ローズマリー・サチコ
母が気まぐれで庭の隅に植えた
ローズマリーがある。
庭の隅っこだったこともあり、
母の足腰が弱ってからは
手入れをする人もいなくなって、
そのまましばらく放置していた。
梅雨も明けた。
そろそろ草取りをしないと…。
重い腰を上げた私は、「一日五分だけ」と
決めて庭に出るようになった。
五分なら続くだろう。そんな作戦である。
ついでに、音楽を聴きながら気分を
上げてみている。
ある日、草をかき分けていると、
「……え?」
ローズマリーが、
とんでもないことになっていた。
大成長。
いや、最終形態である。
その姿はもう、小林幸子。
圧倒的ラスボス感。
風に揺れるたび、紅白のステージが
始まりそうな迫力だった。
なんなら柵をはみ出してお隣さんも巻き込むくらいステージを広く使っていた。

成長が怖すぎる!!!!
これはさすがに切ろう。
隣人トラブルになりかねん。
わたしは園芸の知識など持ち合わせていないので、「まぁ、この辺かな?」
くらいの気持ちでテキトーに剪定した。
すると、ぶわっと、あたり一面が
ローズマリーの香りで包まれた。
え、こんなにいい匂いするの?
今まで全然興味がなくて、
使おうとも思わなかった。
そこそこカットしたものの、
それでもまだ、ローズマリー・サチコは
生き生きと現役バリバリのお姿だ。

切っても切ってもモリモリしている。
「……これ、何か使えないかな?」
困った時のAIである。
すると返ってきた答えは、
「一番簡単なのは、お風呂にポーイ。」
そんな簡単でいいの?
半信半疑で数本切って、
湯船へポーイ。
……
めちゃくちゃいい匂いなんですけど!!
母も
「なんかお湯が柔らかくなった気がする。」
と、若干プラシーボ気味の感想をくれた。

なんや、丁寧な暮らししてる風になりました。
子どもたちも嫌がらない。
これは当たりかもしれない!
さらにAIは言う。
「チキンステーキを焼く時も、そのままポーイ。」
……またポーイである。
今度は例のイケメン鍋、
ストウブブレイザーに鶏もも肉を並べる前、
ローズマリーをジュッと入れて香りを出してみた。
……
なんだろう。
急に料理上手になった気分。
キッチンがちょっとだけオシャレになった。

とAIに突っ込まれた。
味ですか?
よく分かりません!!笑笑!
でも、それでいい。
庭の隅で何年も放置されていた
ローズマリー・サチコは、
気づけば家中をいい香りにしてくれていた。
お風呂でも、夕飯でも、
今年の夏、我が家には新しく、
「とりあえずポーイ文化」が生まれた。
そして、さっきローズマリー・サチコを見たら
花を咲かせていた…!!
もう1ステージ、やる気らしい。
