泰夢(たいむ)のお話:1
いよいよ泰夢の夏の冒険の始まりです!
それでは、どうぞ!!
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・オープニングシーン:祖母の家に行く車の中で
車のうしろの広いシートにねそべっていると、まるで世界が逆さまになったように感じる。
まどから見える景色もまるで全部があべこべで、どっちが上でどっちが下かもわからなくなる。
ねそべったまま足を天井にくっつけるともっとふしぎだ。こんどは前も後ろもあべこべに入れかわってしまったみたいな感じだ。
足のウラにはしっかり地面をふんでいるような気がするのに、ふつうに立っている時とちがって重さがない。まるで月にやって来たうちゅう飛行士にでもなったような気分になるのだ。
「アストロノーツ、高原泰夢(たかはら・たいむ)。これよりドイナカ星雲、バアチャンチ星にむかいます!」
ふざけて大声をだして、ふわふわする足で車の天井を何回もけとばす。
「こら、泰夢っ! いいかげんにしないかっ!」
「ふぁーい」
「そんな返事があるか。おまえは、もうすぐお兄ちゃんになるんだぞ」
「━━はい!」
おこる父に返事をしてすわりなおし、こんどはシートベルトをしっかりとしめる。
(ちぇ、なんだよ━━。オレだって、好きでお兄ちゃんなんかになるワケじゃないってんだ!)
そう言いそうになるのをぐっとがまんして、大きなかたかけのカバンからゲーム機をひっぱり出す。
泰夢は小学五年生で、そして、今日は夏休みの一日目だった。
ほんとうなら朝から友だちとプールに行って、帰りに大通りのうらにあるいつものだがし屋「すみや」で、チューチューアイスでもしゃぶりながら、みんなといっしょにゲームのクエストでもクリアしてるところだが、そうはいかなかった。
それとはまったくぎゃくに、泰夢は一人で、いや、ただしくは車を運転している父と二人で祖母の家に向かっていた。
(あーあ、なんでオレが、一人であんなトコにいかなきゃならないんだよ……)
こんど、泰夢の家に子どもが生まれることになった。つまり、泰夢にとっては弟か妹ができることになったのだ。
母のおなかはどんどん大きくなっていったが、あまり体の強くない母は出産の日のだいぶ前から病院に入院してしまった。
そこからしばらく、父と二人でくらすことになった。
これは泰夢にとってはうれしいことで、学校から帰ってきてから父が帰るまでの時間は、ガミガミうるさくおこる人がだれもいないので、テレビ見たりゲームをしたり自分の好きにできた。
食べるものも最初は父が作っていたけれども、やはり仕事がいそがしくて、そのうちにコンビのべんとうやデリバリーのピザやらになっていき、最近ではパンやスナックがしで食事をすませることもあった。
体には良くないかもしれないが、母に注意されずに自分の好きなモノを好きなだけ食べたり飲んだりできるのは、なんともいえない幸せだった。
しかし、一学期が終わって夏休みに入り、その楽しい毎日も終わりになってしまった。
夏休みのあいだずっと、小学生ひとりを家に置いておくわけにはいかないという話になり、そういう理由で泰夢はいま、父と二人で祖母の家に向かっているのだった。
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新しい弟妹ができるのってすこし不思議です。
では、次回もお楽しみに!
小林るい
