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▶ 脚本エディタ『テラストリー』無償公開 ハリウッド95%の牙城に日本発の一手【8/14】

監督とプロデューサーと助手が、初めて同じ画面を覗き込んだ(Image)

株式会社ロボット(東京都渋谷区)は8月5日、社内のストーリー制作チーム「モノガタリラボ」が開発した脚本専用エディタ『テラストリー』のベータ版を無償で公開しました。

出典:[https://tellastry.jp/]
出典:[https://www.robot.co.jp/news/tellastry/]

日本の映画・ドラマ業界で広く使われている脚本フォーマットを再現し、そのまま原稿を書ける点が特徴です。

開発は株式会社フォトロンとの協業で、公式サイトでのユーザー登録により利用できます。

なお対応ブラウザはGoogle Chromeのみで、「Windows/Mac両対応」もブラウザベースであることによるものです。

オフライン中は保存ができず、サービス終了の際は30日前にメールで通知するとされています。

日本の脚本には「柱・ト書き・セリフ」という独自の様式が現場の慣習として定着していますが、それをPC上で再現する専用ツールの選択肢は限られてきました。

実際に使われてきたのは、Windows専用の有料エディタ「O's Editor2」、無料の「VerticalEditor」、一太郎のインデント機能による自作のひな型などです。

市場規模が小さいこと、脚本が紙の台本として印刷・配布されてきたこと、そして書式が明文化された規格ではなく暗黙の慣習だったことが、専用ソフトが商業的に育ちにくかった背景にあると考えられます。

対照的に米国では、1990年創業のFinal Draftが事実上の標準として定着しました。

同社は30年以上にわたり売上首位であり、ハリウッド作品の95%で使用されていると公表しています(ベンダー自身による数値)。

ハリウッド95%の牙城を、日本の脚本家が挑む(Image)

価格は199ドル(約3万1000円、1ドル158円換算)で、近年はWriterDuetやCeltxなども競合しています。

米国が書式とツールを一体で普及させたのに対し、日本は書式だけが慣習として残り、それを実装する側が長く空席のままでした。

今回の開発主体が、ソフトウェア会社ではなく制作会社内の脚本家チームである点は注目に値します。

開発スタッフは映画監督の小泉徳宏氏ほか2名で、日々脚本を書く当事者が設計に関わっています。

公式サイトには、納得できる脚本エディタが一向に出てこないため自分で作ることにした、という趣旨のメッセージが掲げられています。

またROBOTとフォトロンはいずれもIMAGICA GROUP傘下であり、本件はグループ内での連携でもあります。

「待ってました!」というのが率直な感想です。

むしろ、なぜ今まで無かったのかが不思議でなりません。

日本の脚本の書式は、業界の誰もが読める共通言語として何十年も機能してきました。
それなのに、それをPCで素直に書ける道具だけが空席だった。

書式はあるのに実装がない、という奇妙な状態が長く放置されてきたわけです。

しかも今回作ったのは、ソフト会社ではなく毎日脚本を書いている当事者です。
不便を一番よく知っている人が設計した道具が弱いはずがありません。

無償のベータで先に出して、現場の声を聞きながら育てるという出し方も好感が持てます。
完成品を持ち込んで説得するより、はるかに早い。

その上で、この先の楽しみな課題も申し上げておきます。

海外の脚本ソフトは、改訂管理(何稿目でどこが変わったかを色分けして配る仕組み)や、制作管理ソフトへの書き出しを備えています。

脚本は読み物であると同時に、香盤表(撮影の段取り表)や予算の元データでもあるからです。

まず機能を絞ったのは入口として正しい判断だと考えます。

そのうえで分かれ目は、有償化するときの価格、他ツールとのデータ互換、そしてシナリオスクールが授業で使うかどうかにあると見ています。

そしてもう一つ、避けて通れないのがAIです。
いまや文章を書く画面にAIボタンが付いているのは当たり前になりました。

Microsoft WordにはCopilot、GoogleドキュメントにはGemini、Notionにも生成機能があり、ブログの編集画面ですら文字を選べば右側にサイドウィンドウが開いて続きを書いてくれます。

テラストリーが今後どう向き合うのかは、注目すべき点だと考えます。

ただしディンコは、脚本エディタにAIボタンを付けることはあまりお勧めしません。

理由は三つあります。

第一に、脚本家の価値は書く速さではなく、選ぶ判断にあるからです。
次の一行を機械が提案してくれる環境は、その判断を静かに鈍らせる可能性があります。

第二に、権利の問題です。
執筆途中の原稿が外部のAIに送られる構造は、企画の秘匿性を重んじる現場と相性が良くありません。
テラストリーは公式サイトで、利用者の原稿データを無断で閲覧しないと明記しています。
この一文の重みを、AI機能は簡単に軽くしてしまいます。

第三に、そもそも本作の売りは「無駄を削ぎ落とした設計」です。

流行の機能を足した瞬間に、その看板と矛盾します。

書くための道具は、書く邪魔をしないことが最大の機能です。

日本の映像業界は、ようやくそのスタートラインに立ちました。

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