【6月18日】スマホをかざすだけ、「見た」が「買った」になる。ローカル局を救うテレビ広告の救世主!他
話題のポイントは音声で!、(AI音声のため、読み上げに誤りが生じることがあります。あらかじめご了承ください )
▶ スマホをかざすだけ、「見た」が「買った」になる。ローカル局を救うテレビ広告の救世主!

AIによる画像認識技術を手がける米IRCODE社が、地方放送大手シンクレア(Sinclair)から戦略的投資を受けたと発表しました。
両社は7月からソルトレイクシティとオースティンの放送局で「IRCODE Lens」を展開し、年内にさらに市場を広げる計画です。
これは、視聴者が放送局アプリを開いてスマホをテレビ画面にかざすだけで、映っている商品や情報に直接アクセスし、購入・応募・投票ができる仕組みです。
イメージとしてはGoogleレンズや「画像版Shazam(シャザム)=聴かせると曲名がわかるアプリの画像版」に近く、QRコードなしで画面の中身をフレーム単位で瞬時に判別します。
映像そのものが「コード」になるため、番組や広告のデザインを一切変えずに双方向化できる点が、放送現場の導入ハードルを大きく下げます。
屋外広告や印刷物を含めると、すでに52カ国で稼働実績のある技術です。
最大の狙いは、テレビ広告の「効果が見えない」問題への正面突破です。
テレビ広告は長年「誰が見たか」までしか測れず、視聴者がその後に買ったかどうかは闇の中でした。
IRCODE Lensは「見た」から「買った」までを一本の線でつなぎ、テレビ広告をデジタル広告と同じ土俵、すなわち成果報酬や精密な効果測定の世界へ引き上げようとしています。
設計思想も特徴的です。
GoogleやAmazonの「レンズ」は便利な反面、データはプラットフォーム側に吸い上げられます。
IRCODEはホワイトレーベル(自社ブランドとして提供する方式)を採用し、視聴者データ・広告主との関係・収益をすべて放送局側に残す、つまり裏方のインフラに徹するモデルを掲げています。
プライバシー規制が世界的に強まるなか、放送局が自前の顧客データ資産を握れる意義は小さくありません。
そして本命と目されるのがスポーツ・ライブ領域です。
プレスリリースはスポーツ資産での展開を明記しており、試合中のリアルタイム投票や選手グッズの即時購入など、ライブ視聴とコマースの相性は極めて良好です。
ここが収益の本丸になる可能性が高いと見られます。
【ディンコの一言】
注目すべきは、これを仕掛けたのが配信大手でも全国ネットでもなく、全米177局を束ねる地方局の巨人だという点です。
武器は「地域の信頼とリーチ」。
そこに双方向技術とデータ自社保有を掛け合わせています。
先行導入したソルトレイクシティのKSL局では、ニュース番組の司会者が「アプリでスキャンしてみて」と一言添えるだけでスキャンが急増し、視聴者が地元レストランの割引を受け取る、といった使い方が定着しました。
番組内投票やクーポン配布が、画面にかざすだけで完結するわけです。
広告費の伸び悩みが課題となる日本のローカル局にとっても、これは遠い国の出来事ではありません。
電波と地域基盤という既存資産を「測れる広告」へ変えられるかどうかが、これからの勝負を分けます。
日本の地方局も、こうした双方向・データ系技術への投資を成長戦略の中心に据え、いまこそ積極的に動くべきだと思います。
▶ Netflix「アジアの10年」 世界TOP10の過半数を制す

Netflixは、アジア太平洋(APAC)コンテンツへの取り組み10周年を発表しました。
10年前は「アジア発の作品が世界に届くのか」が問われていましたが、現在ではNetflixの週間グローバルTOP10(非英語作品)の半数以上をAPAC作品が占めています。

2021年の約30%からわずか数年で半数超へと急伸した背景には、各国での継続的な制作投資の積み上げと、現地クリエイターとの協業体制の確立があります。
Netflixは2016年に190カ国以上で利用可能となって以来、「真にグローバルであるには深くローカルであるべき」という方針を掲げ、その土地の文化・言語・場所を理解する制作者と組むことで、特定の文化に根ざした作品を世界に届ける仕組みを築いてきました。
この10年で投資規模も拡大しています。
2020年以降、APACで300社を超える制作会社と協働し、2016〜2025年には域内650カ所以上のロケ地で撮影を実施。
各作品が現地の人材・企業・地域コミュニティによって形づくられ、制作エコシステムの育成と雇用創出につながっています。
こうした地道な現地投資の積み重ねが、視聴データにも明確に表れています。
2019年以降、APACコンテンツの視聴時間は4倍に拡大しました。
視聴の伸びは、Netflixが今後どの国・ジャンルに投資を振り向けるかという判断にも直結し、制作戦略そのものを動かす要因となっています。
ジャンル別では、日本のアニメが世界の会員の半数以上に視聴される圧倒的な存在感を示しています。
さらにタイやインドネシアの映画が世界1位を獲得し、中国語作品も勢いを増すなど、東南アジアや中華圏の作品が次々と世界の舞台に登場。
インド映画は2024年初頭以降、毎週グローバルTOP10に名を連ねています。
Netflixは「我々がこの地域の物語を生み出したわけではないが、それを世界規模で増幅する役割を担えることを光栄に思う」とし、次の10年はAPACの作り手たちが世界的な物語を形づくっていく時代になると展望を示しました。

