▶ 場を持つ時代へ、電通ライブが挑む共創型スポーツ事業の第一弾【7/22】

電通ライブは7月22日、スポーツを起点に事業を創出する共創プロジェクト「L×SPORTS(エルクロススポーツ)」を始動すると発表しました。

「Crossing Sports with Experience & Business」をタグライン(ブランドの姿勢を示す言葉)に掲げ、スポーツの熱量や物語性、リアルな体験価値を軸に、まちづくり、エンターテインメント、音楽・カルチャー、不動産・空間開発、IP・コンテンツなど幅広い分野との共創を進め、経済的価値と社会的価値の双方を創出することを目指します。
第一弾は熊本県菊陽町の「くまモンアーバンスポーツパーク」です。

同施設を単なる競技の場ではなく、人々が訪れ地域と接点を持つ「体験の起点」と位置づけ、関係人口の拡大や継続的な賑わい創出につながる地方創生モデルの検証を進めます。
受注は電通ライブ・電通九州・東築建設の共同事業体によるものです。
注目すべきは、このリリースが繰り返し用いる「共創」という言葉の実態です。
従来の広告会社のクライアントワークは、発注者が予算とリスクを負い、受注者は制作・運営の対価を得る構造でした。
これに対し「実証から事業化へ」を掲げる本プロジェクトは、成果の形を最初から狭く定めず対話を重ねながら進めるとしており、成果指標の設定も含めて受注側が踏み込む姿勢が読み取れます。
裏を返せば、成功も不発も双方で引き受ける座組みへの移行であり、広告会社にとって収益機会の拡大と同時に、事業リスクを内側に抱え込む選択でもあります。
もう一つの論点は、施設整備型プロジェクトが常に抱える「箱モノ化」のリスクです。
全国ではスケートパークやアリーナの整備が相次いでいますが、開業直後の話題性が落ち着いた後、維持管理費と稼働率のバランスが崩れて閑散化する事例は少なくありません。
今回のリリースが「単なる競技の場ではない」と明言し、体験創出や関係人口を前面に出しているのは、まさにこの典型的な失敗パターンを回避する意図の表れとも読めます。
検証の成否は、開業効果の一巡した後に何が残るかで判断されることになります。

広告会社が「共創」を掲げて地域に入る構図は、目新しいものではありません。
2010年代の地方創生ブーム以降、同様の枠組みは各社が試みてきましたが、実証で終わり事業化に至らなかった案件もありました。
アーバンスポーツ施設に限っても、静岡市の「東静岡アート&スポーツ/ヒロバ」内のローラースポーツパークはアリーナ計画に伴う暫定施設として2025年9月末に閉鎖され、郊外への移転を余儀なくされました。
京急電鉄が大田区に整備した「糀谷駅高架下スケートパーク」は、完成後に住民の苦情で事業自体が中止されています。
ハコは作れても、立地と地域合意は簡単には守れないということでしょう。
今回注目すべきは、電通ライブが建設会社との共同事業体で施設整備そのものに関与している点です。
企画だけを納品する立場から、場を持つ立場への一歩とみることができます。
アーバンスポーツは五輪効果の残り火に支えられている面もあり、熱が冷めた後に何を残せるかで、この取り組みの本当の価値が問われます。
