題は別にあります。
いまテレビ画面に映っているのは放送と配信の混合物であり、放送内パネルだけでは全体像を捉えきれません。
ビデオリサーチはスマートテレビの視聴ログ取得を進めており、広告業界でも放送と配信をまたぐ統合指標づくりが模索されています。
ただ、これらはまだ別々の物差しのままです。
視聴者からすれば、リモコンで入力を切り替えた瞬間に放送も配信も等価であり、その境界を意識してなどいません。
にもかかわらず、計測だけが放送は放送、配信は配信と分かれている——ここに構造的なねじれがあります。
次に求められるのは「放送の中での順位」ではなく、テレビ画面という一枚のスクリーンを、放送も配信も分け隔てなく横断して測る物差しではないでしょうか。
多チャンネルの2,004万人という数字も、その土俵に乗って初めて本当の媒体力として評価されるはずです。
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