【ディンコの一言】
Netflixの数字は痛快ですが、日本にとっては素直に喜べない現実も突きつけます。
アジア発作品が世界標準になったとはいえ、その「出口」を握るのは結局プラットフォーマーであり、配信されるか否か、どう値付けされるかの主導権は手元にないからです。
ここで注目したいのが、総務省が2026年4月に策定した「実写コンテンツ展開力強化アクションプラン」です。
国際共同制作のマッチング支援、年間1000人規模の人材育成基金、地域局の海外向け制作支援などを並べ、2033年に海外輸出額2500億円・海外売上比率20%を目標に掲げました。
ただ、これらはいずれも「作る力」と「届ける費用」への支援であって、配信プラットフォームという出口そのものを国が握る話ではありません。
デットファイナンスや完成保証の検討も始まっていますが、肝心の流通網は海外企業頼みのままです。
豊かな現地性を世界に開く覚悟があるなら、補助金で個別作品を後押しするだけでなく、国産の出口づくりまで踏み込めるか——
次の10年で本当に問われるのは、そこではないでしょうか。
▶ NEPがソフト統合基盤「NEP Platform」を商用化 専用機材だけの時代に幕

NEPグループが、メディアインフラとハイブリッド制作のワークフローを統合管理するソフトウェアオーケストレーション(複数の機材やシステムを一元的に統合・制御する仕組み)システム「NEP Platform」の商用提供を開始しました。

Sony、Panasonic、Sony傘下のHawk-Eye、Bridge Technologies、Calrec、Grass Valley、Lawo、Manifoldといった各社の制作アプリケーションを、単一の安全な画面上で統合・運用できる点が最大の特徴です。
映像・音声ミキシング、リプレイ、インフラ管理、マルチビュー、計測まで網羅し、Bridge TechnologiesのVB440プローブ(映像・音声の信号品質をリアルタイムで監視・分析する測定ソフト)も採用されました。
すでにオーストラリアやノルウェーで投入された「ソフトウェアファースト」型の新型中継車をはじめ、世界各地のNEP施設で稼働しています。

技術的な核心は、NEPが自社開発し、ST 2110(映像・音声をIPネットワーク上で伝送するSMPTE規格群)の管理基盤として磨き上げてきた「TFC(Total Facility Control)」の上に、今回のオーケストレーション層が載っている点にあります。
従来は機能ごとに専用ハードウェアを構築していましたが、NEP Platformはそれをやめ、COTS(汎用の既製品)コンピュート上で各社の放送用ソフトをアプリとして動かす設計に転換しました。
たとえばManifoldのFPGA(処理を回路レベルで高速化する半導体)アクセラレーション技術を使えば、マルチビューアやUDX変換、グラフィックス挿入といった放送グレードの処理を、映像1コマ分にも満たないごくわずかな遅れで、しかも処理のタイミングが常に安定した放送品質の性能で提供できます
各アプリは展開後、TFCオーケストレーション層の中で「仮想デバイス」として現れ、オペレーターはボタン一つで数分のうちに構成を組み、不要になれば即座に解放できます。
セキュリティ面でも、継続的な脆弱性スキャン、強固なID・アクセス制御、暗号化、常時モニタリングを備え、各展開時にアプリのバージョンと構成を検証する仕組みを持ちます。
さらに、その時々の制作規模に応じて必要な処理能力だけを自動で割り当てるため、使わない機材をわざわざ現場へ運ぶ手間や無駄な電力消費を減らせます。
結果として、環境負荷の低減という目標にもつながるとしています。
今後はアプリの追加も予定され、自社施設への導入を望む顧客にはNEPのエンジニアリングチームが支援にあたります。
NEPの担当幹部は「ライブ制作の未来はハードかソフトのどちらか一方ではなく、両者をいかに効果的に統合するかで決まる」と述べ、本プラットフォームをその答えと位置づけています。

