▶ 民放連5486人調査が最後に認めた「テレビが唯一の手段でない」という一行【8/8】

民放連(日本民間放送連盟)研究所は2026年8月4日、「テレビの広告効果に関する研究」第4回調査を公表しました。
全国7ブロックに住む15〜69歳の男女5486人に、インターネットでアンケートを行ったものです(2026年2月20日〜26日実施)。
調査を行ったのはビデオリサーチ、協力は電通です。

今回の結論の中心にあるのが「世の中ごと化」という言葉です。
テレビは商品を「世の中の話題」にすることで市場そのものを広げる、まず知ってもらう段階に強く、長く使う商品やブランド品ではファンを増やす効果も見られた、という整理になっています。
この「世の中ごと化」は、これまでテレビが使ってきた物差しとは性質が違います。
リーチ(何人に届いたか)も認知率(何人が覚えたか)も、一人ひとりを数え上げた合計です。
これに対して「世の中ごと化」は、「みんなが知っているらしい」という感覚が広まった状態を指します。
一人ひとりに聞いても数えにくい、集団の雰囲気のようなものです。
調べ方も変わりました。
第2回(2022年)は、テレビの実際の視聴記録とネット動画の視聴記録を突き合わせて分析しています。
第3回(2024年)も全国のテレビCM放送データとネット広告の配信データを組み合わせました。
つまり「実際に見た記録」を使っていたわけです。
ところが第4回はアンケートだけで、実測データは使われていません。
海外は逆の方向に進んでいます。
米国のニールセンは2025年9月、従来の調査世帯データに約4500万世帯分のテレビ機器の実測データを合わせた方式を、全国のテレビ広告取引の唯一の基準にしました。
2026年1月には従来型の視聴率を取引から外しています。
英国のBARB(バーブ/英国のテレビ視聴率を測る業界共同の機関)も、ネット配信サービスの視聴時間まで測定対象に含めています。
ただしBARBは2026年1月、テレビ画面で見られたYouTubeの測定をグーグルの警告で止めました。
測定範囲を広げる作業は、あちこちで壁にぶつかっているのが実情です。
調査を誰が行うかも違います。
英国では商業放送の団体が発注した広告効果研究を、独立した調査・分析会社5社が141ブランド・18億ポンド分の実データで検証しました。
先に触れたBARBも、放送局・広告主・広告会社が費用を出し合って共同で運営しています。
一方、日本のビデオリサーチは電通が議決権の34.2%を持つ株式会社という立場にあります。

この資料でいちばん重い一行は、結論の最後に小さく置かれています。
「特に若年層に向けた『世の中ごと化』施策はテレビが唯一の手段でない可能性も」。
テレビ広告の価値を示すための研究が、最後に自分で「ただし若い人には別の手もあります」と書き添えて終わっているわけです。
なぜそう書かざるを得なかったのか。
調査結果に手がかりがあります。
若い人ほど「みんなが知っている商品」を選びたがる。
ところが同時に、自分だけに向けて出てくる広告も歓迎している。
この二つは普通なら両立しません。
「みんな」を求めながら「自分だけ」も求めているからです。
資料はこれを、若い人にとっての「みんな」とは、自分が見ている範囲のことなのではないか、と説明しています。
SNSのおすすめ欄に流れてくるものが、そのまま「今みんなが話していること」になっているという見方です。
もしそうなら、商品を話題にする仕事は今も必要とされています。
ただ、その仕事を引き受ける場所がSNSでも足りてしまう。
だから「テレビが唯一の手段ではない」という一文が出てくるのだと考えられます。

広告主にとって厄介なのはここからです。
テレビが売ってきたのは「何人に届いたか」ではなく、「同じ時間に大勢が同じものを見た」という状態でした。
若い層でその前提が崩れると、テレビの強みは「40代以上に話題を作る力」に絞られていきます。
それはそれで価値のある商品です。
ただ、全国のあらゆる層に一斉に届くという前提で作られてきた値段の説明は、そのままでは通らなくなると考えられます。
届く層をはっきり示したうえで、あらためて価格の根拠を語り直す場面が来るのではないでしょうか。