【ディンコの一言】
注目すべきは、この新型ソフトウェア中心型中継車がオーストラリアとノルウェーで先行投入された点です。
NEPの基盤TFCは、すでにスーパーボウルやパリの大規模スポーツイベント、さらに今年のユーロビジョンでも実稼働しており、机上の構想ではなく一流のライブ現場で鍛えられた技術である点が重みを持ちます。
一方で気になるのは日本です。
NEPは豪・ニュージーランド・日本を一つの管轄圏に置いており、地理的には射程内ながら、ハード依存と独自規格が根強い国内制作現場にこの大波が届くかは未知数です。
実績が証明済みだからこそ、導入の壁は技術ではなく、現場の側にあると言えそうです。
長年染みついた『機能ごとに専用機材をそろえる』という作り方の慣れや、メーカーとの長期的な取引関係、そして失敗の許されない生放送ゆえの『枯れた機材を使いたい』という慎重さ——
こうした商習慣と現場感覚をどう乗り越えるかが、日本にとっての本当の課題です。
▶ 配信4強がアジアで激突、主役は「日本の実写」

アジア最大級のメディア会議「APOS 2026」(バリ島開催)で、Netflix、Prime Video、ディズニー、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の幹部が一堂に会し、アジア発のIP(知的財産=作品の権利)とローカル制作こそが世界戦略の中核だとの認識で一致しました。
なかでも各社が口をそろえたのが、日本の実写作品の世界的可能性です。
これまで日本の存在感はアニメ中心でしたが、Netflix『地面師たち』が15の国・地域でトップ10入りした実績を背景に、韓国『イカゲーム』が示した非英語圏実写の世界的ヒットを日本でも再現しようとする動きが加速しています。
一方で、製作委員会方式に縛られない潤沢な資金がトップクリエイターに集中することで、才能の流出や中小制作会社の地位低下といった業界の二極化が進む懸念も指摘されています。
日本進出から10年を迎えたPrime Videoは、「単なる配信サービス」から脱却し、コンテンツ・流通・利便性を一つに束ねる「エンタメの拠点(ハブ)」への進化を打ち出しました。
世界600社超の提携を背景に、サブスクが浸透していなかった日本市場でドラマ・映画からスポーツ・アニメへと領域を広げ、ボクシング生中継は2022年の開始から15興行へ拡大しています。
単一サービスの枠を超えた利用者の囲い込み競争が、今後さらに激しくなりそうです。
スポーツ配信で出遅れていたディズニーは、世界最大級のスポーツ専門メディアESPNを日本を含むAPAC53の国と地域へ投入し、巻き返しを図ります。
ディズニープラス加入者は追加料金なしで視聴でき、2026-27シーズンからはNBAやNHLの米国スポーツ中継も拡大予定です。
さらに日本では、ディズニープラスとHuluが独占作品を6か月間相互配信する取り組みを2026年5月に開始するなど、提携の深化も進んでいます。
WBDは『ハリー・ポッター』を例に「強力なファンコミュニティが多様なプラットフォームで価値を生む」と強調し、日本を含む市場で熱心なファン層が生み出す大きな購買力(ファンダムの経済効果)に注目しました。
日本では自前アプリではなくU-NEXT内で「Max」を展開する独自路線をとっています。
既存IPの再活用とファンダムを軸とするモデルが主流となる一方、各社は縦型コンテンツが今後の視聴行動を変える可能性にも言及しました。

【ディンコの一言】
Netflixのキム氏が自らを「ポートフォリオ・マネージャー」と呼んだ点に、時代の転換を感じます。
日本・韓国・インドへ資金を最適配分する発想は、自局の枠内で完結してきたテレビ局の制作体制とは根本的に異なるものです。
もっとも、日本のキー局も手をこまねいているわけではありません。
TBSは傘下のTHE SEVENを通じてNetflixやディズニーと組み、フジテレビはNetflixと作品をグローバル配信、日本テレビはWBC中継の制作を受託するなど、各局はすでにプラットフォームとの連携に踏み出しています。
ただ、ここに難しさがあります。
グローバル配信大手の多くは、制作費を全額負担する代わりにIP(作品の権利)を買い切る方式を志向します。
世界的にヒットしても追加収益が制作側に残りにくく、隣国・韓国ではこの構造が「Netflixの下請け化」と問題視され、皮肉にも日本の製作委員会方式を手本にする提言まで出ているほどです。
権利を一手に握るプラットフォームの前では、テレビ局も制作会社と同列の「発注を受ける側」になりかねません。
資金力と引き換えに何を手放すのか。各局の戦略眼が、これまで以上に問われる局面に入ったと言えるでしょう。
